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第十三話 決着と風の少年の正体

 ハーピィは死体の血肉を貪る卑しい種族として、他の種族から軽蔑されてきた。また、ハーピィ自体も事実として、頻繁に揉め事を起こしては恨み恨まれを仲間内で繰り返すような種族である。彼女はそんなハーピィの集団になじめなかった。


 そんなとき、孤独な彼女はカラス天狗の一向に遭遇する。高潔を自負するカラス天狗はハーピィと特に仲が悪く、このときも彼女はカラス天狗に襲われそうになった。


「貴様!そんな卑しい種族をかばうのか?そんなやつ破門だ!居無くなれ!」


「幼気な少女を庇って追い出される家なら失望した。自分から出ていく!」


 そのとき、同じ波長を感じたのか、泣きわめく少女を助けてくれたカラス天狗がいた。


------------------------



審判(ジャッジメント)?」


「ああ、そうだ。どうだ?かっこいいだろ?」


「んん、なんかいまいち……。私ジャッジメントって感じじゃないし。」


「いいんだそれで、お前は対立する種族の間を生きてくことになる。でも、それは虐げられることではない。お前自身が審判となり、ほんとに正しいことを見つけなさい。」


「なんかそれっぽいこと言った~。まあダサいけど師匠がくれた名前ならいいや。」


「ちょっ、ダサいって……。」


------------------------


「よくも飼い主を!」


 ダンスは鋭い目をで狙いを定め翔一に飛びかかる。


(速い!)


 翔一は振り下ろされた剛腕を紙一重で回避する。しかし、次の連撃は完全に避けきれずわき腹にヒットする。


「うっ!」


変化を遂げたダンスの身体能力・筋力は数ある獣の良いとこ取りであり、あらゆる部位の能力が野生動物のそれに匹敵する。そんな生物に普通の人間の身体能力で敵うはずがない。翔一も負けじと警棒を振るうが……


 ドスッ


「くそっ!びくともしねえ!」


 翔一は先程ダンスに数珠を切り裂かれていたため、頼みの綱である呪術も使うことが出来ない。警棒も効かず呪術もない。まさしく絶体絶命の状況である。


しかし、それでも翔一はにやりと笑った。


(馬鹿どもが!少しでも隙を見せてみろ!この大広間には呪文と手組だけで起動する結界が仕掛けられている。魔力を一気に飛ばす究極の術だ!それさえ発動させれば……。)


 翔一は一瞬の隙を信じてダンスの攻撃を避け続ける。そして


(今だ!)


 ダンスが一拍置いた瞬間、ダンスの足元を警棒で薙ぎ払い、ダンスがバランスを崩す。翔一はすぐさま距離を取りダンスに吐き捨てるように言い放つ。


「ざまあ!」


 翔一は片手を地面につける。


「気よ消滅せよ!万物を消し去り闇と成れ!(終わりだ!)」


……


 しかし、その結界が発動することは無かった。その理由は、翔一の手が魔法陣の描かれた地面から離れたからである。大きな翼を広げ、鋭い爪に翔一の体をぶら下げ、薄着の少女が空中を舞ったのだ。


「なに!?」


「ごめんね、こっちも騙してたのよ。あたしはあんたらの呪術にかかったふりをし続けた。遠ざかれば消えるような呪術だったけどね。」


 ジャッジメントは天井のギリギリまで上昇し、翔一を落とす。


「てめえ!」


「お願い!ダンス!」


「この高さから落ちたらとどめ要らないでしょ。」


 そう言いながらダンスはノリノリで翔一の落下地点に向けて構えを取る。


「ほんと、最低……。」


 ダンスの小言とともに、落ちてきた翔一にダンスの渾身のラリアットが入る。翔一はその一撃で意識が吹っ飛び、白目を向いて地面に倒れ伏す。


「やった!倒したよ!ユーラ!」


「…………。」


 ダンスがユーラの方を見ると、ユーラも気絶したように眠っていた。


「あれ、気持ちよさそうに眠ってるね。なんか、それ見たら私も……。」


 ダンスも床に倒れ込み、すやすやと寝息を立てる。激戦の最中で彼女自身も忘れていたが、彼女達は午前中から獣狩りに勤しんでいた身であった。疲れが限界に達し眠ってしまうのも仕方のないことだろう。デーモンとジャッジは、その様子を静かに見守っていた。


------------------------

その夜

------------------------


「酔い止め飲んだら治りました。魔力の乱れってこんなもんなんですね。」


「はあ、まだ気持ち悪い……。」


 ユーラ達は屋敷の外で恐山の応援が来るのを待っていた。元気そうに笑顔を浮かべる恐山とは対照的に、ユーラとジャッジは顔を真っ青に染める。


 特に、この二人に関しては肉体を操るだけの強力な魔力操作を受けていたため、酷い酔いと痛みが今も続いていた。


「この人達、ほんとに異世界の人なの?」


 ジャッジはロープでぐるぐる巻きにされた黒マントの二人を指さし恐山に尋ねる。


「ええまあ、呪術は異世界人のみが使う術ですから。どうやってこっちの世界に来たかまでは分かりませんが……。」


 ダンスとユーラは未だに半信半疑の顔を浮かべる。そもそも異世界という概念すらオカルトと思っている二人と、異世界人が当然居るかのように語る恐山との会話はたびたび食い違いがあった。


「あ、居ました!団長!」


 そうこうしているうちに遠くから声が聞こえた。


「団長!?」


 その言葉にユーラは反応する。反応した先には、帝国軍の鎧を着た兵士が十人ほどこちらに向かってきた。


「ちょっと!あの中に団長いるの!?」


「ユーラ、なんでそんなビビってんの?」


「だって、団長クラスと言ったら帝国軍のお偉いさんよ?一人でも敵にまわしたら面倒だし、権力的にも影響が大きいし……。」


 そうユーラが言ううちに帝国の集団はこちらに到着する。その中の一人の女性が口を開く。


「まったく、困りますよ団長。パトロール中勝手にどっか行っちゃって……。」


 団長と呼ぶ声に反応したのは、既に顔の知れた少年だった。


「団長って呼ばないで恐山と呼んでください。この年で団長呼びされるの恐れ多いんですから。」


「「「え?」」」


 三人はぽかんとした表情を浮かべる。そんな中ユーラが口を開く。


「団長?あんたが?」


「……。ええまあ、あんまり公言したく無いんですが……。」


 恐山は恐縮そうに答える。そんな恐山を見かね、驚く三人の少女に鎧の女性は口を開く。


「この方は今年、歴代最年少で団長に就任した第十騎士団、『磨羯(カプリコン)』様です。」


 ユーラは顔を固め恐山の方を向く。


「へ、へえ、団長様でしたか……。ええとキョウセンさん?」


「まったく、今回の事件を乗り越えた仲です。そんな白々しくしないでください。」


 そう言うと恐山はユーラ耳元まで近づく。


「ちょっと!なに!?」


 子供扱いしていたとはいえ、年の近い異性に接近されたことにユーラは緊張し取り乱す。


「ユーラ・ファントムサイト、あなたのこと、今回だけは黙っておきます。」


 そう言うと恐山は、他の騎士団と主犯の二人組、事情聴取のためにジャッジを引き連れ、その場を後にした。恐山はユーラの正体を見抜いていたのだ。


「まったく。どこまでも生意気なクソガキだこと。」


「私には優しい人に見えたけどな。」


 帝国軍を見送っていると、ジャッジが振り返る。


「ユーラ!ダンス!ありがと!」


 顔は良く見えなかったものの、その声色から満面の笑みが容易に伝わってきた。そんなジャッジを見送り、二人は屋敷の中へと入っていった。


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