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第6話 天国から地獄

 青鐘創(あおがねつくる)


 私の3歳年下のカワイイ男の子。


 身体は結構ゴツい割に、妙に抜けてるところが可愛らしかった。

 私のすべて。私の運命。私の人生そのものに。出会った。


 偶に顔を出してたサークルの新歓で、たまたま隣になっておしゃべりしたのがきっかけ。


 何か劇的な出来事があったわけではない。特別タイプの男性だったわけじゃない。

 優しくしてくれたけど、割りとしっかりチヤホヤされてたそのころの私にとって、それ自体は別に特別なものってことはなく。


 ただただ、とてつもなく、波長が合った。

 一緒に居て、少しも疲れることがなかった。


 なんとなく、息抜きに私の方から遊びに誘ったりした。




 いつのまにか、好きになってた。


 彼も私と同じようなことを感じてたらしい。

 彼と出会って半年経った頃、彼の方から告白してくれて。


 私は卒業したら端月の関係会社にコネで入ることが決まってたから就活はいらなくて。

 ただ、ゼミの課題や卒論で少し忙しくなってきた頃だったのを覚えてる。


 日々の適度な充実感に加えて、好きな男の子からの告白まで受けて、まさに人生の絶頂期だと思った。

 断る理由なんてない......わけじゃなかったけど、私としては断りたくなかったから、彼のことを受け入れた。


 ハジメテはあげられなかったけど、私との行為をいつも嬉しそうに喜んでくれて、私を喜ばせようと頑張ってくれて。

 私は別に性欲が強くなくて、行為自体それほど欲求を感じないタイプだったのもあって、シないことも多かったけど、文句の一つも言わずに、隣でおしゃべりしてるだけでとても幸せそうにしてくれて。


 もちろん、シたらシたで、気持ちよくなれた。

 いつも私の反応を気にしながら、ちょっと不安そうな表情で見つめる顔も、なんだか可愛かった。


 創にとって私は初めての彼女だったらしく、デートでもなんでも一生懸命私をリードしようとしてくれて、時々から回ることもあるんだけど、それも彼の愛嬌の1つで。


 みんなの前だと結構カッコつけなんだけど、私と2人っきりのときには割りと甘えたがりで。


 私は、その全部にキュンキュンしっぱなしだった。

 創という沼にズブズブと沈んでくみたいだった。



 私が大学を卒業しても、お付き合いは続いて、平日は私の職場にお迎えにきてくれたり、週末はデートをしたりおしゃべりしたり、時々えっちしたりして、代わり映えのない、でも安定した幸せを感じられる生活が続いた。







 彼は、高校生までは生きる理由も特になく不遇をかこっていた私に、神様がくれた宝物だと、本気でそう思った。


 ただひとつ、そして最大の懸念だったのは、私の実家、端月(はしづき)家。


 そもそもうちの家が私のような目の上のたんこぶをここまで大きく育てたのは、政略結婚の道具とするためだったわけで、そんな私が自由恋愛することを、うちの家が、両親が、認めるわけがない。


 ただ、私が創と付き合ってることはわかってるだろうに、誰も何も言ってこないのが不思議だった。

 まさか、私の境遇を可哀想に思ってお目溢ししてくれてるわけでもないだろうけど、口を出してこないってことは、もしかしたら私は自由に恋愛できるのかもしれない。


 創には、私の出生の事情や実家での扱い、政略結婚を押し付けられる可能性まで全部打ち明けていた。

 もしかしたら、そんなめんどくさい女は願い下げだと言われるかもしれないと、怖かったけど、それくらい信用してたし、信頼してた。


 実際、創は私の話を真剣に聞いてくれて、私の代わりに怒ってくれて、もしものときは一緒になんとかしようって、何ができるかわからないけど絶対になんとかするからって、そう言ってくれて。

 それがすごく心強かった。


 創との交際に対して実家からの横槍が入ってこない現状。創と積み重ねた時間と信頼関係。最悪のシチュエーションを想定した将来の計画。


 もちろん、何もなく、普通に幸せをつかめる未来が一番いい。

 淡い期待だと、幻想だとわかっていても、私はそういう未来の可能性を信じ始めていた。









妃涼(ひすず)。お前の結婚相手が決まった。例の男とはすぐに縁を切りなさい」


 そんな私の淡い期待は、やっぱり、ただただ淡い泡沫の願望だった。

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