脱出計画
☆これまでの登場人物
・ジム・デッカード
本作の主人公。サラリーマン。街でゾンビに襲われていたところをケインに助けられる。武器は護身用に持っていたハンドガンと戦闘中に拾った大ぶりのレンチ。
・ケイン・キック
本作もう1人の主人公。消防士。ジムを助け設備の整ったビルに立て籠もる。状況判断が的確で、頭の切れる男。武器は万能斧。
☆これまでのFAZ
地獄と化した街で出会ったジムとケインは行動をともにし、ラジオ放送で本土には感染拡大しておらず、この街だけにとどまっている事を知る。
そんな中、政府はニューリバティシティの封鎖を決定。街と本土とをつなぐ桟橋が上がり、2人を含めた生存者達はこの街に閉じ込められたのだった…
(2020年10月10日 18時30分 ニューリバティシティ ウルトラダイナミック本社ビル屋上)
ニューリバティシティが封鎖され、本土から切り離されてからおよそ30分。
ジムはすっかり暗くなった空を見上げる。発電所がまだ復旧していないのか、街灯はつかない。見渡す限り、自家発電ができるこの建物以外に明かりのついてる建物はない。
まあ、あっても明かりをつける居住者が居ないのだが。
あのラジオを聴いた後、ケインと名乗った男は怒り狂っていた。何に対してなのかはわからない。自分たちを見捨て安全な場所に逃げた市長たちになのか、あるいは今おのれが置かれているこの境遇になのか。
だが彼はすぐに冷静になった。物に当たることもなく、声を荒立てることもない。どうやら切り替えの早いタチらしい。
「こうなった以上、もう来るかもわからない救助隊を待つ他にここを脱出する方法はないな。助けを待つ間にしろ、この街で生活するにしろ、このビルじゃ心もとない。」
ケインがテキパキと話す。
「この街で生活する…?」
ジムは聞き返す。
ケインが頷く。
「ああ。あの放送を聞いたところ、まだ政府もあのウィルスについて分かりきっているわけじゃない…例えば奴らは感染者が心臓やその他の急所になる臓器を攻撃しても死なないことには触れてなかった。おそらく知らないのだろう。となるとウィルスのさらなる解析のために調査チームなりなんなり派遣させるとは思うし、政府も第二目標にそれを上げちゃいるがー」
少し息をつき、再び話し始める。
「ーとは言え未知のウィルスだ。チームを派遣する事は危険も大きい。そして今の所本土までの感染拡大は確認されていないし、だとすれば空気感染しないこともわかってるはずだ。そもそもこの街は封鎖した。生存者がいるかどうかも定かじゃない。ともすればこれ以上危険を冒す必要はない、無人機を飛ばし、生存者はいなかったと発表すればいい。救助隊は無しにしよう。となることだって十分可能性はあるんだ。なら俺たちはこの街で生き残る術を探り、1日でも長く生き延びることを考えなきゃならないんだ。」
そのためにはこのビルでは心もとない、とケインは続ける。自家発電が可能で、非常食、飲料水もそれなりにある。自動ドアは死してなお歩く客を通し続けてはいるが、階段は封鎖済み、そもそも奴らが一歩ずつ足を上げて登れるのかも定かじゃないし、エレベーターもボタンを押さない限りはここまでゾンビを連れて来る事はない。屋上で救助隊を待てばいい。
が、一見最良にも見えるこの計画は、救助隊が来る事ーそれも食料が尽きる前にーを前提としている。そしてもし万が一ここまでゾンビが上がってこれた場合、今ある装備じゃ大勢を相手にできない。
ここまで先を見通せ、感情的にならずに物事を判断できるこの男に、ジムは心強さを感じずにはいられなかった。
ケインが話を続ける。
「と言う事で、俺たちはこれから2人で脱出する。だが奴ら、嗅覚か視覚、あるいは聴覚、もしかするとその全てで俺たちのことを認識できるらしい。おそらく下にいたところを見られたのだろう。最初に俺たちと遭遇したゾンビが仲間を呼び寄せたのかもしれないが、とにかくその数は増え続けているみたいだ。
俺の予想が正しければ、時間が経てば経つほどここを出ることが難しくなる。だからすぐにでも出たいが、さっきも言った通り俺たちには大勢を相手できる武器がない。だからこの建物の備蓄を漁り、何か使えそうなものを探そう。」
ジムは賛成した。
「じゃ、手分けして探そう。」
「ああ。とりあえず布やライター、何か火種になるものがないか探してくれ。車があると嬉しいところだが、おそらく鍵がかかっているだろう。ハンドガンの弾はあとどれぐらい残ってる?」
ケインが聞く。
ジムは銃に手をやる。
「もともと護身用に持っていたものだから、もう弾倉がないんだ。節約してきたが、今入ってる弾で最後だ。おそらくあと撃てて2、3回だろう。」
2人で階段を下りながら話す。
「じゃ、あんまりそいつには頼れないな。2人とも持っているのは近接武器だけか…とにかく、さっき言った物を探してきてくれ。時間が惜しい、1時間後にここに集合だ。バリケードは外したままにしておこう。どうせここまで登ってこれるほど奴ら器用じゃないはずだ。」
ジムは頷く。
踊り場に出た。
「ああ、じゃあ気をつけて」
「おうよ、そっちもな」
2人はお互いの幸運を祈り、二手に分かれたのだった。
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