第41話 お前はここで死ね!!
「どーも。ダーレン博士」
「その装備は何だ?! 私は何も知らんぞ!?」
「そりゃ、『人型強化装甲』をあんたに知られると色々とマズイ方向に舵を切られるからな。ノート博士もよくわかってらっしゃる」
「ふざけおって! ノートもアンバーも、私を何だと思ってる?!」
「二番煎じ」
「黙れ! 私がどれだけ祖国にこの身を費やしたと思っている?! それが左遷だと?! ふざけるな!」
「だからって技術を横領するのはダメじゃないですかね?」
「平和維持と言った生温い思想など、他国に隙を晒すだけだ! 何故貴様らはそれがわからん?!」
「わかりたくねーっす。それじゃ連行しますよ。大人しくしてください」
「くそっ! このままでは終わらんぞ!」
「おい、そっちはお前の起動した転送装置が――」
逃げようとしたダーレンは不用意に近づいた亜空間転送装置に吸い込まれ消息を絶つ。
「ファウスト・フレデリック・ゴードン!」
ファウストはこの世界に来てからフルネームは名乗らなかった。
理由は見分ける為である。
もし、この世界でファウストのフルネームを告げる存在がいれば間違いなく元の世界の知り合いであるのだ。
「元気そうで何よりです。ダーレン博士」
「よもや、こんなところで貴様と再び合間見えるとは思わなかったぞ。ファウスト!」
「オレもですよ。まぁ、老けましたねぇ。いつから異世界に?」
「貴様とノートの兵器にコケにされてから既に10年は経っておるわ!」
「元の世界ではあんたが消えてから5年ですわ」
「ノートの奴は性懲りもなく生温い兵器ばかり造ってると見える! それに比べて私の『魔装甲』は数段上を行く!」
「別にこの世界ならいいんじゃないですか? そんなのよりもヤバい生物は沢山いますし。ただ、邪魔しなかったらオレもそっちには干渉しません」
「馬鹿が! 貴様とノートに受けた屈辱は決して忘れんぞ! いずれノートもこちらに来るだろう! その時に奴は『魔装甲』の前に知るのだ! 私の方が優れていると!」
ダーレンの言葉にファウストは少し沈黙しつつもノートの事を口に出す。
「それは無理だ。ノート博士は死んだ」
「なにぃ?」
嫌悪していたとはいえ元は同僚だ。ダーレンもノートの死には思う所があるハズ。
「くく。そうか死んだか! 愚かで馬鹿な奴だ! 最初から私の後ろを歩いていれば良かったものを!」
「……いくら憎かったとは言え、他に言葉はないのか?」
「ふん。ノートがどうなろうと知ったことか! 心残りがあるとすれば、ヤツの死に様を拝むことが出来なかった事よ!」
「……オレは兵器と兵器を造るヤツを悪だとは思わない。平和を維持する為には軍事力が必要だからだ」
「まだ、生温い思想を抱いているのか! 兵器とは力! 他を圧し、支配する為の手段だ!」
「よく解った。ダーレン、お前が生きていると死人の桁が上がる」
アリスは『人型強化装甲』を通して管理しているファウストの身体状況から彼がどんな感情を抱いているのかを理解する。
「オレの目的は帰還だが……その障害となる存在の殺意与奪は現場に一任されている」
「抜かせ!」
「「お前はここで死ね!!」」
ファウストとダーレンは同じ言葉を口にし、戦闘態勢へと移った。
「……そうだ。ボクたちはここが好きだったよね」
静寂の草原でサハンは竜と対面していた。
夜空からの光は竜の鱗に反射し、その姿を遠目からでも確認できる。
“……捨てたのはお前だ”
「……」
竜からの念話にサハンは返す言葉もない。
「そうだね……ボクが悪い。ボクの考えが君を孤独にしてしまった」
サハンは胸に手を当て後悔する。
クェンが言っていた事は何一つ間違ってなかった。
「ボクたちは人とは違う。だから、それを知る為には永い時を使って人と共に生きるしかないんだ」
サハン今まで、国と伝説にしか寄り添っていなかった。
「だから、ボクは人も知ろうと思う。そうすればボクたちはもっと『草原の国』が好きになる」
竜はサハンへ視線を向ける。その眼は――
「ボクの弱い心が君を苦しめた。ごめん……シャロン。もう、終わりにしよう」
竜――シャロンはアギトを開くとサハンへ喰らいついた。
謎の人物から渡された『楔』を使ったサハンは直後に気を失なった。
次に目を覚ますとクェンの部族に保護されていた。
「雨の中、倒れている者がいると聞いたが……君だったとは」
クェンの父親は意識を戻したサハンの安否を見て安堵する。
「……すみません。何が起こったんですか?」
「君もわからないか。少し記憶が混濁しているのかも知れないな」
「……クェンさんの事はすみません」
「? 何故君が謝る?」
「ボクの本当の名前はシャロン。『竜の魔王』ライザーハンの孫です」
サハン――シャロンの言葉にクェンの父親は少し驚くが、
「そうか。まぁ、娘に気を使ってくれたのだな」
「いえ、そうではなくて。本当に……」
証明しようと力を出そうとしたが、いつも身体の中にある全てを鳥瞰できる程の膨大な竜のエネルギーを感じられなかった。
それどころか、どこか遠くに離れた様な感覚がある。
「……何で」
竜の力が失われている……? そんなことがあるのか?
「なら、シャロンと呼んでいいかな? 君にコレを見て欲しい」
と、彼が渡したのは一冊の日記だった。
「娘の日記だ。我々の部族は流れる都合上、死者の遺品は共に火葬する事になっている」
シャロンはクェンの日記を開き、その中身を読む。
そこにはサハンと名乗る自分の事と、その日にあった出来事が一日も欠かさずに書かれていた。
そして、彼女が草原に来た理由も――
「……」
シャロンは彼女の日記を読んで、涙を流していた。何の感情で流れた涙なのかわからない。
「それにしても君は運が良かったね。君を見つけた者が巨大な竜の様な生物が飛んでいく所を見ている」
「……え?」
「あれが、この国を護る『竜族』だとすれば本当に――」
「あの! その話を詳しく教えてください!」
それからサハンはクェンの部族に助けて貰い、数週間に渡って竜を追う。
そしてサハン城でファウストと出会った。




