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ゾンビ再殺部隊 [Fight Against Zombies!]  作者: たまご風味
season1
17/18

リサーチドーム


☆前回までのFAZseason1

ジムに頼まれたバルセロナとジョンソンは、ルナにサバイバーズハウスの敷地内を案内するのだった。


☆これまでの登場人物


・ジム・デッカードーアレス1

本作の主人公。元サラリーマンだったが、パンデミック発生から数日のうちに数多くの死地をくぐり抜けてきたため、ゾンビを恐れない。トレーニングを積むことで、わずか3ヶ月の間に身体つきもがっしりとし、筋肉がついた。体術を心得ており、また聴覚も鋭い。

サバイバーズハウスが立ち上げた対ゾンビ部隊RKTF(Re Kll Task Force)の少人数編成の分隊ファイアチーム・アレスのリーダー


・レイモンドーアレス2

ファイアチーム・アレスのサブリーダーを務める男。元はスタントマンだった。タクティカルソードを愛用。


・バルセロナーアレス3

ファイアチーム・アレスのサブリーダーを務める。異国人の気のいい男。レイモンドにあだ名をつけられ、以後アレス内ではこの呼ばれ方である。本名はアーロン。

武器はショットガン。


・ジョンソンーアレス4

ファイアチーム・アレスでは数少ない女性メンバー。

無口なタイプで、アサルトライフルを常に持ち歩いている。


・ジェイソン(ホッケーマスク)ーアレス5

ジェイソンという本名を知ってレイモンドが命名した。かつて別の男が使っていた火災用の万能斧が相棒。ファイアチーム・アレスに所属。


・マイクーアレス6

ファイアチーム・アレスの衛生兵

丁寧な口調で話す。


・ルナ

アレスが保護した少女。


・総司令官/ケイン・キッカー

サバイバーズハウスを立ち上げ、わずか3ヶ月のうちに町中の生存者を集めた。その統率力は現在も変わらず、140名ほどのスタッフを能力にあった適切な部署に配置している。状況判断が的確で、頭の切れる男らしい。

(2020年 12月25日 17:50 ニューリバティーシティ郊外 サバイバーズハウス)


「さあ、ここがリサーチドームだ。」


バルセロナと先ほど名乗った男の人が話しかけてきた。

最初は不思議な名前だと思ったが、本名は別だがみんなにはそう呼ばれているんだ、と彼は言っていた。


リサーチドームと呼ばれたそれは、鉄骨と防水の生地でできた丸いテントをそのまま大きくしたような建物だった。

だが中に入ると、ルナは圧倒されるのを隠せなかった。


お世辞にも整っていると言えない外観とは裏腹に、中は「研究」の名にふさわしいものだった。

ルナにはよくわからない機械や、ここに来る前に見慣れていた大型のコンピューター、そして何かの工場にありそうな大型機材まで色々なものがごった返していた。いくつかの物には様々な企業のロゴが入っている。

奥の方では何やら棍棒のような物の制作を行っているようだった。


「ここは何をする場所なの?」

ルナはバルセロナを見上げた。


彼はまるで自分が立ち上げたかのように自慢げに説明する。

「パンデミック前、ここニューリバティシティにたくさんの多国籍企業が進出してたのは知ってるだろ?車を作ったり、すごい電子機器を作ったり、他にもたくさんの製品の開発が行われていたんだ。

そのエンジニアや作業員の生き残りが、ここにいる面子ってわけさ。

彼らは俺たち--外に出てた連中が持って帰って来た部品や設計図やらを元にいろんなものを開発し、戦いに使えそうなものは俺たちに、そうでないものはサバイバーズハウスの設備の拡張に利用する。ああ、それにあの忌々しい未知のウィルスの研究も--」


「まだ10の子供に眠たくなるような話をするんじゃないわよバルセロナ。女の子はそんな話興味ないの。ねえ?」

熱くなりだすバルセロナにジョンソンが茶々を入れる。バルセロナは彼女が何をする場所か聞いたから、と弱々しく口答えした。


ルナとしてはまだ聞きたいことがあったが、それはまたの機会にしておこう。


「ジャクソン、Q、頼まれてたお土産を持ってきてやったぜ」

バルセロナが2人の男に声をかける。


目当ての二人組はなにやら口論しているようだ。

「クイン、君のつまらない話に付き合ってる暇は俺にはないんだ、なんせこっちは例のウィルスの研究で手一杯でね」

クインと呼ばれた方がすかさず言い返す。


「しかし君の研究は今の所なんの成果も出してないようだが、私の方は次から次へと彼らに役立つものを提供してる。それとジャクソン、私をクインと呼ぶのはやめろ--」


「数々のくだらない発明品を自分の手柄のように語っているが、実のところそれは全て様々な企業の発明の横取りをしているだけだろう?」


バルセロナが割って入ろうとする

「ちょっといいか--」


「その言い方はよしてほしいな。私は彼らがやり遂げられなかった仕事を次の段階へとアップデートしてあげているんだよ。それを君のくだらない研究と一緒にしないでくれたまえ。」


「なあ--」

バルセロナの言葉は彼らに聞こえてないらしい。


「なんだと?この研究が成功すれば、この地獄から抜け出せるんだぞ、これがどれぐらい重要なことかわかっているはずだ」


クイン--Qがなにか言い返そうとした時、しびれを切らしたバルセロナが2人の口論に割って入った。


「ジャクソン、Q、“科学的考察”は後にしてくれ。それよりももっといいものを持ってきてやったぞ」


「あんた達も子供じゃないんだから、いつまで喧嘩してるのよ。」

ジョンソンがあきれた、というように首を振る。


Qが不満げな顔をする。ジャクソンが相棒を一瞥しつつ口を開いた。

「それで、頼んだものは持って帰ってきてくれたのか?」


バルセロナが背負っていたバックパックから何かを取り出す。話を聞く限り、今回の野外調査で見つけてきた戦利品なのだろう。

バルセロナが高い机の上に置いたせいで、ルナにはよく見えなかった。


ジャクソンの声が弾んだ。

「おお、流石RKTFといったところか!いやあ助かったよ。こいつがなきゃ例の研究が進まないんだ。」


「それがあろうとなかろうと進まないくせに。」

Qがボソッと呟く。


またしても口論が始まったのを見て、バルセロナはジョンソンとルナを連れてリサーチドームを出た。後ろからQの声が飛ぶ。


「ああ、バルセロナ!こいつに何か言ってくれよ!」


「いや、ああ見えて2人も仲が悪いわけじゃないんだがな」

無視したバルセロナがルナを見て言った。


「あの2人はなにを研究しているの?」

ルナはそれとなく聞いてみる。


口を開いたバルセロナを手で制して、ジョンソンが答える。


「Qは主に武器・兵器開発、ジャクソンはウィルスの研究をしているけれど、他にもいろんなことをしているわ。

バルセロナが言ってた通り、技術者--いろんな特技を持った人がここには集まっているから。ここの建物を増設しているのもリサーチチームよ。」


技術者の意味はわかるのだが、とルナは思ったが口にしない。


3人はしばらく歩き、より人が集まっている場所に着く。

どうやら市場のようなものらしい。リサーチドームに使われていたものと同じ布製の雨避けの下で、日用雑貨や服、果物が売られている。


「どうだ、すごいだろ?ここじゃ今までの暮らしとほぼ変わらないものが手に入るぜ。電池とか、歯ブラシとかは俺たちが街で回収してきたものを、果物はここの自家栽培で採れたものの一部をこっちに仕入れてる。」


「こんな事になってもまだお金の概念があるの?」

ルナは思わず聞いてしまった。


バルセロナが片眉を上げた。

「10歳の女の子にしては面白い質問だな。いや、いい質問だ。 結局のところ、金は社会の潤滑油みたいなものだ。それに日常が崩壊しても仕事にやりがいを持つ奴は少なくない。働いた分だけだきっちり金をもらい、その金で物を買って、飲んで、そして大変なことはみんなで助け合って生活してるのさ」


ルナはなるほど、とおどけてみせる。


「晩飯の前に、君の居住区に案内しよう。」


丸太と鉄筋でできた壁の近くを通る。壁はサバイバーズハウスの周りを囲み、ゲートを除き外界からの接触を遮断している。そのすぐそばでは兵士達が武器を点検している。何人かがバルセロナとジョンソンを見つけて声をかけるのを横目で見ながらバルセロナに聞く。


「彼らもその…あなた達の一員なの?」


バルセロナが鼻歌まじりに答える。

「いや、あいつらはRKTFじゃない。ディフェンスチームだ。」


「私達は主に外での任務を活動としているけど、彼らの役目はハウスを守る事よ。合同演習もしたりするから仲は良いわ。」

ジョンソンが横から付け加える。


「飲み仲間もいるしな。」

バルセロナが朗らかに笑う。


さらにしばらく歩くと、やはり木材と鉄筋で出来た一軒家式の建物群が見えてくる。ここが居住区らしい。


そのうちの一件のドアに行き、ジョンソンが鍵を開ける。


ジョンソンに急かされながら中に入ると、


「さあ、ここが君の当面の家だ。1人で住むには広すぎるかもしれないが、準備ができるまではここで寝てくれ。晩飯になったらまた迎えにくる。」

バルセロナが説明する。さらにテーブルの上に置いてあった布の張ってあるカゴをルナに手渡す。

「こいつが君用のサバイバルキットだ。歯ブラシからバスタオルまで入ってる。」

「着替えは検査スタッフに適当なものを見繕って何着かクローゼットに用意させておいたわ。こんなご時世だからオシャレはできないけど、それは勘弁してね」

ジョンソンが続けた。


「よし、じゃあ何か今のうちに聞いておきたいことはあるか?」


ルナは首を振った。


「じゃあまた夕食の時に。何かあったらそこの内線から私がバルセロナを呼んでね。」


ドアが閉まる。


ルナは椅子に座った。やはり大人と話すのは疲れる。でも--

あの2人…バルセロナとジョンソンは今まで関わってきた大人とは違う気がした。優しさを感じることができた。


いけない、心を許してはダメ。自分のためにも、そして…

ルナはため息をついた。こんなことでは先が思いやられる。


…でも、もう少しだけこの温かさに甘えようと思った。


ルナは椅子にもたれかかる。今日は疲れた。夕飯時になればまた彼らが迎えにくる。

それまで少し、休んでおこう。


♢サバイバーズハウス

総司令官とその初期メンバー達がニューリバティシティ郊外に立ち上げた長期戦用活動拠点。設立と同時にあらゆる手段で生存者達を探す事によって、現在人ほどのメンバーが集まっている。

最初はただの大型スーパーマーケットだったが、技術班や研究班が立ち上げられると徐々に設備や建物が増えていった。

対ゾンビ用に一応の防衛設備は増設されたものの、未だディフェンスチームなしでは大群の襲来に耐えられないのが現状である。


♢リサーチチーム

主にウィルスの研究を目的とした研究班と兵器開発やサバイバーズハウスの設備拡大を担う技術班の二つに分かれる研究チーム。

主にニューリバティーに進出していた企業の開発チームの生き残りで構成されている。

ただのスーパーマーケットだったサバイバーズハウスが大人数を収容できる要塞に発展することが出来たのは彼らの技術力と街に残された資材があったからである。


・Q/クイン

リサーチチームの技術班のリーダー格で、主にRKTFやディフェンスチームに与える兵器開発に勤しんでいる。ジャクソンとは馬が合わないように見えるが、喧嘩するほど何とやら。


・ジャクソン

リサーチチームの研究班のリーダー格で、ウィルスの研究に勤しんでいる。Qとの口論が何よりの至福。


♢ディフェンスチーム

ハウス内の警備や防衛、またハウスメンバーの訓練にあたるチーム。

現在、リサーチチームと合同でハウスの防衛力強化を進めている。

総勢30名ほど。


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