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兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
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第24話 人気者

「これが朝と昼間に起こった爆発についてだ。何か質問は?」


 夜。島にいる全ての仲間を招集したディザロアは食事時に皆に対して今日1日に起こった事を説明した。


 ファウストの来訪、ヴォルトの襲撃、『太古の原森』との交戦。


 どれもが、島の進退を脅かす案件であり、仲間の誰もが不安になる。


「昼間の爆発ってどうやったんですか?」

「『人族』がやったって本当?」

「ヴォルト様も退けたって?」

「それ、『人族』に化けた『竜族』じゃないの?」


 と、思われたが刺激の少ない孤島ではファウストの巻き起こした事案は皆の興味を一心に引き付けていた。


 ディザロアは取り越し苦労だったと、改めて嘆息を吐く。


「それで、ロアさん。その『人族』はどこに?」

「私の家だ。言っておくが、ハン組長の判断が決まるまでは特定の者以外は接触を禁じる。破ったヤツは荒地の整備に行かせるからな」


 興味本位で接触しようとすると、またトラブルがあるかもしれない。


 え~! と不服そうな声が一斉に上がる。


「まったく。お前たち、ヤツは『人族』だぞ?」


 この島に住む者たちにとって最も忌むべき種族。中には『人族』が原因で家族を奪われた者もいると言うのに。


「皆さんは少しずつ、『人族』に対する軋轢が和らいでいるのかもしれませんね」


 フォルエルは島にいる者たちの精神的な面を管理しているため、現在の状況は悪くないと付け加えた。


「今の状況だと喜んで良いのか複雑だな」


 リーによるファウストの診断は悪くなかったが、やはり今回の一件の最終的な決断は『竜の魔王』に下して貰うのが一番だろう。


 ディザロアは席を立つと、ファウストに用意した食事を手に持った。






『今回の一件は兵器運用に関する国際条約に違反しています』

「別に問題はねぇだろ。別世界だし、何より敵は木の化け物だったし」


 ファウストは透き間風を塞いだ納屋で藁を敷き、仰向けに寝転んでいた。

 『人型強化装甲』を隣に置いて、唯一の私物である煙草を吸う。


『厳密な処罰を願います』

「お前に責任はねぇよ。命令したのはオレだ」

『プラズマリアクターに直接手を加えたのはワタシです』

「時には色々と段階を踏み越える事だって必要だぞ。緊急事態だったし、あの化け物はほっとけなかっただろ」

『プラズマリアクターはノート博士が人の為に作ったものです。兵器にするためではありません』

「結果としてヒトの為に救っただろ?」


 プラズマリアクターの爆発は古の樹を一瞬で全て灰にし『太古の原森』を完全に沈黙させた。


「兵器は使い方次第だ。決断は全部オレが下した。お前は上官命令を忠実にこなしたに過ぎない」

『……しかし』

「いいね。実に人間らしくなってきたな、お前」


 フフ、とファウストは茶化すように笑う。


『……ワタシの存在理由は何なのでしょうか?』

「自分で見つけろよ。確かなことは一つあるがな」

『……聞いてもよろしいでしょうか?』

「お前はオレの部下だ。それだけは死ぬまで変わらない」


 ファウストのその言葉を聞いて、アリスは考える様に沈黙する。


「にしても、腹減ったな」


 話題を変えるように空腹が無視できなくなってきた。

 昼は適当にリンゴに似た果物を渡されたが、それだけでは心許ない。


「アリス、映像記録の解析は終わったか?」

『はい』

「あの時、何がこっちに来た?」

『『支援輸送機』、『重武装コンテナ』、『ユニットコンテナ』、『ATB-7』の計四つです』

「確か『支援輸送機』は月面待機してたよな」

『はい。自動運転(オートパイロット)なので操縦者(パイロット)は必要ありません。同乗者も『スカルフラット』の隊員のみで、全員が作戦行動にて機からは離れています』


 ファウストは安堵の息を吐く。部下がこちらに巻き込まれた事は無いと言っても良いだろう。


「だが、ちょっとした懸念はあるな」

『ナンバー239の廃棄コンテナの件ですね』


 アレは初期実験に飛ばされたモノだ。時期的には作戦の四年前。

 しかし、あのうさぎ君は昨日落ちてきたと言っていた。


「となれば、ダーレンの野郎がこっちに来てるかもな」

『ダーレン・スキンの事でしょうか?』

「ああ。まぁ、(データ)の隅に置く程度で良いぞ」

『了解』


 それは、ファウストが初めてアリスと就いた任務。

 ノート博士の研究を横領していた科学者ダ―レン・スキンは、自らで造った亜空間接続装置に巻き込まれて消息を絶っていた。

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