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妖精さんの世界に異世界転移した。

作者: シノ

以前Xシリーズに投稿したものですが、R表現が無いもののためこちらに掲載します。

「ここどこ…?」

いつもよりずっとずっと小さな紅葉みたいな手のひらを眺めて途方にくれる。




キラキラ光る苔むした森。森と聞くと鬱蒼とした薄暗くて気味の悪いものを想像すると思うけど、まるで違う。小さな澄んだ泉のほとりには陽の光が差し、活き活きとした木々の葉っぱには小さく光り輝く宝石みたいな露がのり、空気も澄んでいる。




唐突だが、

私はファンタジーものが大好きだ。


ほんの小さな頃から妖精や幻獣たちが活き活きと描かれる世界に魅力を感じ、おとぎ話の絵本を読みふけっていた私は子どもの頃からの根っからの本の虫だ。

それは16歳の華の女子高生になっても変わらず、どんな時でも本は手放さなかった。


「今日は待ちに待ったラノベの発売日だ〜。せっかく寄り道して本屋さんで買ったんだからちょっとだけ読みながら帰ろうっと」



先月から発売予告をみて楽しみにしていた新しい小説をにやにやとご機嫌な様子で眺めている私は周りから見たら不審者だろう。


まぁ、これを本の発売日毎にやっているためご近所の方もまたあの子ね。とでも思ってくれているだろう。


いつもと変わらない帰り道。のはずだったのに。




確かに私はいつもの通学路を新しく買った本を眺めながら帰っていたはずだ。


いつもと違ったのは道路がマンホールの点検中だったこと。



沢山の工事中の看板を本に夢中な私はスルーし、

人が落ちないようにと設置された簡易なバリケードにも気付かず突っ込んでしまった私は本当に馬鹿だ。



突っ込んだ瞬間にやっと気づいた私は「あ、これは死んだな」と悟ったと共に工事作業中の方々すみません!とスライディング土下座を心の中でしながらマンホールの中に落ちていった。




ここで冒頭に戻る。



マンホールを抜けるとそこは森でした。

死んだと思ったが目を覚ますとこの綺麗な森だったのだ。どこも痛みもなく、怪我をしている様子もない。


が、なぜか制服がぶかぶかになっている。


なんでだろうとよくよく見てみると手のひらはふくふくぷにぷにとしている。本を常に読みすぎたせいで目が悪く、分厚いビン底眼鏡をかけないと何も見えないはずがいつもかけているメガネがない。それでも小さな手のひらはぼやけることもなくハッキリとそこに見えている。


「なんでっ…!」慌てて泉を覗き込むとそこには5歳くらいに縮んだ私がいた。




最初は慌てていたが、噂の若返り転移かと思うとなんだか逆にワクワクとしてきた。

この綺麗な森はファンタジー好き魂が疼くのだ。


妖精でも出てきそうな雰囲気をもっと味わおうと周囲を散策しようと思い立った。


制服はしょうがない。セーラー服は上着はスナップボタンで留めるとして、ぶかぶかなスカートは諦める。

彼シャツセーラー服バージョンとでもいう感じ。

半袖が八分丈くらいになっているし、下着もぶかぶかだけどしょうがない。


とりあえず第1村人でも探して屋根のある場所で寝たい。と森を歩いていると、がさり。とそれは現れた。




第1村人ならぬ第1妖精が。

妖精さんは手のひらサイズを想像していたけど、

等身大サイズ。むしろ大きいみたい。5歳児サイズになった今では相当大きく見えるが180センチは軽く超えているだろう。


妖精さんは驚愕の表情で私を見つめているがそんな様子でも巨大でも麗しい。目尻の皺から壮年妖精さんなのだろうが長い耳を興奮したようにパタパタしながら私に謎言語で一生懸命話しかけている。


「……?」何も分からず首を傾げていると

両手を差し伸べてきた。なんだろう?

ふわりと抱っこしてくれた。私の猫っ毛の黒髪をなでなでしてくれる。第1妖精さんは優しそうだ。

なんだか身振り手振りで指をさしたりしている。

わからないけど、頷いておこう。




満足そうに妖精さんは頷くと私を抱えて森を抜けると小さな集落にたどり着いた。私に気づいた村人妖精さんはみんな同じように驚愕の表情を浮かべている。「あー。やっぱり妖精さんの村なのね。妖精さんがいっぱい。ファンタジー万歳だ!」私を抱えた妖精さんは村の中央の立派な神殿に私を連れて行くと、これまたファンタジーな長老妖精さんがいる。


長老妖精さんもまた、興奮した様子で謎言語で話しかけてくる。長老さんは納得したように1つ頷くと

右手からふわりと光る蝶を出した。その蝶は蝶とは思えないすごいスピードで窓から飛び出しどこかへ飛んで行きあっという間に見えなくなってしまった。


「初魔法だ!」伝わらないだろうが、あれすごいね!と興奮しながらと私が窓のヘリから身を乗り出して蝶を眺めているとにこにこと第1妖精さんや長老さんが私を見つめている。


しばらくすると部屋の中に長老さんと第1妖精さんと似た意匠ではあるがずっと立派な衣装を身につけた絶世の美人妖精さんが何もない空間から突然現れた。



転移魔法だ!と感動していると、

現れた超美人妖精さんもまたみんなと同じように私をみて、驚愕の表情で佇んでいる。


あの衣装だし、長老さん達が平身低頭という感じで美人妖精さんに対応しているし、すごい偉い人だろう。


私もとりあえず挨拶だ。美人過ぎて気がひけるが勇気を出してお辞儀しながら「こんにちは」と声をかけると、


美人妖精さんは感極まった様子で顔を真っ赤にし、涙を浮かべながらぴるぴると長い耳を震わせている。


なんだろう。美人妖精さんは謎言語で一生懸命に話しかけながら膝まづき、私の手を取る。

なんだか疑問形⁇

何となく懇願されているような感じだ。


よく分からないけど何かお願いされてる?何でもいいかと適当に1つ頷くと、美人妖精さんは嬉しそうに何か唱え出した。すると、床に魔法陣が浮かび出した。



初転移だ!


一瞬の間のあと目を開けると煌びやかな空間に転移した私は驚いた。初転移への感動よりも、転移でたどり着いた部屋の麗しさとその場にいた人々のあまりの麗しさのインパクトの方が優ったからだ。


王冠やティアラを身につけた恐らく王様やお妃様だろう美しい妖精さんが驚きとわくわくとしたような表情でこちらを見つめている。普段だったら小市民な私はそれだけで萎縮してしまっただろうが、私は何より王様とお妃様の横にいる小さなお姫様から目が離せなかった。


お妃様譲りな輝くプラチナの髪にこの世界に来て最初に見た泉をそのまま瞳の形にしたような王様譲りの澄んだ青い瞳にその美貌は幼いながらも完成されており、本当に美しかった。



幼い頃に読んだおとぎ話の世界のお姫様が現れたようで感動していると

そのお姫様はぎゅっと私を抱きしめてきた。苦しいけどいい匂いがする。さすが妖精さん。妖精のお姫様に会えるなんてもう何でもいいや。

何でここに連れてこられたかは分からないけど、

王様達はにこにこしてるし、きっとお姫様のお人形的な遊び相手か悪くてもメイドかなんかとして雇ってもらえるかをあの美人妖精さんは頼んだんだろう。



と、その時私は小さくて華奢に見えるのにガッチリと意外と力強いお姫様にだきしめられながら能天気に私は考えていた。




驚いたことにこの世界では魔力の多さで寿命は異なりゆっくりと歳を取っていく。数百年間お姫様の遊び相手として過ごした私は、

なんだか分からないがお姫様と並んで儀式を受けさせられている。


お姫様は年をとる毎に麗しさを増し、神々しさすら漂わせている。あー謎言語でお姫様が私に話しかけている。



因みに謎言語は未だに習得できていない。

数百年過ごしておいてどうなんだとは思うが、言語も魔法を帯びており魔力なんて感じ取れない私は理解することができないのだ。

なので妖精さん達とは絵や身振り手振りでコミュニケーションをはかっている。この魔力がどうとかもみんなが頭を悩ませながら私に教えてくれたことの1つだ。そもそも言葉はあまり気にしてないのか行儀作法やダンス、貴族らしい人々の顔などは覚えさせられたが言葉は熱心には教えてもらえなかった。

あまりの理解できなさに言語は諦められたのだろうか。それともお姫様のお人形兼友人兼ペットみたいな括りだろうわたしには不要と判断されたのかもしれない。



ただそんな私も1つだけ言葉を覚えた。いわゆる「うん」とか「おっけー」ですとか色々意味を含んでいるらしい。頷きでの返事しかできなかった私が唯一覚えられたのだ。というか覚えさせられた。

お姫様は私に甘いがこの言葉だけはスパルタで教えられた。無駄にあるけど使えない魔力を動かすというのは非常に難しく、文字通り泣きながら数百年スパンで教え込まれた。


なんだかあの村から連れてきてくれた美人妖精さんがお姫様に尋ねた。

お姫様は「〇〇」と答え力強く頷いた。

次に美人妖精さんがわたしにも何か尋ねている様だ。

お姫様からも促されている。とりあえずここは唯一言うことができる「うん」の出番だな。


私も力強く「〇〇」と答えた。

すると儀式の間?にいた貴族、王族達から大きな歓声が上がった。


「ありがとう。私の黒い妖精。これからもずっと私と共に。」

とお姫様が私の手を取りながら麗しい笑顔で告げた。私に色気を飛ばさないでください。その年々増していく色気でお姫様様だと分かっていても悩殺されそうです。と心の中で思った瞬間。




「うん?……え⁇なんで言葉が⁇」



にこりと微笑む麗しいお姫様は実は王子様で

あの儀式は所謂結婚式で魂が結ばれたことで言葉が分かるようになったとか、

こちらの世界では黒髪黒目に丸い耳、莫大な魔力を持ちながら使えないという妖精の特徴だとか、

妖精は魔力は使えない癖に世界から愛されるというスキルのせいで生きる座敷わらし的な扱いを受けるとか、

あのお姫様に出会った時に一目惚れされ、プロポーズされていたから周りが微笑ましそうに見つめていたとか、

お友達兼ペット扱いかと思ったら婚約者として城に滞在していたとか、







こんな大事な大事なことを知ったのは結婚初夜を終え、

ぐったりと目覚めた次の朝だった。中性的な妖精国の衣装を脱げば麗しくも意外と逞しい王子様に抱きしめられながら寝物語の様に教えられて。








ファンタジー好きがファンタジー世界に転移したら私がファンタジー生物扱いを受けています。




歩きラノベダメ絶対。

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