第十五話 ちぐはぐのチームの結成
ジャッジの屋敷にて。
「ユーラ!俺と徒党を組め!」
デーモンの一言が響いた後、その部屋にしばらくの沈黙が訪れる。そしてそれを破ったのは、もちろん赤毛の少女であった。
「分かった。そんなにお友達になってほしいならなってあげる。」
「ちょっとユーラ!」
「ただし、その話は私とあんただけで決着をつける。それにダンスやジャッジを巻き込まないで!」
ユーラはデーモンを見つめる。しかし、デーモンの方は苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。
「お前なあ、徒党の意味分かってんのか?これだけの計画には仲間がいるんだよ。俺とお前の二人だけで頑張りましょう?おままごとじゃねえんだよ。」
デーモンはぎりっとユーラを睨みつける。しかし、ユーラもそれに屈しない。
「じゃああんたはいらない。私は一人で復讐を果たす。それができるように今まで力をつけてきた。」
「うぬぼれんなよ?世間も知らねえ子娘が。」
デーモンの低い声が響き渡る。しかし、ユーラは表情を微動だにしない。
「ちっ、分かったよ。しばらくはお友達でいてやる。どのみち気は熟してねえんだ、焦ることはねえ。」
(なんでさも当然のように私が頭数に入ってんの?)
ジャッジはそう思いながらも、やれやれというような表情で三人に声をかける。
「はあ、あんたらよく分かんな過ぎ。人んち爆破して、勝手に喧嘩して……。だから、しばらくこの家いて頭冷やしなさい。」
「「は?」」
このとき初めてデーモンとユーラの感情が一致した。ジャッジの不可解な言動に対する疑問に、二人は意図せず声を揃えてしまった。
「それじゃ、あたしは自分の部屋行くからまたね~。それと、あんたらの部屋好きに使っていいから。」
そう言うとジャッジはスキップしながら自分の部屋へと戻ってしまった。
「なんなんだ?あの鳥女。」
デーモンの愚痴をしかとし、ユーラはダンスの方を向く。
「……ダンス、部屋探そ。」
「え、ちょっとユーラ!」
ユーラはその部屋を後にする。それに付いていく形でダンスもいなくなったため、その部屋にはデーモンのみが取り残された。
「……くえねえやつらだ。」
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屋敷の一室にて
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「ユーラ……。」
「ねえこの部屋いいんじゃない?ちょうど二人分のベッドもあるし。」
「ユーラ!」
思いもよらぬダンスの叫び声に、ユーラは体を硬直させる。
「ど、どうしたの?ダンス?」
ユーラがダンスの方向を見ると、ダンスは涙をボロボロと流しユーラを見つめていた。
「ダンス?ほんとにどうしたの?」
「ユーラ……顔怖いよ……。」
そう言われユーラはふと部屋にあった鏡を見る。そこに映っていたのは、光のともっていない目だけを大きく開き、それ以外は死人のように虚ろな表情を浮かべるユーラの姿だった。
ユーラは思わず顔を手で覆いしゃがみ込んで顔を隠す。
「……。ごめん、変なことで頭いっぱいだったかも。」
俯きながら謝るユーラに、ダンスは覆いかぶさるように抱き着いた。
「ユーラ、私がついてるから。一緒にいるから復讐なんてやめてよ。」
「……無理。」
「やだ。」
「無理。」
「やだ!」
「無理!」
ユーラはダンスを突き放し、ダンスはユーラから距離を取る。そんなユーラにダンスはにっこりと笑った。
「よかった。いつものユーラの顔になった!」
そんなダンスの言葉を聞き、青みがかった顔は恥ずかしさで赤く染まり始めた。
「ユーラ、復讐は何も生まない。絶対に止めさせるから。」
「なに言ってんの?私はそのために生きてきたの、絶対火星を殺すに決まってるでしょ?」
話の内容は物騒ながらも、会話のノリはいつもの二人に戻りつつあった。二人はその後も下らない言い合いを夜遅く、眠るまで続けるのであった。
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一方 ジャッジの部屋
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「師匠、一時はどうなるかと思ったけど、また家が騒がしくなったよ。」
ジャッジは師匠と呼ぶその人物が写った写真に語り掛ける。
「やっぱうちも騒がしいしうるさいから、誰かいてくれないと辛いや。あの人達無理やり数日居させるけど、ここもう、うちん家だから文句なしね。」
嬉しそうに写真に話しかけるジャッジを、悪魔は扉の外から盗聴していた。
「……あんま昔を思い出させてくれんなよ……。」
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次の日
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ダンス「ギルドの結成?」
デーモン「ああ、まずはそこからだ。俺たちみたいなはみ出し者に社会的な地位はねえ。まずは正規のギルドを作り、組織の地盤を盤石なものにする。」
ユーラ「組織の強化しなくても、奇襲しかけて『惑星』一人づつ殺していけばいいんじゃない?」
デーモン「それができねえから言ってんだ。『惑星』はとある性質上奇襲に超強い。ありとあらゆる戦略を立てるために、ありとあらゆる人材を調達する。そのためのギルドだ。」
引っ掛かりあってた互いの気持ちを爆発させた次の日、雨降って地固まるとはその通りで四人は否応なく机を囲んでいた。
「どうせこの国を恨む奴なんてごまんといる。いちよう目安は立ててるが、人材は思ったより早く集まると踏んでいる。」
「帝国に助けられた直後にこんな話するの凄く心が痛いんですけど……。」
相手の目的を理解しながらも、自分の目的を正しいと信じる。全員がその立場にいるからこそ、自分に正直になることができていたのだ。
「それでギルドを作る条件だが……。まずは人数、ギルド申請の最低人数として五人必要だが、まだ一人足りねえ。」
デーモンは『今すぐできる!ギルドを立てる三つのコツ』と書かれた本を片手に説明する。
「探すぞ、俺たちの計画に賛同する。もう一人の仲間を!」




