11話 現実味
1度、ルビー王国へ行こう…そう言ったサンの顔はとても真剣で。
開いていた窓から、サーッと風が入ってきて、椿の髪を揺らした。
「ルビー王国へ…」
ただ繰り返すように呟く椿に、サンは、こくんと頷く。
「うん。現状を知っておくのは大切なことだからね」
サンの言葉に一気にこのファンタジーのような話が現実味を帯びる。
「うん、そうだね、行ってみよう」
椿は、ゆっくりと頷いてみせた。
そんな椿に、サンは、ぱあっと笑顔を浮かべ、
「そうと決まれば、早速…」
と言いつつ、ベッドの上ですくりと立ち上がる。
不謹慎ながら、可愛いと思った。
だって、想像してみてほしい。
小さな猫が、小さな後ろ足で立ち上がって、仁王立ちしているのだ。
可愛い以外のなにものでもない。
それに、椿は、元々、動物は好きなのだ。
そんな姿見せられたら、控えめに言っても、天使。
だが、しかし!
ここで盛大ににやける訳にはいかない。
真剣な話をしているのに、にやけている場合じゃないし、
それより何より!!
サンに変態だと思われたら嫌だ。
……こちらが本音だ…うん
変態だと思われないように、にやける顔を必死に抑え、至って冷静な口調で問いかける。
「……今から?」
椿の心の中が盛大に荒れていることなど知らず、サンは、うん、と頷く。
「善は急げって言うでしょ!それに、一刻も早く国を救いたい。こうしている間にも、ルビー王国の民は酷いことをされているかもしれない………だからッ…」
サンは、可愛い立ち姿のまま、悔しそうに、唇…でいいのかな、猫だけど、を噛み締めて言った。
噛み締めていなくても、椿にはそう見えたのだ。
そうだ、これは、決して椿1人の問題じゃないのだ………
そして、夢物語でも、ファンタジーの世界でも何でもない。
ルビー王国の民にとっては、生活そのもので、人生そのもので、引いて見れば、命そのものなのだ。
サンの可愛さにやられている場合じゃなかったわ!!
「うん、行こう、今すぐ!」
現実に、生きて、苦しんでいる人がいるのだ。
地球から、遠く離れた星で_____