第二十二話 探し人の出会いと国王の疑惑
「お前はこの病院の人間で間違いないな?」
「な、なんですか?いきなり……。」
デーモンは病院の看護婦に尋ねた。
「ルーレンシアなら幻影傷についての見聞もあるはずだ。幻影傷を治療するための機材や薬品はどこで取り揃えてる?」
「幻影傷、なぜそれを?患者様がいるのですか?」
「いや、俺の単純な好奇心だ。」
看護婦は首をかしげながらもデーモンの質問に答えた。
「珍物街の三番地、そこに妖国から商品を仕入れている店があります。なので、薬はそこで仕入れているはずです。」
「なるほど、ありがとよ。」
必要な情報を手に入れ、踵を返すデーモンを看護婦は呼び止める。
「幻影傷はとても素人が治せる怪我ではありませんよ!?」
「分かってる。まあ、最悪もっかい来るさ。」
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珍物街三番地にて
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「ああ、煙草吸いてえな。」
デーモンはそう呟き辺りを見渡す。人通りの多いところで申し訳なく思ったのか、デーモンは路地裏へと入っていった。
ガサガサ
「ありゃ、切れてたか……。」
「お上げしましょうか?その代わり、私も火を忘れてきたので貸してくださいな?」
いつの間にか、デーモンの横に女性が立っていた。女性もデーモンと同じ目的でここに来ていたようだ。
「おう、すまねえな。」
デーモンは女性から煙草を受け取り、ライターを貸し出す。その煙草の柄にデーモンは思わず声が出た。
「花柄ねえ、これは桜か?しゃれてんじゃねえの。」
「味もここら辺ではなかなか無い味ですよ?」
デーモンは女性からライターを受け取り煙草に火をつける。煙を噴き上げ一息つくとデーモンは得意げに口を開いた。
「俺を舐めないでもらいたいねえ。この味は妖国の柄だろ?珍物街で買ったのか?」
「あら、分かるのですね。ですが、これは地元から持ってきたものです。」
「へえ、わざわざ遠いとこから……。」
二人は一服し、しばらくの沈黙が流れる。不思議な親近感を持った二人は、世間話のように会話を始めた。始めに沈黙を破ったのはデーモンからだった。
「実は、人を探していてな。」
「あら奇遇、私も人を探してまして。」
「腕が翼のエロい恰好の女と、」
「そうそう、獣の耳をつけた貧乳の子を連れて、」
・・・
二人の間に三拍ほどの沈黙が流れる。
「「え!?」」
二人は顔を見合わせ、セリフを重ね驚嘆するのであった。
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その頃城では
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「おやおや、狼も来てらしたのですね。」
オフィウカスはぐるぐるの眼鏡を持ち上げ、ジュピタが入った部屋に居たウルフに声を掛けた。
「うるさいねえ、じじい。俺はもう二度とあんな奴に関わりたくねえんだよ。」
「やーい、びびりびびり!」
「あ!?」
ノーマの煽りにウルフの怒号が飛び交う。それをジュピタは叱責した。
「やめてくれよ、国王の前だぞ?」
そう言いジュピタは玉座に座るルーレンシア国王の方を見る。
「ま、まさかバルコニーから来るとはな……そこは来客用の入り口では無いのだが……。」
「それは失礼いたしました。」
戸惑う国王にジュピタはお辞儀をする。ここはルーレンシア国王の第二王室、時計の針は対談の予定時間を丁度指し、国王の前に控える護衛の兵士たちにも緊張が走る。それもそのはず、相手は惑星、世界に轟く帝国の最高戦力の一人である。
「それじゃあ第八(付き添い)の皆はおつかれ、終わるまで城の外で遊んでていいよ。」
ジュピタは第八の研究室長たちにそう言い放つ。それに対しウルフは怒りを露わにする。
「んんはあ?おいジュピタ、俺がお前らを待っていつからここにいたと思ってる!」
「それはごめんね。でも、帰っていい。」
ジュピタは静かにそう言い放つとウルフをじっと見る。ジュピタが放つ圧に、ウルフは言い知れぬ寒気に襲われる。
「んんん、し、仕方ないねえ。」
「ええ、わたしたちここ来ただけ?」
「おや、本来の目的は赤毛の魔女からの逃亡でしたぞ。」
第八の研究室長たちは各々の思ったことを自由に漏らしながら王室を後にした。
「お騒げせしました。さて、」
第八が居無くなった途端、ジュピタの雰囲気が変わった。
「呪術師たちの襲撃を依頼したのがあなた達という疑惑がかかっていますが、我々はこれをほとんど事実だと思っております。いちようお聞きします。あなた達の言い分を聞かせてください。」
静かに睨みを利かせながら問いかけるジュピタに、国王は大粒の冷や汗を流しながら抗議する。
「な、なんのことだ!?私達は知らないぞ!」
「証拠は出てます。うちの優秀な捜査部隊が見つけ出してくれました。」
「そんなの君たちででっち上げて君たちで裁くことだってできるだろ!」
「それじゃあ証拠をお見せしましょうか?あなた達への厳罰が数日遅れるだけですが……。」
「くっ……。」
ジュピタと国王の言い合いについに国王が黙り込む。しばらくの沈黙が流れ、国王が口を開く。
「貴様らの武力による脅しと重税でどれだけの国民が苦しんでるか分かるのか!?やれ!!」
その合図の瞬間、護衛の兵士たちが数珠を取り出した。その様子をジュピタは静かに見つめる。
「惑星(貴様ら)魔術師には魔力の強制操作は効くだろ!これで」
シュバッ!
しかし、国王のセリフは続かなかった。声を作る部分と声を出す部分と切り離されたためである。国王の髭を蓄えた頭部が床に転がり落ちる。呪術師たちはそれに怯え、ジュピタから逃げるように一目散に部屋の隅へと集まる。
「……。赤毛の魔法使い。ごめんなさい。ですが、これは仕方のないことなのです。」
ジュピタはため息を吐き、国王の首を掻っ切った蔦を自身の裾へと戻した。
「『惑星』は、反乱分子の始末、要するに『確定事項』でしか動かない。故に、今回の件も私が来た時点で『疑惑』じゃなかったんですよ。」
ジュピタはそう呟きながらバルコニーを見る。そこには、顔を青く染めたユーラの姿があった。




