表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
31/66

第30話 草原の国と使者

 風が流れ、草原の青草を揺らす。

 草原の国『サハン』では“穏やか”を体現したようにゆっくりとした時間が流れる。

 豪華絢爛な先進国に比べて田舎の様に見える、この国は大きな軍事力を持たない。


 古びた城は風化を保護する魔法によって一万年前も形を保ち、中にある王座には埃が積もっていた。


 『サハン』の王は過去に1日だけ存在した。

 『竜の魔王』と契約を交わし、以降は誰も王座に座る事はなかった。

 それは誰かが願ったわけでも、拒絶しているわけでもない。

 一度、『サハン』を見れば誰しもが分かる。この国は王など居なくても皆が笑顔で平和に暮らしており、誰も支配は望まない。

 最低限の秩序を護る『騎馬連隊』は国のあちらこちらで起こる小事に馬を走らせる程度。

 大きな事件も、国を脅かす脅威もない、平和な草原の国であるサハンは、本当に何もないのだ。

 全く特徴のないと言えばそれまでだが、急ぎ足に疲れた者にとって、この国への来訪はあらゆる価値が覆る事もあるだろう。






「いいね。オレも老後はこんなところでビールでも飲んで隠居したいもんだ」

『観光に来たのではありません』


 ファウストとディザロアの乗る馬車は、終着点の国で最も商業の集まるサハン城に着いていた。


「しかし道案内は必要ねぇな、こりゃ」


 城と言っても、観光名所のような古びた城と人の少ない城下町が、ふわふわとした雰囲気に包まれているだけだ。

 城門はあり番兵もいる。荷物があった為、引き留められたが、少し中身を改めただけで特に詮索はされなかった。


「緩いのか、それとも『魔王』の庇護を信じてるのか。どちらにせよ危機感の足りない国だな」


 均等に建ち並ぶ建物。誰もが顔見知りの様に顔を会わせれば立ち止まり、談笑を始める。

 武器を見たのは番兵のモノだけ。何故、ここまで警戒心が無いのか、逆に不思議になるくらいだ。


「完全に職業病だな。少し聞き込みするか」

『サハン城のマップを表示します』


 『人型強化装甲(アサルトフレーム)』はアリスに操作を任せ、地図作成の為に『光学迷彩』で町中を徘徊させている。


『広場に人が集まっているようです』


 ファウストの眼鏡(バイザーグラス)にサハン城でも一際広い地点に無数の生体反応が表示された。


「行ってみる。お前は迷彩の効果時間を気を付けつつ、あまりオレから離れるな」

『了解』


 ここからは完全に賭けである。犯人は来るだろうが、残り4日以内に『サハン』を襲撃するかは不明だ。


「あっちでも収穫があると良いけどな」


 ファウストは、『竜の魔王』の使者としてサハン城にある『騎馬連隊』の本部へ赴いたディザロアと二手に別れていた。






 騎馬連隊、団長スーランは来客者に対応していた。


「つまり、貴殿はサハンを貴国の傘下に加われと?」

「無論。王の居ない国とは言え、北の大陸への足掛けには十分な価値がある」

「北の大陸は七人の魔王の支配地だ。南の大陸ではそれを把握されて?」

「無論だ。我らが総統閣下は、かねてより北への進行を考えている」

「ならば、止めておいた方が良い。少なくともこの地は『竜の魔王』の契約下にある」

「一万年前のカビた契約に何の意味がある? 時代は進んで居るのだ。いずれ魔王も滅びる時代が来る」

「例え、そうなったとしてもサハンは貴殿達の傘下に収まるつもりはない」


 スーランは一度手を叩くと、それを合図に受け取った下士官が執務室の扉を開ける。


「お引き取り願おう。それと国境近辺での圧力行為と共に即刻引き上げるといい」

「ただの田舎国風情が……後悔するぞ」


 去っていく使者の背にスーランは教えるようにサハンの信念を告げる。


「貴殿の言葉には何一つ『義』は感じられない。力による支配は我々が最も忌み嫌う行為だ」

「……その強気な発言も『竜の魔王』ありきだろうが」

「例え『竜の魔王』が我々を見捨てたとしても、我々の本質は変わらない。その旨を総統閣下にお伝えいただこう、ダーレン卿」


 使者――ダーレンは吐き捨てる様に鼻をならすと執務室から出ていった。


「お疲れ様です、団長」


 年に何度かある、他国からある強引な要請をスーランは馴れたように毎回、捌いている。


「よくいる手合いとは言え、よくあそこまで強気に出れるものだ」


 サハンは『竜の魔王』に護られている。それは北の大陸では誰もが知っている事だ。

 故に、何かと要望を押し付けてくるのは南の大陸からの使者だった。


「南でも『魔王』の事は伝わっているはずだと言うのに」

「彼らはきっと『竜の魔王』様を知らないのだと思います」

「百聞は一見に如かず……か。しかし、些か気になる所だな」

「何か懸念が?」

「……念のため“大釜”の警護を増やす。彼らが国から出るまででいい」

「分かりました」


 下士官は出ていくと、スーランは書類の溜まった机に座る。

 すると、間を置かずにノックする音が聞こえた。


「今度はなんだ?」


 何かを伝え忘れた下士官が戻ってきたと思ったスーランは入室を促す。


「失礼する」


 入って来たのは仮面にフードを被った女だった。予想外の不審者にスーランは机の横に置いていた剣を取る。


「どうやってここまで入った?」

「私は敵ではない」

「証明できるか?」


 すると仮面の女は封印の魔法が施された瓶に入っている『竜の魔王』の鱗を見せる。


「……まさか」

「『竜の魔王』ライザーハンの遣いだ。事を大きくしたくない故に、最小限の接触のみで来訪させてもらった」


 仮面の女――ディザロアは、今回自分が来た目的と『竜王会』で起こっている事を説明する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ