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13話 ルビー王国へ

ええっと…間あいてすみません……。


ルビー王国に行くという覚悟は出来たし、魔法を使ってみるという覚悟もできた。とはいえ、魔法の使い方はわからないので、サンに教えてもらうことにする。


先程も言ったが、生まれてこの方、魔法なんてものに触れたことない為に勿論使い方は知らない。


そして、物語とかでよくある、何となく使えたーなんていう特典はなかった。悲しい。


そういう特典あってもよくない??

全人類が期待していたと思うよ、その展開、ね?


……全人類は言いすぎました、すみませんでした。


と1人、心の中で茶番をしていたら、サンに呆れた顔をされた。解せぬ。


それははさて置き、サンは、とりあえず魔法の使い方を教えてくれた。だが、あくまで使い方なので、あとは自分の魔力を信じる他ないらしい、と前置き付きで。


「使い方は、簡単!目を閉じて、強く願うんだ。そして、自分の魔力に話しかけるようにするんだ」


「……はい?」


サンはさも当然のように言い放ったが、よく分からない、後半。

魔力と会話するって何なのか。

「こんにちはー、魔力さん!調子はどうー?」って言うってことなのか。


……そんなこと、家ならまだしも道端とかでしていたら変人だよ。

頭おかしくなったんじゃないかって言われるよ。


最悪の事態を考えるならば、警察呼ばれるよ。ひゃくとーばんものだぞ。勿論、いちいちぜろの110番のことだよ。


「……なんか変なこと考えてない?椿と一緒だと中々話が進まないんだけど」


はあっと溜息をつく目の前のネコさん。何回目でしょう、この顔されるの。


「どうせ私の想像力なんてそんなものですよーだ」


「はいはい、拗ねないの。それに、別に声に出して話しかけるわけじゃないよ。言うなら、祈るみたいな感じ。意識を集中させるようにするの。まあ、熟練者になると魔力と以心伝心になってそんな事しなくても使えるようになるけれど」


拗ねた椿は軽く流して、説明を続ける。サンはこの短時間で椿をあしらうのが上手くなったようだ。


「…なるほど」


一通りサンの説明を聞き、頷く。

それを見たサンは、少し緊張した面持ちをする。


「じゃ……やってみようか……」


その声にこちらまで緊張してくる。

少し手が震える。


「わ、わかった」


椿はそう言うと、意識を集中させる。

これも、サンに教わったことだ。


自分に一国を救うような力があるなんて信じられないし、本当に救えるか分からない。でも、可能性が1%でもあるのなら、やってみよう。


椿は、意識が自分の中にあるという魔力に力を注ぐイメージで強く願う。


すると、身体が温かくなってくる。

身体中を血が巡るような感覚。

身体中をあたたかい何かが巡る感覚。


そして、少しの間の後、椿の手から柔らかな、赤い光が現れる。優しいような、それでいてしっかりした光。


綺麗だと思った。


信じられない景色が目の前に広がっているのに、不思議と怖さはなかった。

手の震えももうなくて、ただその明るい光を見つめる。その時、


「椿、今だよ!」


サンの声が聞こえる。

それに答えるように椿は強く願った。


……サンと私をルビー王国へ!


そう椿がギュッと目を強く閉じ、心の中で願うと、その手から出た光はそれに応えるように、光の量を増し、サンと椿を包み込む。


ふわりと身体が浮くような感覚。

そして、少しして、ふわりとどこかへ落とされた。


「椿、大丈夫?」


横からサンの声が聞こえ、椿はゆっくりと目を開ける。


その途端広がるのは、ふわりとした明るい太陽の光と、1面の緑。


生き生きと生い茂っている木々や草、

澄んだ空気。それらは、太陽の光を受けて、キラキラと光っていた。


そよそよと優しい風が椿の頬を撫でていく。


どうやら、森のようである。

椿はそんな森の中で柔らかな芝生の上に座っていた。


「成功……したの?」


椿はぼんやりとした瞳のままそう呟くように言った。まだ、現状をあまり理解出来ていないのだ。


「うん!成功したよ、椿。初めてで瞬間移動を成功させるなんてやっぱり椿にはマリーの力が宿っているんだね」


サンが嬉々とした雰囲気でぴょんぴょんと椿の周りを飛び跳ねる。その様子に実感が湧いてくる。


椿はそっと自分の手に目を落とした。

椿が意識を集中させると現れた優しい薔薇色の光。


自分は、本当に魔法を使ったんだ。


「これが……魔法……」


「本当に良かった!失敗していたら、移動空間に挟まれて出られなくなるところだったよ……」


サンが安心したように口を滑らせた。

その言葉にぴくりと椿は反応する。


「……今の……どういうこと?」


椿の首がギギギ……と開きづらくなった扉よろしくゆっくりと顔を動かし、サンを視界へといれる。


「あっ、いっけないっ…」


サンは慌てて口を手ならぬ肉球で抑えるが、時すでに遅し、である。

椿の耳にサンの言葉は入ってしまっていた。


「ねぇ、空間に挟まるってどういうこと?出られなくなるって何?」


椿は腕を組み、しまった!という顔をしているサンに詰め寄る。サンは、蛇に睨まれた蛙だ。焦ったように視線をそらし、


「……えっと……あの……」


と言葉を濁す。

だが、じーっとみつめたままの椿に、サンは仕方なくといったようにゆっくりと説明を始めた。


「瞬間移動という魔法はとても難しいんだ。失敗すれば、行き先にも行けず元いた場所にも戻れず、間で止まってしまうことがあるんだよねぇ……」


「それって、空間の狭間でさまよい続けるってこと……?」


「まあ……そういうことだね」


椿の言葉にサンがこくりと頷く。


「まあ、そういうことだね…っじゃないわよっ!わ、私、協力するとは言ったけれど、空間の狭間でさまよい続ける人生なんて嫌よ!?」


椿はサンに食ってかかる。

空間の間に入って人生棒に振るなんて真っ平御免だ。


「まあ、成功したんだし、いいじゃない!それに君はマリーの生まれ変わりだから大丈夫だと思ってたんだ」


サンは椿の顔色を伺いつつ言った。

椿は訝しげな顔でサンを見ている。


「……どうして?」


椿の問いかけにサンは続けて話す。そのサンの様子は先程の怯えた様子とは打って変わって誇らしげだ。


「マリーの魔力はこの世界トップクラスだったんだ。それにマリーは努力家だから毎日欠かさず修行をしていたし、その上性格も優しくて……」


まくし立てるように次から次へと言葉を並べるサン。うん、この子、本当にマリーさんが好きなんだ、と椿は理解した。


そのとき、ふと、周りに人の気配を感じた。それも1人や2人じゃない。数十人という人数だ。


そろりそろりと近づいてくる気配。

そしてそのまま、あっという間に周りを囲まれてしまう。


「……サン……」


椿は不安げに声を上げる。


何が起こっているのか。

周りの人は誰なのか。


サンはそっと椿の前に出て、あたりを警戒する。


「……これは、敵国、アメジスト王国の兵士だ……」



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