現実逃避をするような一日。 中編 / 栗花落 澪の暗躍
二本立てです。
ちょい、GL注意です。
誰かさんがやり過ぎてます。
「ホントにフラグ回収したのかよ……」
驚きながらキリカはそう言った。
現在、昼食時。
私と澪とキリカとキリカラブガールズで昼食を食べていた。全員お弁当である。
「ていうか、律樹。お前の弁当日の丸弁当よりも悲しい米だけ弁当だったろ、何でそんな豪華になってんの?」
「貰った」
見ると、律樹の横の女の子は律樹に唐揚げをあーんしてあげていた。けしからん。女の子に貢いで貰ってんのか。
「いいもん! 私には澪ちゃんという最愛の嫁が……」
「澪は将来、年収一千万以上のイケメンと結婚するから」
「見捨てられた!?」
「おい」
キリカのその柄に合わない真剣なに、思わず目を瞬かせた。
「良いのかよ。お前が怒られるんだぜ。それに、一番上の兄貴のことだって……」
「律樹」
聞きたくない単語が出て来そうだったので無意識にキリカの言葉を塞いでしまった。
まぁ、でもこいつも私の心配をしてくれてるんだろう。まぁ、中学からの腐れ縁出しな。ツンデレか? いや、気持ちわりぃな。
「……」
「じゃあ私は弁当食い終わったから、指導室行くわ。まぁ、私が教師をぶん殴って退学処分くらう勇姿を見とけ」
退学処分はくらいたくないけどね。
高速で帰ってきて安心させてやんないと。あの、ツンデレどもを。
☆☆☆☆
なんて。格好つけた去り方しましたよ。ええそう、格好つけました。「勇姿見とけ」何ていう数時間前のセリフは、今世紀最大の黒歴史になりそう……。
まぁ、なんというか。
ことの顛末はすぐに着いたんです。
流れは、ざっと。
指導室に入り、略奪趣味を持つ委員長、羽鳥ふわり。正直どうでも良い男、藤崎。三十路から毛根事情が悲しく空しい教師、水野。に、そういう趣味の部屋に入ってきてしまったのかな? と不安になるレベルの言葉責めをされ、藤崎をぶん殴ってやべぇガチで退学処分じゃん……。と思ったときに彼女は現れた。
「失礼しますっ!」
漆黒のロングヘアーに小柄な体躯。おまけにその声優さんみたいな声は、どう考えようとも私の嫁、栗花落 澪でしか無かった。
ほんと驚いたけどさ、私を救済する天使かと思ったけどさ。彼女、なんて言ったと思う。
「梓さんは、私と付き合っているので藤崎さんに嫉妬して羽鳥さんを貶めるなんてありえません」
だってよ。
もっと、うまい話あったよね。どうしよう、この子のお話をそのまま信じると、私と澪がガールズでラブってるみたいだよね。リアルGLだよね。
それから、澪は宛ら少女漫画のヒーローのように私の手を取り、走り出した。
意味分かんねぇって? 私が一番よく分かってねぇよ。なんだこの茶番。
☆☆☆☆☆
『梓が連れ去られる少し前のお話』
「さーて、これからどうしますかね」
今頃あの馬鹿は、ネチネチと嫌味を言われて限界の来る寸前だろう。流石に教師をぶん殴ったら問題になるだろうから、それまでに梓を指導室から出さなければならない。
そう思い、わざわざ人払いをし、指導室前でスタンバってたのに、隣の無表情の美人はあっさりと俺の存在意義を奪った。
「宵宮君は何もしなくて良いですよ。下準備は終わりましたので、後は簡単な仕上げだけです」
「へぇー、一体何したの?」
「羽鳥には、これまでの略奪趣味を少し悪く脚色をしてゴシップ好きで口の軽い女子達に吹聴しました。藤崎には、元カノに随分と貢がせるだけ貢がせて連絡を絶っていたようでしたので、今の電話番号を教えました。水野には、2年の女子生徒の不登校の原因をつくり、理不尽極まりないパワハラをしていた証拠を集めて匿名でその女子生徒の家に渡しました。羽鳥は学校から居場所を無くし、水野はこれから裁判で有利に訴えられ、職を失い、金を随分と取られるでしょう。藤崎は……、まぁ、散々な目に遭うでしょうね」
「ははは…………、そりゃまぁ恐ろしいことを。でもそんな短期間では無理だろ。水野の件とか二ヶ月前だから梓が藤崎と付き合う前だろ」
「水野は前々から梓を目の敵にしていたので。人の弱みは握れるうちに握っておく。私のポリシーです」
可憐という言葉を具現化したような美少女、栗花落 澪は病んでいる。親友の梓に随分と執心しているのだ。梓を侮辱する者や蔑む者は須く合法的に社会的な抹殺をする。
おい、梓。お前の嫁はツンデレじゃなくて筋金入りのヤンデレだぞ。
「あぁ、そう。じゃあ後の処理は栗花落さんに任せて、俺は何もしねぇよ」
どうやら出番は無いようなので、教室に帰ろうとすると、声を掛けられた。
「あ、すみません。一つだけやっていて欲しいことがありました」
「ん? なにをすればいい?」
「これからも、梓の味方であってください」
「……。そこは大丈夫だ、安心して」
あれには、これからもネカマの件の口止めもしていかなければならないし、俺が梓やあの人にしてしまったことへの埋め合わせも出来ていない。そんな状態で、あいつの敵に回るだなんて出来ない。しかも、もれなく目の前の女の子に社会的な抹殺をプレゼントされることだけは避けたい。これより前にも、何度か梓を侮辱などをした者たちが消えていったのだが、それを見ているからこそ心からこの美少女を敵に回したくない。
「やっぱり、惚れた弱みですか?」
「……ぇ……、なんで、それ……!?」
「あ、やっぱ当たりですね」
「ちょっと待って! 何で俺があいつを……」
「いってぇぇ!!」
思わぬ不意打ちの攻撃を食らい、自分でも驚く位に慌てていると、指導室から情けない男の悲鳴が聞こえた。トーンからして藤崎だろう。
「おしゃべりが過ぎましたね。でも、当たりです。同じ生徒なので教師よりは咎められないでしょう」
栗花落さんは指導室へ向かった。恐らく乱入するのだろう。そして、背を向けたまま一言。
「梓を貴方と付き合わせる位ならば、私が性転換手術を受け梓と結婚します」
あぁ、もう本当に怖い。この美少女が俺と接触する理由が今分かった。梓と俺を付き合わせない為の牽制だ。
次回はみおりんの暗躍パート2です。
引き続き、キリカちゃん目線で行きます。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
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