第22話 ATT-2『試作型自動戦車』
「ロア、想像以上かもしれないわ」
ビリアはピットに運ばれながらディザロアと会話していた。
「今すぐ、島を出た方が良いかもしれない――」
それはビリアしか分からなかった。周囲の木々が古の樹へと変化している事に。
『太古』が現れる理由はよく分かっていない。
何かを犯した時なのか、それとも奴らの逆鱗に触れた時なのか、検証しようにもそうなった時に止める術が無いのだ。
かつて、『雲の魔王』との戦争で『竜の魔王』は『太古の原森』を見つけた――否、見つけたのではなく攻撃されたのだ。
ヤツの何に触れたのか分からないが『竜の魔王』は孤島を焼け野原にすることで難を逃れた。
その後、孤島の状況を聞いた『竜の魔王』は久しく恐れる事になる。
草木全てが灰になった孤島には、たったの数十年で緑豊かな深緑が出来上がっていたのだから――
後に『竜の魔王』は配下の者にこう命令を出した。
「誰も手を出すな。アレは、ガリアの言う通り……理の外に居る」
なれば殺すには理の外にある力しか無理だろう、と――
戦場に居ると嫌でもそう言った感覚が研ぎ澄まされる。
言葉で説明するのが難しいアレだ。勘ってやつ。特に自分たちの進退を脅かす現象は本能と肌が感じとり、チリチリと炙られている用な痛みを背に受ける。
ファウストはその感覚を、砕けた『太古の原森』から感じていた。
絶対にヤバい感覚。今すぐ退却しなければ高い確率で全滅する――
「どうすっかなぁ……」
しかし、退却する場の安全性を確保できているかどうかは微妙な所だ。
『太古の原森』は砕けたと言うよりもガンドが爆心を極めた箇所で折れた大木のように二つに割れた。
上と下に分かれて、その場に転がり、陽虫も離れて――――近くに立つ『太古の原森』に寄生する。
「!?」
「嘘だろ!?」
倒した存在は確かに足元に転がっているが、全く同じ姿の『太古の原森』が少し離れた場所に立っていたのだ。
「ウォォォ!!」
『太古の原森』が咆哮を上げる。すると、二人を呑み込む程の木の根が地面から現れ、波の様に襲いかかった。
「くっ!」
ガンドは拳を構える。しかし、さばける量ではない。
「――いいぞ。撃て」
その時、『太古の原森』を横から何かが撃ち抜いた。その身体を真っ二つにする砲撃は無警戒の側面から放たれたのである。
『次弾装填中』
巨大な薬莢を砲身から排出し、木々を『超高温切断刃』で切り倒しながら姿を表したのは戦車だった。
ATT-2『試作型自動戦車』。
それは実用化に向けた試験機。第三次戦争後に人員不足に悩まされた各国ではAIによる戦力確保が最優先とされ、様々な自動兵器の開発に着手した。
その中で、最先端を走っていたイギリスはアリスを軸にした自動兵器軍に着手。その初期に造られたのが『試作型自動戦車』である。
搭載兵器は『機関砲』、『超高温切断刃』、『電磁加速砲』の三種のみ。
敵地に投下し、コンテナを開放。そのまま、作戦行動に移るという、戦闘展開を想定されていた。
「なんだ? あれは――」
「味方だ。アリスが操作してる」
ガンドの疑問にファウストが答える。彼からすれば『電磁加速砲』の攻撃は光った瞬間に『太古の原森』が吹き飛んだ様に映ったのだ。
「アリス、そいつの動力源はプラズマリアクターだったな?」
『はい』
「プランは決まったぜ。ガンドの旦那! 今すぐ逃げてくれ!」
『太古の原森』が操っていた木の根は、意思を失ったかのように停止している。
「お前はどうする?」
「時間を稼ぐ! だから、あんたはなるべく遠くに走ってくれ!」
「馬鹿な――」
陽虫は新たに現れた『太古の原森』へと集まる。ATT-2はそちらに砲身を向け『電磁加速砲』の二射目を放った。
しかし、木の根による地面の波打ちで車体の角度が跳ね、射線が逸れる。
『太古の原森』が形成する樹槍を発射前に機関銃で破壊しつつ、『電磁加速砲』の装填を行う。
「ヤツは――」
「知ってる! ヤバい奴って事はな! だからこそ、あんたは逃げてくれ!」
「……わかった。死ぬなよ、ファウスト」
「元より、そのつもりだよ」
ファウストの口調からガンドは全てを彼に任せてその場から離脱した。
「アリス、時間を稼ぐ。三射目は行けそうか?」
『撃てますが当てるには工夫が必要です』
「オレの得意分野じゃねぇか」
『ワタシ達も離脱するべきでは?』
「確実に仕留める為だ」
『しかし……』
「おそらく、こいつが出てきたのはオレたちが原因だ。なら、ケツを拭くのはオレたちじゃないとな」
ファウストとアリスは周りの木々を太古の樹に変えていく――『太古の原森』に各々の武器を向けた。




