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7話 悩みと憂鬱

次の日、椿は、教室の自分の机に頬杖をついて、その日の授業をそっちのけでぼんやりと外を眺めていた。


椿の机は、教室の窓際に位置し、グラウンドや空がよく見えるのだ。


蒼空が透き通るように美しい。

もう日本では、春から夏へと季節が移り変わり始めていた。


…ただ、暑いのだけが、この季節の難点だが。


教室では、淡々とした国語教師の声と、黒板にチョークで字を書く音、そして、みんながノートをとる音しか聞こえない。


そして、淡々と響く教師の声に何名かは、こくりこくりと船を漕いでいる。


そんな中、椿が、授業そっちのけで考えていること、と言うのは、言わずもがな、昨日の話だ。


サンから語られた、異世界の話。

ルビー王国、マリーさん、魔法。


ファンタジーでしか聞いた事のないような話ばかり。


あまりにも非現実的すぎて、頭がついていけない。


そして、サンの、その国を救ってほしいという、お願い。


自分はどうしたらいいのだろうか…


何度となく自分に問いかけるが、答え等思い浮かぶ訳もなく。





「…きっ!…椿…!」


「……へひゃ!?」


突然の呼びかけに、ハッとする。

思わず変な声が漏れたが、この際は無視だ。


慌てて声が聞こえた方を見ると、お弁当を持って椿の机の前に立つ、友人二人の姿。


戸惑ったような顔をしている夢と怪訝な顔をしている琴音と目が合う。


「…え?」


……状況が読み取れない。

え?なんで?授業中では…??


頭の中でクエスチョンマークの洪水がすさまじい勢いで流れている。


「…ぼーっとして、どうしたんですか?」


琴音が怪訝そうな顔のまま言った。


「…え?なんで、2人がここに?」


椿が驚いた顔をしていると、それ以上に驚いた顔をする夢。


「…なんでって…ご飯食べようと思ったんだけど…昼休みだし?」


…ん?昼休み?


「…え?昼休み?…もう?!」


夢の言葉を聞き、目を見開く。

勢いよく手で叩いた為、ガタリと机が音を立てた。


「何を言っているのですか?先程チャイムが鳴ったでしょう」


「全然気づかなかった」


どうやら、悩んでいる内に授業が終わっていたらしい。


椿が大きな目を更に広げて言うと、夢が心配そうに眉を下げる。


「…何かあったの?」


…言ってもいいのだろうか。


サンに口止めされているわけではないが…。


でも、この2人は信頼できるし…。


それに…


1人で悩んでも答えなんか出なかったし。


目の前には心配そうな2人。


「…聞いて……くれる…?」


迷った末に、話すことにした。


出た声は、思ったより低くて、自分の声にびっくりする。


どうやら、自分は思ったより悩んでいるらしい。


椿の声に何かを察したらしい2人は、真剣な顔をして、


「うん、椿の悩みなら」

「力になれることがあるなら協力します」


と頷いたのだった。


それから2人は、近くにあった椅子を持ってきて、机を挟んで椿の向かいに座った。


そして、秘密の話をするように、椿に顔を近づけてくる。


「あのね…」


そんな2人に、椿は昨日のことを話したのだった。

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