2話 親戚では
琴音は最後のおかずである卵焼きを口にいれると、手をパチンと合わせて、
「ごちそうさまでした。」
と丁寧に挨拶をする。
椿も食べ終わっていたため、琴音に習って手を合わせて挨拶をした。
「えー!?椿も琴音も食べるの、早い〜!!」
夢は、そんな私たちを見て、食べかけだったサンドイッチを慌てて口へと詰め込んだ。
「そんなに一気に詰め込んだら、喉に詰まりますよ?ゆっくりで大丈夫ですから。」
そんな夢に琴音は苦笑する。
「はっへ、ふはりほもははいんだほん。」
どうやら、「だって、ふたりとも早いんだもん。」と言っているらしい。
「口にいれたまま、物を喋るのは、行儀が悪いですよ。」
それに対して琴音が、なんともお母さんのような言葉を告げる。
夢は、もごもごと口を必死に動かしており、琴音はそんな夢の様子を呆れた様子で見守っている。
そして、時々、ゴボッとむせる夢の背中を撫でてやったりしている。
夢は、動かなければ可愛いのにな…なんて思う。
椿は、そんな親子のような2人をよそに、教室の前方に座り、1人で静かにお弁当を食べる少女へと目を向けた。
綺麗な所作でお弁当を食べる、美しい髪の少女__雲月 百合は、最近、椿たちのクラスに転入してきたのだ。
「雲月さんですか?」
横から琴音の声が聞こえてきたため、椿は、百合から視線をはずし、琴音の方を向き、頷く。
「うん。」
「なんか、ミステリアスって感じだよね〜。」
先ほどまで、サンドイッチを口いっぱいにいれていた、夢が言う。
もう、サンドイッチと口のほうは、大丈夫らしい。
夢は、百合の方にそっと視線を向ける。
椿もそれにつられるように、再び、百合の方に視線を向けた。
サラサラしてそうな美しい茶色の髪。
折れそうに華奢な身体。
制服から覗く白い肌。
凛とした佇まい。
弁当を食べているだけなのに、優雅に見える。
そして、
「どことなく、椿さんに似てらっしゃいますよね。」
琴音が口を開く。
そう、どことなく椿に似ているのである。
雰囲気と、多分、髪の色。
髪質は、違うようだが。
百合の場合は、サラリとしたストレートヘアであるが、椿の場合は、くるくるの天然パーマである。
琴音の言葉に、夢がうんうんと頷く。
「親戚とかじゃないのー?」
夢の問いに椿は、首を横に振る。
全く記憶にないのだ。
「しっかし、似ているんだよなあ……他人の空似かなあ?」
夢が首を傾げて言った。
「かなー?」
椿も首を傾げて言った。
そのあと、百合の話を少しと、ファッションの話と音楽の話をしていると、
そうしている間にチャイムが昼休みの終わりを告げた。
ファンタジー感と恋愛感がまだまだ全然でてませんね…。
もう少ししたら、ファンタジー感は、出るはずです。
なにとぞ、よろしくお願いします。