1/6
何を思い、何を選ぶのか。
秋風に吹かれる迎え火を眺めながら、ふと昔のことを思い出す。
父に誘われて、外に出た。
おがらに火をつけ、空を見上げる。
それが、我が家の夏の恒例行事だ。
年々、おかえりを言う家族が増える。
あぁ。私も、この迎え火で帰省するところだったんだなぁ
と空から、火に目をうつした。
父は、迎え火を見ながら、何を考えていたのだろう。
娘が、魂となって帰ってくることを想像しただろうか。
聞けない。
そんな残酷なこと、聞いてはいけない。
罪悪感と自分がここにいることへの安堵感が湧き始めた。
そっと目を閉じ、心のアルバムにある7月9日のページを開いた。