第13話 ファウストとディザロア
「ここでいい」
ディザロアは自宅の前に椅子を置き、『人型強化装甲』を壁に寄せるようにガンドに告げる。
「それで、オレはどうなる?」
縛られたままのファウストは何やら道具を展開するディザロアに尋ねる。
「とりあえず、椅子に座れ」
「その前に説明をしてくれ」
「お前と、その『あさるとふれーむ』とやらを描く」
と、対面に座るディザロアは道具を絵画に必要な画材を並べる。
「私達は『竜の魔王』の庇護下にある。今回の件を相談するに当たって、物的証拠と記録があった方が良いからな」
「『人型強化装甲』を壊すのは無しにしてくれよ」
「それは約束した通りだ。しかし、使えないように拘束はしっかりさせてもらう」
「助かる。オレに関しては、ちゃんとイケメンに描いてくれよ?」
ファウストは椅子に座り、一枚にまとめられる範囲に『人型強化装甲』も並ぶ。
ガンドは見張るように側に立ち、ディザロアは写生を開始した。
「ガンド、リーさんを呼んできてくれ」
「良いのか?」
「流石に何も出来ないだろ。スカイも見てるしな」
ガンドは目的の人物を呼びに場を離れて行く。
時折眼が合う二人と、屋根の上に降りる魔鳥――スカイのみがその場に残った。
「お前は――」
「ん?」
写生をしながらディザロアは同時に詰問も進める。
「どこから来た?」
「月だ」
「ツキ?」
「正確には月面下第六研究所。そこに造られた亜空間接続装置に吸い込まれた」
「……相変わらず、お前の言うことはよく解らん」
「大した事じゃない。ちょっと銀河を救っただけだ」
「その、ギンガとやらは救う価値があったのか?」
「ああ。オレの大切なモノも入ってたからな」
「なら、何故ここに来た?」
「さぁな。ノート博士に聞いてくれ」
「誰だ?」
「例の装置を造った人物だ」
「そいつも『人族』か?」
「人間って意味ならそうだな」
「……お前の装備は初めて見た」
「オレも喋る雷や水は初めて見たよ」
すると、ディザロアは手を止めた。
「角を持つ種族や木を操るヤツもか?」
「ああ。けど、それは大した事じゃない」
「何故そう思う? お前の知る種族とは大きくかけ放れてるのではないか?」
「心があるし、言葉も通じる。なら外見なんて些細な要素だよ」
「そうか」
「それに、美女と二人きりで嫌な気分になるヤツは居ないだろ」
わはは、と笑うファウストは現状を心底楽しんでいる様だった。
対するディザロアはいつの間にか写生作業に戻っている。
「お前は変なヤツだ」
「よく言われる。それが長所だってな」
ファウストはディザロアが知る『人族』とはあまりにも違いすぎた。
自らの命を差し出したり、逆に何の見返りもなく助けたりと、その行動に利のある事が一切ない。
「何故、そこまで出来る? お前は私達から逃げる事も出来たハズだ」
「かもな」
「答えになってない」
「他のヤツの顔なんて見えなかったんだよ」
ファウストは少しだけ身の上を語る。
「だから拷問も戦闘も余裕だった」
不吉な単語を使っているにも関わらず、彼の口調はどこか悲しげである。
「けど、今は全部見えちまう。ソイツの顔からソイツがどういうヤツなのかを」
それは自分を家族のように迎えてくれた人たちと出会った時からだった。
「なら、何故戦い続ける?」
「納得出来ない事があるからだ」
ファウストの首から下がる二つのドッグタグ。
一つは自分のタグ。もう一つは、彼が戦いを続ける意味を与えた少女の名前が刻まれている。
「しんみりさせちまったか?」
「いや、お前がどういうヤツなのか、少しだけわかった」
「そうかい。オレとしてはお前の事を知りたいぜ」
「つまらんぞ」
「つまらなくはねぇだろ? その胸と尻は」
「……」
やっぱり、ロクでもないな『人族』は。
と、ディザロアのファウストに対する評価が下がった所で、ガンドが目当てのヒトを連れてくる。
「お話中?」
「いや、少し距離を置きたいと思った所だ」
ディザロアは、肩をすくめるファウストに呆れながら、『竜族』の老婆――リーへ彼への詰問を交代する。
リーは相手の虚言を見抜く魔法に長け、元『竜の魔王』の側近だった。




