表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビ再殺部隊 [Fight Against Zombies!]  作者: たまご風味
序章
12/18

序章最終話 狩る側、狩られる側


☆これまでの登場人物


・ジム・デッカード

本作の主人公。サラリーマン。街でゾンビに襲われていたところをケインに助けられる。武器は護身用に持っていたハンドガンと戦闘中に拾った大ぶりのレンチだったが、ハンドガンは弾が切れたため現在使用できない。

この異常事態のためか、短期間で聴覚が研ぎ澄まされている。


・ケイン・キック

本作もう1人の主人公。消防士。ジムを助け、以後2人で行動していたが、仲間が4人になった今実質のリーダー役を務める。状況判断が的確で、作戦の立案をしたり、トレーニングジム内のゾンビが異常に少ないことから生存者がいることに感づくなど頭の切れる男。武器は万能斧。

二手に分かれた際にジェフリーに彼を殺すよう頼まれる。


・ケイト

トレーニングジムの利用者で、ジムとケインがその施設で初めてあった生存者。ポニーテールにした金髪と所持している弓が特徴の若い女性。


・ジェフリー

トレーニングジムの利用者で、筋肉質で人の良い男。ケイトの友人だったが、実は感染してる事がわかり、そのことをケインに伝え自分に手を下すよう頼み殺された。


・ラインハルト

ニューリバティ上空で開始された第一次降下作戦実行部隊の生き残り。パンデミックから2日後にパラシュートでニューリバティシティに降下してきた。

ゾンビを恐れず、卓越した戦闘技術と状況把握能力で対峙したゾンビの大群ですらいともたやすく薙ぎ払う。武器はボウガンとナイフ、タクティカルトマホーク(手斧)。


・ギャレット

経験豊富な元傭兵。自宅でゾンビ達に包囲され、身動きが取れなかったところをその場に降下してきたラインハルトによって救われ、以後行動を共にする。現在は既に引退してはいるものの、装備を一目見ただけでラインハルトの正体を当てるなど、優れた洞察力がうかがえる。


☆前回までのFAZ

武器や生存者がいる可能性を賭け、警察署まで移動することを決めた4人。しかし下準備のための探索の途中、ジェフリーが自身が感染していることをケインに打ち明ける。手を下すよう頼まれたケインは彼を殺し、そのことを彼の友人だったケイトには言わずに計画を実行に移そうとしていた。


同じ頃、ケインたちの存在を知らないラインハルトとギャレットの二人組はこの街の生存者をかき集めるべく探索していた。

(2020年 10月13日 15:30 ニューリバティシティ トレーニングジム)


「2人とも、用意はいいか?」


「ああ、万全だ。」

「ええ。」


ケインは屋上から、路上にうごめく屍たちを眺めてため息をついた。大丈夫、今回のアイディアはここに来るときの脱出計画ほど危なっかしくない。


だが…

俺とジムがジェフリーとケイトに会ったのが10日の深夜。そのあと物資を補給し、支度は3時間ほどで完了した。11日、日が出る前には屋根伝いに警察署まで移動するはずだった。


ところが、1つ問題が生じた。

まず、ジェフリーが感染してることを俺に打ち明け、彼は俺に自分を殺してくれと頼んだ。そうする他になかった俺は、彼を殺した。まだゾンビになりかけているような兆候は見えなかったが、噛まれたことが確かな限りリスクをジムやケイトの近くに置いておくわけにはいかなかった。


その判断自体は後悔していない。ただ…

問題はジェフリーが死ぬ前に俺に頼んだことだった。ケイトに、彼女に自分が死んだことを知らせるな、ということ。知り合ったばかりの友人の最後の願いを、ケインは叶えてやりたかった。


3時間後、戻ってきたケイトとジムにジェフリーとは途中で別れたと説明した。探索中、彼のスマホに母親からの電話がかかってきた、周りのゾンビのせいで家から身動きが取れない彼女を助けるため、ジェフリーは別行動することにしたと。


最初、ケイトはこの話をすぐには信じず、疑った。我ながら苦しい言い訳だとわかっていたが、事態を察したジムが機転を利かせて彼女を説得してれた。いつからそんなに親しくなったとかは知らないが、とにかく助かった。


結局、そんなこんなで予定よりも大幅に遅れてしまった俺たちだが、ようやく作戦を実行に移す時が来た。


「よし、じゃあ行くぞ」

ケインは2人についてこい、と合図する。

トレーニングジムの屋上から隣の民家との間には二メートルほどの段差がある。3人は足をくじかないよう、慎重に降りる。


屋根から屋根へと移動して行く。路上のゾンビたちはこちらを確認し、壁をよじ登ろうとするが途中でズルズルと滑り落ちてしまう。


よし、上手いこといってるな。ケインがそう思った矢先だった。

ジムが踏み込んだ車のガレージの天井が、崩れ落ちた。


次の屋根に飛び移る間も無く、下へと滑り落ちて行く。


「ジム!!」ケイトが叫ぶ。



瓦礫と粉塵で、すぐにジムの体は屋根にいる2人からは見えなくなった。


「ジム、怪我はないか?! 返事しろ!」


すぐさま寄って来るゾンビたちの声に混じって、ジムの怒鳴り声が聞こえる。

「こっちは大丈夫だ!先に行け!どこかで合流する!」


それを聞いてケインは思わず安堵した。が、そうゆっくりしている暇はなかった。

「キッカーさん!」ケイトが叫ぶ。


ケインは振り向いた。崩れ落ちた天井の残骸が斜面になったことで、ゾンビたちが手こずりつつも徐々によじ登って来ていた。ジムの姿はすでにない。


「次の屋根まで急ぐぞ。」ケインは手前にいたゾンビの首を斧で斬り飛ばしてそう言うと、2人で移動し始めた。


10分程度逃避行動をしているうちに、ゾンビたちは遠ざかっていた。屋根の段差やちょっとした隙間に挟まって1匹、また1匹と脱落していったらしい。


ーそうだ、ジムは無事なのかー

ハッとして下を覗き込む。

するとのそのそと歩いていた一体のゾンビの頭が矢で貫かれた。

後ろを振り向くがケイトはよそ見をしている。彼女がやったのではない。


「おい、ケイン!」

ジムの声が聞こえた。疲れてこそいたが、興奮した声だった。


「無事だったか、ジム!」

ケインはジムの姿を探した。


いた。だが、ジムは1人ではなかった。

その後ろに2人の男がいた。1人は中年だが、がっしりとした体格でライフルを持っている。もう1人は、特殊部隊のような格好をして、ボウガンを手に下げていた。


さっきのゾンビ殺しの犯人は、彼だった。


「やあ、会えて嬉しいよ。俺はラインハルト。生存者を探してた。こっちはギャレット。昨日出会って、2人で生き残りを探している時に、ゾンビと戦っている彼に出会ったんだ。」


ラインハルトと名乗った特殊部隊の男は、ジムを指して言った。


ケインも簡単な自己紹介をし、礼を言った。


「ところで、警察署に行こうとしていたそうだな。」お互いの身の上について少し紹介した後、ラインハルトが切り出す。


「ああ、そうだ。武器と生存者を探しに。」とケインは答えた。


「そいつは無駄足になるな。ジムと出会う前、俺たちはそこに行ったが、あるのは奴らに殺された警官の死体と、血の海だけだった。」ギャレットが言った。


「そんな…」とケイトはつぶやいた。


ケインは小さく悪態をつき言った。「警察も今回の事態に対処しきれてないのか…どうりで通りで見かけなかったわけだ」

ケインとジムは道中、彼らと戦っている警察官をほとんど見かけなかった。


「しかし、これで5人か。さしあたった目標が潰れたわけだし、どこかに拠点を構えないか?」

ジムは話題に割って入った。


ラインハルトが頷く。

「ああ、市内で他の生存者を探しつつ、安全な場所を見つけてそこを拠点にしよう。ただゾンビから逃げ回るだけじゃいずれ資源が枯渇する。」


「逃げるのではなく、戦うのか…」

ケインが呟いた。


「何か考えでもあるのか」

ギャレットが聞いた。


ケインは言った。

「人数がある程度増え、どこかに根をはったら、今度は俺たちが奴らを狩る番だ。人材をかき集め、奴らの生態を観察すれば、いずれ俺たちはやつらに対しチームを組んで対抗できるようになる。どんな犠牲を出したって、奴らを1匹ずつ、ひと区域ずつ潰していく。この地獄で生き抜くんだ。そう、俺たちはー」


ー「ゾンビ専門の特殊部隊になる。」






ジムはケインの話に聞き入っていた。自分はつい数日前まで普通のサラリーマンだった。

いつも通りに朝食を食べ、いつもの電車に乗り、いつもの通りを歩いて会社に行く。

その「いつも」の平穏は突如として彼から取り上げられた。最初はゾンビが怖かった。心臓を撃ち抜いても死なないやつら、安っぽいホラー映画から飛び出てきたようなやつらが。だが数日のうちに、彼は適応していた。いや、適応できたからこそここまで生き残れてこれたのだ。


彼はもう、奴らを恐れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ