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第十一話 キメラの少女の戦闘力

「……ユーラ!」


 ダンスはユーラを背負ったジャッジメントと対峙する。


「ダンスとか言ったっけ?犬女。」


「犬女……いい響きだけど今はそれどころじゃない!ユーラを返せ!」


 ダンスは両手を前に構え威嚇する。ダンスの両手はいつの間にか鋭い爪を光らせていた。


「そういう訳にはいかないんだよ!どのみちこいつをあんたに渡したところでこいつの眼は覚めないよ。」


 ユーラの目は未だに真っ黒に染まり回復の兆しを見せない。そんなユーラを一瞥し、ダンスはジャッジに言い返す。


「ユーラなら大丈夫。だから、いつ目覚めてもいいようにそばに置いとくんだ!」


 ダンスはそう言うとジャッジに飛びかかる。


「……こっちにはこっちなりの事情があんだよ。」


 ジャッジは重心を右に傾かせ、最小限の動きでダンスの攻撃を躱す。一方ダンスは着地した直後に再びジャッジの元へ方向転換し、負けじと重厚な右手を振り下ろす。


「くっ、強い……!」


 ジャッジはそれも後ろに反ることで躱す。しかし、ダンスの連撃は止まらない。そんな連撃をジャッジは紙一重で躱していく。いや、あえてギリギリのラインを見計らい最小の体力で躱している。しかし、だからといってジャッジに余裕があるわけでもなく反撃の隙が無いまま一方的な防戦が続く。


「うぐっ!!」


 しかし、そんな状況も長くは続かない。いよいよダンスの殴打がジャッジの腹部に当たりジャッジは嗚咽を漏らす。ジャッジはその攻撃もギリギリで躱しているつもりだったのだが。


「君わざとそういう避け方してるんだろ?こっちは少しくらいならリーチを伸ばせるんだよ!」


 獣人は自身が持つ動物の遺伝子を体の様々な部位に反映させることができる。その中でもダンスはキメラの獣人という珍しい存在。違う動物の遺伝子を組み合わせ反映させることで、多少のリーチを調整したのだ。


 ジャッジは地面を転がり壁にぶつかる。


「どんな悪事にも各々の事情がある。君の事情も察するけどユーラは貰っていくよ!」


 そう言い残すと、ダンスはユーラの方を向く。


「おい待てよ、まだ終わっちゃいねえぜ?」


 しかし、そこにはもう一人の人間がいた。倒れるユーラの前に、翔一が立ちふさがっていたのだ。


「なあ、鳥女?てめえちっとも使えねえな。」


「も、申し訳ございません。」


「駄目だ、お前は無能すぎる。今回のてめえとの約束は無しだ。」


「!?……それは話が!」


「この屋敷は奴隷を手に入れて、呪術を試して、お前をたっぷり調教してやることやってから返すつもりだったが……。残念だな、お前が無能なせいで永久に俺たちのもんだ。」


「お前……!最初から!」


 ジャッジは怯えながらも翔一に精一杯の睨みを利かす。


「……さあな。」


 そう言うと翔一は胸の前に数珠を持った右手を構える。


「クルイヤ・ヤナギビ、傀儡と成りて我に服従せよ。」


 翔一の呪文に反応し、ジャッジは目を黒に染め立ち上がる。その様子にダンスの視線はジャッジを向く。


「クルイヤ・ヤナギビ、ズボンを脱げ。」


「承知しました。」


 するとジャッジは自ら履いていたカーゴパンツのベルトを緩め始めた。


「ちょっと!何してんのよ!」


「おめえに見せてやってんだよ、呪術(この力)の偉大さをよお。」


 ジャッジはズボンを下すと履いていた紐パンが露わになる。それは上半身のビキニ姿と合わさり、煽情的な姿をより一層醸し出す。しかし、この戦闘の場ではそれが惨めな姿であることに変わりない。


「最低!」


 ダンスはそう言い放ち翔一に向かって走り出す。翔一に飛びかかろうとした瞬間、その手は止まった。


「なんだ?さっきはしっかり攻撃したじゃねえか?」


「……ほんとに最低。」


 ダンスは止めざるを得なかった。攻撃をしようとした瞬間ジャッジが翔一とダンスの間に割って入ったのだ。


「このために脱がせたの?」


「ああ、防御力低い身代わりの方が可哀想だろ?」


 翔一はジャッジの背中に左手を当て呪文を唱える。


「気よ穿て、肉体を蹂躙せよ。」


 その瞬間、ジャッジの背中から腹部にかけて衝撃波が走る。


「あぐっ」


その衝撃波はジャッジを貫通し、そのままダンスの腹部を襲う。


「きゃあ!」


 ダンスは腹から背中にかけて走った激痛に悲鳴を上げ思わず倒れ込む。しかし、ダンスよりも近くで衝撃波をもろに食らったはずのジャッジは低い声を鳴らしそのまま直立していた。


「おお、耐えるねえ。俺が操ってるだけか?」


 翔一はケラケラと笑いジャッジを足蹴りでどかすと、ダンスの前まで前進し、左手をダンスの頭に向ける。


「お前の真名を教えろよ、さもなくば。」


ガリッ!


「っ……てめえ。」


「あんたに使われるくらいならぼこぼこになるまで抵抗してやるよ!」


 翔一は左手からだらだらと血を流し、おでこの血管を浮き上がらせる。そのブチ切れようは誰の目から見ても明らかだった。


「じゃあやってやるよクソガキ!」


 ダンスは襲い来る衝撃に耐えるため、覚悟を決め目をつむる。


 ドカンッ!!


 鈍く重い音がした。しかし、ダンスに痛みは伝わってこない。不思議に思ったダンスは恐る恐る目を開ける。すると、ダンスの目の前にあったのは、怒りでおでこの血管を浮き上がらせたユーラの姿だった。


「あの野郎、人の胸揉んどきながらなんつった!?」


 先ほど響いた鈍い音、それは、ユーラの拳が翔一のこめかみに炸裂する音だった。


「ユーラ!」


 翔一の体は横に吹っ飛び、着地することなく壁に激突しめり込む。


「ダンス!その子連れて今のうちに逃げよ!私の魔導具探さなきゃ!」


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