プロローグ
初投稿で緊張気味です…。
最初は、シリアスです、ご了承ください。
「そっちに逃げたぞー!!追うんだ!追え!」
兵士の怒気のかかった声が城中に響き渡る。
少女は走った。
城は辺り一面火の海である。
爆発音が城のどこかから聞こえてくる。
もう一体何回目の爆発音だろうか。
綺麗に磨かれていた筈の窓ガラスも割れ、あちらこちらにその破片が散らばっている。
粉々に砕けたシャンデリアの破片が燃え盛る炎を映し出していた。
少女は、後ろ髪を引かれる思いで、城を後にし、森へと逃げ込む。
暗い森の中なら姿を隠してくれるだろうか。
「森の方へ逃げたぞ!ペンダントを奪い取れ!」
兵士の声。
追ってくる足音。
少女は、必死に逃げる。
夜であるため、視覚は殆ど奪われてはいるが、慣れた土地だ。迷うことはない。
「走って!マリー!!捕まってはダメ!!」
少女の足元で共に走っている猫のサンが少女に向かって叫ぶ。
だが、少女と兵士達の距離は縮む一方だ。
ザザッという足音。
どうやら囲まれてしまったらしい。
兵士達の持つ灯りが少女の周りでボゥっと不気味に光っている。
もう逃げるのは限界であろう。
「サン……よく聞いて。私は、もう、ダメです。」
少女は、小さな声で、しかし、しっかりと言葉を紡ぐ。
「そんな!マリー!しっかりして!」
サンは叫ぶが、少女は、ゆっくりと首を横に振る。
「これも、一国の姫としての運命。でも、一つだけお願いがあります。私の魔力と……このペンダントを預かって。」
「え……?」
「私は、きっと、生まれ変わってあなたの元に現れる。だから、それまで……。」
「……わかったよ。」
サンはゆっくり頷く。
少女は、優しく笑って、しゃがんでサンと目線を合わせると、自分の首にかかっているペンダントを猫の首にかける。
燃えるように赤い石のついたペンダントである。
そして、自分の胸元に手をあてる。
すると、光が猫のを包み込む。
赤く優しく光。
少しすると、すっと光は消えた。
「頼みましたよ?そして…今まで、ありがとう。」
少女は、覚悟を決めたように自分から兵士達に向かって行く。
兵士達の目が少女に向いている間に、サンは走った。
「マリー……。」
猫の悲痛な声は、誰にも届くことなく森の空へと吸い込まれていく。
サンは走った。
力を振り絞って。
主人の最後の願いを果たすために__