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宵宮 律樹の苛立ち


 ガララッ!!


 年季の入った学校の引き戸は乱暴に開けられ嫌な音で鳴いた。その乱暴に開けた人物、栗花落 澪は親友の高千穂 梓の手を引き、走り去っていった。


 「ま、待ちなさい!!」


 続けるように水野もといハゲ……。あ、間違えたら。ハゲもとい水野は指導室を出て栗花落さん達を追おうとした、が。


 『水野先生、水野先生。至急、理事長室まで来てください。繰り返します。水野先生、水野先生。至急、理事長室まで来てください』


 という、放送が入った。

 今頃、栗花落さんはにんまりしてるだろうな。

 この放送は言わずもがな、先程栗花落さんが言っていた、パワハラを受け不登校になった生徒の親でも来たのだろう。

 水野は一瞬迷ったが、すぐに急ぎ足で理事長室に向かった。


 さようなら、水野先生。

 きっとあなたがこの学校に教師として来るのは、長くて今月いっぱいでしょうに。定年を迎えずに解雇なんて、可哀想に。まあ、微塵も思ってないけど。

 学校もバカじゃないから、訴えられたら事を荒立てず水野を速やかに解雇するだろうに。それと、たっぷりの謝礼金を用意して。うちの学校、まあまあの私立校だしSNSとかでもの拡散、炎上とかが一番怖いはず。


 引き戸が開きっぱなしの指導室の中には呆然とした、羽鳥さんと藤崎らしき人物がいる。藤崎の頬は真っ赤に腫れていたので、梓にビンタでもされたんだろうなと思う。さっきの音がそれだろ。

 ていうか、梓にしては手加減したな。成長したわ、中学の時は先生の後頭部に黒板消しぶん投げてたのに。器物損害に、暴行だよね。俺には出来ない。


 やっと我に帰った羽鳥さんはこちらに気が付いたようだ。こちらに駆け寄ってきた。


 俺この子あんま好きじゃないんだよなぁ。

 俺に媚び売ってんのも、俺みたいなの彼氏にしたら皆に羨ましがれそうって思ってるのがダダ漏れ。


 「律樹君……!」


 名前呼びかよ、そんな仲良くないよ俺たち。

 軽く引いている俺には気づけないようで、羽鳥さんはお得意の猫なで声で喋りかけてきた。因みに、上目遣いと涙目のオマケ付き。君彼氏いるでしょ、浮気相手だけど。


 「どうしたの? 羽鳥さん」


 素知らぬ顔で聞くと手を掴んできた。うぁ、鬱陶しい。


 「律樹君も知ってると思うけどね、私と高千穂さん色々あってお話ししたの。そしたら、高千穂さんが急に藤崎君をぶって……」


 色々、ね。私が浮気して話してたんだってのは流石にいえないよね。あと、急にぶったじゃないね。随分と前から梓はムカついてたと思うよ。


 「へぇ」と、軽く相づちをし、横目でちらっと藤崎を見る。

 あれが、梓の彼氏……? 要領悪そうだし、顔も俺とか梓のお兄さんの方が良いだろ。よくあの普通な感じで、女の子貢がせられたな。趣味が悪いとまでは言わないけど、相手をもう少し選べって感じ。


 「ねぇ、律樹君ってなんで高千穂さんと一緒に居るの?」

 「え?」

 「だって、律樹君すっごい格好いいから、すっごいモテるでしょ。だけど、栗花落さんと高千穂さんとはずぅっと一緒にいるじゃん。栗花落さんは凄い美人だけど、高千穂さんはそんなに……」


 「ねぇ、羽鳥さん。それってつまり俺が栗花落さんが美人だから一緒に居て、梓は鬱陶しいオマケってわけ……?」

 

 「え、梓って……?」


 質問よりも、名前呼びに反応してるし。そういや、こういう子の前で一人を名前呼びにすると、色々聞いてきて面倒くさいだよな。この子もその一人だったか。


 「困るんだよね。君みたいな勝手な妄想してくる子」

 「ぁ、え……?」

 「あのね、俺は好きで梓と一緒に居るの。いうと、栗花落さんの方がオマケ」


 つーか、あんな教師退職させたりする怖すぎる女子こっちから願い下げだわ。オマケというか、梓と二人っきりにさせてくれたこともないし。


 「で、でも! 高千穂さんが律樹君についてまわってるから、こうやって誤解が生まれちゃったの。それで、私が藤崎君と……。でも、それは高千穂さんが藤崎君の彼女なのにほっといたからで……私は今朝だって、高千穂さんの机の落書きだって消してあげ……」

 

 「ギャーピーうるせぇよ、クソビッチ。ほんと、人を貶すときと嘘つくときだけは回る口だな。可哀想なのはお前だよ、他人(ひと)から見た自分を一番気にしてて、一番わかってねぇし。周りの目見ろ、半分は軽蔑だぜ。あと、手ぇ離せ」


 「だ、誰……?」

「お前の大好きなルックスの良い、彼氏にしたら皆に羨ましがれそうな律樹君なんだけど。あと、藤崎君!」

 「え……? あ、何だよお前?」

 「二度と女の子に貢がせんなよ。二人ともこれからお前等より性格が悪い女が色々仕組んで大変な事になるけど、因果応報だし梓恨むんじゃねぇぞ」

澪りんの暗躍第二弾じゃあありませんでした。すいやせん!


もう、なんか皆コワイ。キリカ……お前もか……!

作者はもう少し羽鳥に優しくすれば良かった……!


裏設定


羽鳥は元々宵宮 律樹君のことが好きで(正確には宵宮少年のルックスが好きで)、今回犯行に及びました。


ネカマちゃんラブの女の子達は大半が梓と澪りんに一目置いています。なかには、キリカの進まないこじらせにこじられた恋に気付きくっつけようと頑張っている子も居ますが、澪りんに全て邪魔されてます。


キリカちゃんと梓ちゃんの出会った頃の話はいつか書けたらな、と……。



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