第七話 樹の上の呪われ少女
「樹の上ですよ!」
その声の主を探すため、ユーラとダンスは空を見上げる。しかし、無数にある大木はどれも普通では考えられない程の高さで構えているため、容易に見つけることは難しい。
「あ、あれじゃない?」
ダンスが持ち前の視力で青髪の少女を見つけ出す。少女は大きく手を振っていた。
「まって!今行く!」
ユーラが杖を掲げるとユーラの背中に翼が生える。それを使って高い杉の木の枝で助けを求める少女に向かって直進する。すると、
「なに!?」
少女のいる枝にたどり着く直前、ユーラは横から同じ速度で飛んで来た何かとぶつかりそうになる。その何かもユーラに驚いたのか急ブレーキをかけた。
「おっと、びっくりしました。」
ユーラは少女の居る枝に着地し、その後姿を確認する。するとその影は、浴衣のような和風の服装にマントを羽織った人間だった。ユーラと同じ、もしくはそれよりも背が低い。また、そのマントに描かれているマークにユーラは驚きを隠せなかった。
「え、帝国!?」
ユーラの声につられてか、和装姿も枝に着地し振り返る。するとその正体にユーラはさらに驚く。その和装姿の人物は、まだあどけなさが残るおかっぱ頭の少年だったのだ。少年はにっこりとユーラに話しかける。
「いやあ、失礼しました。まさか僕以外に人がいるなんて思わなくて。」
ユーラはワンテンポ遅れて返事をする。
「それはこっちのセリフよ。しかも……背中のマーク、あんた帝国の人なの?」
「はい、見てくれがこんなんなので疑われますが、立派な第十黄道騎士団の者です。」
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少女救出した後
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「いやあ、面白いですね。この森のパトロールで人と出会うなんて、初めて来たので森の地形もよく分かんないんですが。」
少年の発言にダンスは質問する。
「パトロール?こんなとこを?」
「はい、この森は国境が曖昧ですが、ここ独自の雄大な自然環境や動物たちは守っていかなければなりません。
あと、友好国だから大丈夫とは思いますが、隣国が怪しい動きをしてないかとかのチェックなども行うのです。」
そう言う少年は森を見渡す。すると、なにやら積みあがったこの森に住む動物たちの屍が見えた。
「ん?え、これは……。」
少年は目の前にある明らかに自然じゃない光景に戸惑う。
「なんでしょうね、これ。」
困惑する少年にユーラは無機質に答える。
「え、これ、自然にこんなことあるんですか?まさか?」
「いやーどうでしょうね。あるんじゃないんですか?自然ですもの。」
ユーラの反応に少年の困惑はいっそう強まるが、次第に脳はそういうものなのかと麻痺し始める。
「ま、まあ、ですよね。こんなこと、普通の人間にできるわけないですよね。倫理的にも肉体的にも。」
ダンスはユーラの堂々としたしらばっくれように最早尊敬の念すら抱いていた。
「それに、この開けた空間も不思議ですよね。」
少年はユーラ達が狩猟の拠点としていたギャップを眺める。
「ここに立つ樹々は雷や嵐程度じゃ一帯が破壊されることはない。なにか、人知を超える超災害でも起きない限り、こんな大きなギャップができることなんてないはずですが。」
その発言を聞き、ダンスはまさかと思ってユーラを見る。しかし、ユーラも流石に私じゃないと言わんばかりに小刻みに首を横に振った。
「とりあえず、帝国の少年くん。お勤めご苦労様、この屍の山は私達がなんとかするからそこの寒そうな子よろしくね。」
ユーラはビキニの少女を指差し、別れを催促するように少年に指示を出す。しかし、少年も仕事でここに来ている以上、相応の決定権は持ち合わせていると言い返す。
「なんか上から目線なの気になりますね、僕こう見えても15才なんですよ?」
「私はこう見えて17歳です。ほら、お姉さんの言うこと聞きなさい。」
帝国を毛嫌いしているユーラにとって、帝国の関係者と一緒にいる状況は一刻でも避けたい。それも、パトロールに来た森の動物を駆逐した直後であるためなおさら気まずい。
しかし、ダンスには少年とユーラが上手く馴染んでいるようにも見えた。
「ねえ、少年。君はなんていうの?」
「馴れ合いは止めなさい。」
ユーラはダンスに小声でささやく。
「ああ、自己紹介しときますね。僕のことは父から頂いた名である恐山とお呼びください。真名は別にあるのでそこはご安心を。」
「ありがと、私はダンス!こっちの偉そうなのはユーラって言うからよろしくね。」
「……あの、すみません。」
ダンスと恐山のやりとりに、先程まで樹の上にいた少女が口を開いた。
「あの、お願いがありまして……退治して欲しい人たちがいるんです。話だけでも聞いてくれませんか?」
その少女の怯えた様子に、先程まで遠い目をしていたユーラと、のんびりとした目をしていた恐山の目つきが変わる。
「詳しいお話を聞きますよ。その退治の正当性を判断し、解決するのも騎士団の仕事です。」
恐山はビキニの少女に優しい口調で歩み寄る。その様子はユーラの目にも映っていた。
(帝国にもこんな奴いるのか……。)
ビキニの少女は深呼吸をする。
「はい、まず、自己紹介から。うち……私は審判という者です。」
ジャッジメントと名乗る少女は自身に起きたことを話し始めた。
「実は私、魔法によって姿を変えられてしまいまして、その姿を変えた犯人が私の家に潜伏しているんです。どうか、魔法を解いてください!」