7月9日(2)
私は、大学から、実家を出て一人暮らしを始めた。
将来、なんの仕事につきたいか。そんなことどうでもよかった。
ただ、自立した生活を送りたい。それだけだった。
小学生の頃から、一人暮らしに憧れ、
どうにかして、その夢を叶えることができないかと考えていた。
秘密基地を作って、そこで暮らすことができないか、
段ボールの中で、一人暮らすことはできないか、そんな叶いもしない空想を描いては
実行しようと、準備をしたものだ。
まぁ。結局は、父が心配するからという理由で、門限までには帰って
一人父の帰りを待っていた。
家は、父子家庭だ。
母は、私が小学2年生のときに、家を出て行ったきりだ。
ヒステリックな母親だった。
カッとなると、もう止められない。
最終的に、何が引き金になったのか、こっちも忘れてしまうくらい
あんなこともあった、こんなこともあったと
いろんな過去を引っ張り出して、私を責め立てる。
うんざりして、違う部屋に移動しても、着いてきて、永遠と話を聞かされる。
毎日のように、怒られていた。
ある日、車の中で母のヒステリックスイッチが入った。
適当に、言い返していると、母は私に言った。
「あんたを、車に乗せてると、このままつっこみたくなる。」
強烈な一言だった。
実の母親に、殺したくなると言われたのだ。
当時の私は、ポカーンとするしかなかった。
いくら記憶を辿っても、鮮明に残っている母との思い出は、
それくらいだ。
私は、母が大嫌いだった。