表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

10話 譲渡

授業が終わると、挨拶もそこそこに家に帰り、勢いよく自分の部屋の扉を開けた。


決意が揺るがない内に、サンに伝えておきたかったのだ。


…私は、頑張ってみる、と。


下から、母の「どうしたの、椿?」と心配な声が聞こえたし、勢いよく開けた扉はバタンッと、大きな音を立てたが、気にしない。


そのままの勢いで、ベットの上で寛いでいたサンの元へと駆け寄った。


驚いた顔をしているサンに、協力する旨を伝える。


「…ほんと!?ほんとに、ほんと!?」


椿の言葉に、サンはまあるい瞳をさらにまあるく見開いて、椿に飛びかかる勢いでそう言った。


椿はこくんと頷く。


すると、サンはやや目を伏せて、少しの沈黙が走る。


その沈黙を破ったのは、目の前の目を伏せた方。


「…ありがとう、椿」


噛み締めるような声音。

心の底から絞り出したような声音。


それから、そっと視線を上げる。

椿が対峙したのは、サンの潤んだ瞳。


今にも泣きそうで、少し安堵したような顔。


「…これで、ルビー王国は救われる…」


「私みたいな1人の高校生が、そんな力を持っているなんて思えないけれど…私にしかできないことなら、やってみたい」


椿がそう、ゆっくりと言うと、


「…ありがとう…ありがとう…」


サンは何度もお礼を言った。

目から溢れる涙。


サンにとって、祖国は、ルビー王国は、本当に大切な国なんだ。





少し、サンの気持ちが落ち着くまで待って、椿は問いかける。


「それで、私は、一体、どうしたらいいの?」


協力するとは言ったはいいが、何もわからない。何もかも椿に取っては初めてのことなのだ。


「そうだ…それなんだけど、実はね、多分昨日も言ったけれど、マリーはそのペンダントの他に魔力もボクに預けたんだ」


サンは、椿の言葉に、思い出したように言う。そして、サンは言葉を続ける。


「きっと生まれ変わるから、その時に渡して欲しいって…魔力、返さなきゃね?」


「…魔力を返す…?」


クエスチョンマークを沢山浮かべた椿に、サンは頷く。


「うん、元々は君のだからね。ちょっと待ってね」


サンはそう言うと、そっと、自らの胸元に手をあてた。


ふわりと空気が舞った。

少なくとも椿にはそう見えた。


それから、現れる、明るく優しい色合いの、赤い光。


炎に似たその赤い光は広がり、そのまま椿を包み込んだ。


「…えっ!なに?!」


目の前がうっすらとした赤で埋まり、何が起こっているかわからない。


少しパニックになった椿に落ち着いたサンの声が響く。


「じっとしていて、椿。下手に動くと火傷する」


赤を隔てた先にいるサンは、真剣な顔をしていた。


その真剣な顔に少々威圧される。


「…は、はいっ」


サンに言われた通り、状況把握は後にして、取り敢えずじっとしていることにする。


そして、優しい赤い光は、そのまま、すっと椿に吸い込まれるように消えた。


「うまく、行ったようだね」


サンがほっとしたように言った。


「あの、今のは?」


状況がいまいち掴めていない椿が聞き返すと、サンは、


「言ったでしょ、魔力を返しただけだよ」


と事も無げに言う。


だが、椿にとっては、一大事である。


「下手に動くと、火傷するってのは?」


先程、サンが落ち着いた、真剣な瞳で言った言葉を繰り返す。


すると、サンは、頷いて説明してくれた。


「ああ、魔力は、身体に取り込まれる時、その身体に自分が耐えうるか、器があるか判断するんだ。それが、先程の包まれた時」


「うん」


先程の状況を思い出しつつ頷く。

サンの説明は続く。


「それで、耐えうると判断すれば勝手に身体に取り込まれる。でも、判断される前はまだ、その魔力と身体は一体化されていない。魔力とはいえ、マリーの力は"火"だから、下手に触ると火傷するってこと」


「ふーん」


「今はもう取り込まれたから、椿の力で調節出来るはずだよ」


分かったような、気がする。

要するに、魔力を渡すには魔力に認められないといけなくて、認められて初めて魔法が使えるようになる、らしい。


そして、椿は、マリーの魔力に認められた、ということか。


「なるほど…」


自分の身体に目を落として、見てみるが、特に変わった様子はない。


見た目ではわからないらしい。


そうこうしていると、サンの声が再び声をかけた。


「…ねぇ」


「ん?」


サンの声で視線をサンへと移す。


「椿…1度、ルビー王国へ行ってみよう」


今日からですが、「章」を付け始めました!


そして、この10話が1章の最後となります。


11話から第2章となります。


よろしくお願いします。


…1章終わったのに、まだ椿と琴音と夢、サンしか出てきていない事実…:(;゛゜'ω゜'):

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ