対峙&退治
前回までのあらすじ
ジムは満員電車で感染者に襲われる。
自分の乗っている号車で悲鳴が上がる。すぐ近くだ。
ジムは未だに何が起こっているのよくかわかっていなかった。この時間、通勤ラッシュでかなり混む。だから悲鳴と何かを折る音、引きちぎる音が聞こえても、それの正体はわかっていなかった。ただただ、直感的に危険だと、感じていた。
後ちょっとで駅に着く。
電車にブレーキがかかる。駅の構内が窓から見える。
ジムから二メートルほど先で女が何かに押し倒される
電車がゆっくりと止まる。
ジムのすぐ横の男に、ひどく汚れ爪が伸びた腕が伸び、男の首を掴む。
電車が完全に止まる。
男の首は折れ曲り、新たな獲物を求めた腕が自分に向かって掴みかかるー
ドアが開く。
ジムは開いたドアに向かって倒れこんだ。そして初めて、この騒動の犯人を見た。
25〜30歳前後の中肉中背の男だ。だが普通には見えない。首から肩にかけてかなり深い裂傷があり、そこから筋繊維が垂れている。首は受けたダメージによって右に傾き、口を外れるんじゃないかと思うほど開けている。腕を前に伸ばし、こちらを虚ろな目で睨みつける。
まるでちゃちなB級映画で見た怪物のようじゃないか、これじゃまるでゾンビー
中肉中背の男が叫び声をあげて掴みかかる。ジムは横に転げて素早く立ち上がり、持っていた鞄を男の頭めがけて振り下ろす。
男はよろけてには後ずさるが、すぐにこちらに向かってくる。
ジムは避けきれずに壁に叩きつけられる。全身から息が抜け出したんじゃないかと思うぐらいの衝撃が走る。
鞄が手からすり抜け、ジムはあまりの激痛に倒れる。
男がこちらに手を伸ばす。すかさずジムは蹴り飛ばす。そして倒れたまま手当たり次第に武器になりそうなものを探すー
鞄から拳銃が転げ落ちた。最近治安が悪くなってきたように感じたジムがついこないだ護身用にー使わずに済むことを祈りつつー買ったものだ。
買っただけでまだ一度も使ったことはなかった。弾は入っている。男に向けて引き金を引く。
引き金は引けなかった。セーフティーバーがかかったままだったのだ。
慌てて金具を外し、再び狙いを男の胸につける。
「止まれ、止まらなかったら撃つぞ!」
男は止まらない、と言うか聞いてないように見える。
ジムは迷いつつも撃つ。男の胸に命中するが、男はよろけただけで気にするそぶりも見せない。
なんで死なないんだ!ジムはもう一度胸に狙いをつける。
撃とうとしたその瞬間、男が手を振りおろしてきた。
ジムはそれを反射的に避け、狙いもつかないまま勢いで撃った。
男は倒れた。
ジムは荒々しく肩で息を吸い、倒れた男を見る。
弾丸は男の頭を撃ち抜いていた。それを見たジムは思わず吐いてしまう。
だが戸惑っている暇はなかった。
地獄と化した電車内から、この中肉中背の男と同じような様子の人たちが、次々にホームに向かってよろめきながら出てくる。
何が起きたかよくわからないが、とにかく今は逃げた方がいい。そう思ったジムはすぐに走り出し、改札を抜け駅を飛び出した。
そこで見たものはー
地獄と化した街であった…
ゾンビの描写を描くのはなかなか難しいですね。