表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き顔 ①  作者: Klory
1/1

君の泣き顔が見たい

続きものです。少し性的描写になるので閲覧にはご注意ください。

僕が彼女と初めて話したのは高校1年生、まだ入学してそう時間が経っていない時。放課後、教室に忘れ物を取りに急いでいた僕は、教室の扉を勢い良く開けた。そこに、彼女がいた。

彼女は自分の席に座って暗い顔で俯いていたが、突然現れた僕に驚いて顔をあげて、目が合った。そのまま時が止まったように見つめ合う。

その時僕らは同じクラスだという認識はありはしたものの、話したことは1度もなかったのでなんとなく気まずくなった。だから僕はさっさと忘れ物を手に取ってその場を後にしようとした。

でも、少し気がかりがあった。今の時刻は16時45分。この学校は部活動で使う教室以外は17時に鍵を締められる。もう帰らなければ行けないのだ。なのに彼女はまだそこに座っている。暗い顔をしているし、なにかあったんだろうか。

「君はまだ帰らないの?」

声をかけてみた。

「…」

返事がない。声をかけるべきじゃなかったか…と思っていると、彼女は自分の荷物を手に取って、俯いて黙ったまま教室を出ていった。それを見て僕も教室を出た。


高校に通う人の多くは自転車を使うのだろうが、僕はバスで通学していた。この学校からバス停は15分ほど離れた場所にある。そこまで歩いてバスに乗らなければならない。僕の前を彼女が歩いているということは、彼女もバス通学なのだろう。

彼女の足取りは重く、そんなに早足ではない僕でも彼女に追いつくことが出来た。彼女の横を通り過ぎる時、ふと彼女の顔を見ると、彼女は泣いていた。

僕はびっくりしてつい

「どうしたの!?」

と聞いてしまった。ついさっき、声をかけて失敗したばかりだと言うのに。

でも今度は彼女は僕に赤く涙のこぼれる目を向けて、声をあげて泣き始めた。

僕は慌てた。女の子と話すことなんていままでの人生であまりなかったし、ましてや泣いている子への接し方なんて分からなかった。ふと、目の前に小さな公園があるのを思い出して、その公園のベンチに泣いている彼女をなんとか座らせた。

彼女が泣き止むまで僕はずっと彼女と同じベンチに座って黙っていた。彼女とはできる限り距離をあけて、目も合わさないようにした。

彼女の鼻をすする声が聞こえなくなってからすぐ、彼女はぼそりと

「ごめんなさい」

と呟いた。

その謝罪が何に対してのものか分からなかったので、僕は無難に

「何かあったの?」

と聞いてみた。すると彼女は小さな声で教えてくれた。

友達と些細な喧嘩をしたそうだ。喧嘩の最中に、その友達についひどいことを言ってしまって、友達は怒って帰ってしまった。教室で1人残った彼女は、自分のした事をずっと反省していたのだという。

「このままあの子と話せなくなったらどうしよう」

彼女はそう言ってまたしくしく泣き始めた。

僕ははただそれを黙って見ていた。この時、僕にはある感情が芽生えていた。それは彼女への同情や哀れみではなかった。そして怒りや呆れでもない…それは興奮だった。


その後彼女には自分の心の内を話せばきっと大丈夫とか、友達もきっと分かってくれるとか、月並みなことをいって慰めた。相談に乗るから、とLINEも交換させてもらった。彼女は赤い目のままバスに乗って帰って行った。

僕は自宅に帰ってからも興奮が冷めきらなかった。彼女の泣き顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。

今まで女性の何かに興奮することはあまりなかった。高校生にもなれば、女性の体やそういう行為に興奮するものだろうが、僕は興味がないと言えば嘘になるが、いまいち乗り気にはなれなかった。

そんな僕が、こんなに興奮する時が来るなんて…

自分でもびっくりしている。しかもよりによって彼女に。だって彼女は、僕の目から見ても多分世間一般から見ても、お世辞にも可愛いとか綺麗とか言えるような容姿ではなかったのだから。

そう思うのに何故こんなにも興奮しているのだろう。それはきっと…


僕が、彼女の泣き顔に興奮する性癖だからだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ