昨日の昼頃は宛らアメリカのとある浮気調査番組
「──それで、魔王に召喚されて、明日シフト入れて、時計渡して帰ってきたって?」
「そゆこと、流石兄貴理解早いね」
「夢で異世界召喚されるとか、とうとう頭が俺みたいになったのかよお前……」
「哀れんで馬鹿にするのか、自分を貶すのかどっちかにしろよ」
先程起こった事の顛末を兄に話した。というか、異世界召喚される前に喧嘩をしていたので、締め切った兄の部屋のドアの前でこの話を大声で言い強制的に聞かせたのだった。すると、気を引くためと言え自ら異世界召喚したという妹の頭の異常事態に兄はとりあえず自分の部屋に私を入れた。
そして現在である。
「確かに俺と喧嘩してた時、お前の腕には時計があったよ」
「でしょ!」
そうだ、そこなのだ。流石に夢だと思い直し、部屋中捜索したのだがやはり無かった。兄と喧嘩をしてすぐに部屋に入ったので、他の場所にあるとは考えにくい。
「といってもなぁ、お前の部屋汚ぇし」
「うるせぇ、死ね。ちゃんと見たわ」
「口汚っ……!」
「まぁいいや……」と諦めたように、兄はため息交じりに言った。非常に鼻についたが、見逃してやろう。
「シフトとかいうの何時だっけ?」
「8時半」
「じゃあそん時俺と居ろ」
「おぇ……」
「どうした!?」
「ちょっと『俺と居ろ』って言う部分がキショかった」
「やめろ、無意識なのにハズい……!」
結局その夜、兄にはキチンとは理解されず明日夜様子を見る。ということになった。
☆☆☆☆
ドゥルッッドゥルッ!! ドゥルッ……
「うっさい! はー、はー。なんで目覚ましの音これにしたんだっけ……」
目覚ましでドゥルッ!! って何だよ。というか、製作者も何を思って寝起きにこの曲を選択出来るようにしたんだ。
そういえば、昨日の夜は夢見なかったな。魔王とかそういう夢見ると思ったのに。昨夜のことは夢だったかのように平和に今日まで時が過ぎた。
雨戸を開けると目いっぱい日が差し込んできた。その光をカーテンでカバーして明るくなった部屋を見渡す。その感想はまさに『汚部屋』の一言。折角の朝の爽やかな気分は自分の整理整頓能力の無さによって消された。
「行ってきまぁすー」
そんな不機嫌を引きずったまま家を後にする。あぁ、学校に行きたくない。仮病を使えば良かった。だって学校にはアレが待ってる──。
時は一日前の昼頃に遡る。
その事件は起きた。
そのとは平たく言えば『浮気』だ。
私の彼氏とクラスの学級委員長の女の子がキスなんかしちゃってまぁなんともベタベタしているところを偶然見てしまった。気分は宛らアメリカのとある浮気調査番組の浮気された女の人。と言うわけでもなく、まぁ、流れで出来た彼氏だったしさっさと別れようと思った。
私はカチンとくると喧嘩腰になるが、最早私の中でその彼氏はあまり重要でも無かったのだ。初彼でもないし、思い入れも無い。
本来ならばそこで解決するはずだったのだ。そして問題は起こった。
その浮気した件の委員長が「何故怒らないの!?」と真逆の逆ギレしてきた。意味が分からない。まずまずお前に言われたくない。だがあまりにも面倒くさいので、彼氏と話して別れて彼氏とも委員長とも関係を絶とうと思い、別れようと言ったら彼氏には「お前俺のこと好きじゃないのに付き合ってたとかマジ最悪だわ」と言われた。お前もか。それでカチンと来て言いたいこと言って別れた(多分)。
そして下校時間。
こんな噂が流れ始めた。
高千穂って好きじゃないのに彼氏めちゃくちゃ束縛して、その彼氏が好きな人が出来たから別れたいって言ったらめちゃくちゃキレてたらしいよ。
おい待て。全然違う。こっちは逆ギレされたからキレたのお前に思い残しとかねぇから。というか、委員長貴様変な噂流しやがったな。
そんな噂をたまたま聞いた担任に私と元彼(多分)と委員長を今日昼休み集めて話させると言われた。
あぁ、最悪だ。
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