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兵士とAIの異世界帰還録  作者: 古河新後
1章 仁義と破壊の魔王
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第20話 禁止領域

「イノセント何をやってる?」


 リーの元から戻ったディザロアは、自宅を覗き込んでいるイノセントを見つけた。


「えーっと……通りかかったの!」

「……アイツはいない。ビリアと作業区画に行った」

「え? どうやって?」

「崖を走り降りたんだと」


 ディザロアはビリアと魔法による念話で常に連絡をとっている。


「あの鎧ってそんなことも出来るんだ……ふぁ」

「まったく、家のベッドを使って良いから少し仮眠を取れ」


 昨晩を徹夜で過ごし、昼時の現時点までイノセントは動きっぱなしだ。

 ディザロアは扉を開けてイノセントを招き入れる。


「相変わらず何もない……」


 ベッドと道具棚と、寝間着と服を収納するクローゼットしかディザロアの家には置いてない。


「雨風凌げるだけでいいだろ。少なくとも散らかってるよりはマシだ。それよりも、お前はちゃんと家は片付けてるだろうな?」

「おやすみなさーい」


 逃げるようにイノセントはベッドにダイブすると、秒で寝息を立て始めた。


「まったく……」


 ディザロアは幸せそうに眠るイノセントの頭を撫でる。

 昔はこうやって二人で身を寄せあって眠っていたな、と懐かしむ。


 “ディザロア、君の笑顔は眩しいな”


「……フォレス、私は笑えているだろうか?」


 皆を引っ張る責任がある。フォレスといた頃はよく笑っていたと自覚しているが、最近は――


「いかんな」


 マイナスな気持ちは“呪魂”の力を増してしまう。

 ディザロアは家から出ると魔鳥達の様子を見に歩き出す。と、


「……なに?」


 ビリアからの念話に、そんな声が出た。






『目的地に着きました』

「見りゃわかる」


 『人型強化装甲(アサルトフレーム)』を装着したファウストは、アリスの案内(ナビ)で反応があった地点へたどり着く。


「これはなんだ?」

「人工物なのは確かね」

「蹴ったら凹みそう」


 ファウストの後にガンド、ビリア、ピットも同じ様に長方形の金属の箱(コンテナ)を興味深そうに見上げる。


「アリス、ナンバーは?」

『……判明しました。ナンバー239で廃棄コンテナです。入っているのは『ATT-2』と思われます』

「期待外れだな。今欲しいものじゃない。しかし、まぁ……初期実験に飛んだヤツかねぇ」


 亜空間接続装置の初期段階では、いくつかの地点を繋ぐために様々なモノを転移させた記録が残っている。

 その過程で、転移した物質が、《《どこに行ったのか分からなくなった》》モノの多々あったらしい。


「説明してくれ」


 ファウストとアリスだけが理解していると察したガンドは説明を求める。


「これはオレの世界の物資だ」


 見たところ、自分が吸い込まれた亜空間接続装置の物資では無さそうだ。


「ガンドさん。『エンシェント』の領域に入っているわ」


 ビリアは周囲に生える木々が、太古の樹であると感じ取った。

 魔王よりも古い時代の木々。ソレを護る太古の魔物がこの島には存在する。


「お前達は先に戻れ。俺は最後まで立ち会う」


 ガンドはビリアとピットに領域の外に戻るように告げる。特にビリアはこの辺りでは全くの無力なのだ。


「そうするわ。ピット、護衛してくれない?」

「いいですよ」


 ビリアを安全地点に届けてから戻って来ればいい。ピットとビリアは一旦、その場を放れ――


 ウォォォォォォ―――

 低く、籠った鳴き声がビリビリと空気を揺らす。上空には魔鳥の群れが不自然に集まっていた。


『大尉、上空に異常な数の鳥類を確認』

「今度は何だ?」


 魔鳥が集まり、一本の木に次々に止まる。羽が散り、木の下を隠す様に覆った。

 そして、羽が全て落下を終えると一体の魔物が立っていた。






「おお、そうだ。忘れとった」


 孤島へ行く事を勧められたディザロアは、思い出したように補足する『竜の魔王』に呼び止められた。


「あの島には先客がおる。ワシよりも年寄りの魔物でな。そういう魔物は『魔王』の間では“太古(エンシェント)”と呼んでおる」

「倒すにはどうすればいい?」

「やめておけ。奴と戦うという事は島の生態系そのものを相手にするようなものだ。特に“エンシェント”どもは『魔王』間でも手を出す事は良い結果にはならないと結論が出ておる」

「……襲ってきたら?」

「奴は一定の領域に入らん限りは出て来ない。場所に関しては後でシャロンに説明させる」

「しかし……万が一もあります」


 『竜の魔王』はそれでも倒す事を考えているディザロアに助言を残した。


「そうじゃなぁ、お前さんなら殺せるだろう。島ごと呪えばええ。それか、奴を中心に一帯を灰にするくらいだのう」

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