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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
禁忌と魔王の第六章
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秘密

 俺の体は未だにそこから動くことが出来なかった。

 あの神様と名乗る少年に触れられなかったあの時の事を思い出す。

 それでも動けないことに歯を食いしばるしかない。あの時と俺は一向に何も変わっていなかった。

 ガイノウトはゆっくりとした口調で


 --------------------


 ここからはお前の能力についての話だ。


 お前の能力は神から与えられた。

 加護を持っている人々も同じくして神から能力を与えられた。

 魔法も神から与えられた。

 そして俺も神から作られた。


 俺が分かっていること、それは魔法も加護も能力も神が作り出した一つの『回路』から出来ているということだ。

 その回路はあらゆるものに刻まれており、大気中や体の中にあるあらゆるマナを通して活性化する。

 回路が活性化すると魔法の場合は魔法の効果が発動する。加護は体に直接回路が刻まれており、それにマナを通すことによって効果を発揮する。

 俺の体はその回路によってできている。そして回路の効果によって今も生き永らえている。回路が無くなってしまわない限り、死ぬことが出来ない。他の物を侵食して永遠に食らい続ける。

 だから死ねない。

 どれだけ苦しもうが、どれだけ生を憎もうが。


 お前の能力。

 いや、それは能力ではない。


 お前の体は侵食された肉体だ。埋め込まれたソレに侵食されている。

 お前の中にある黒いソレは俺の肉体、ひいては魔獣の体の中の魔石と同じ回路で出来ている。

 魔獣が魔石と土の傀儡で出来ているならば、お前は人間の肉体と魔石で出来たいわゆる『半魔獣』だ。


 お前は『半魔獣』となってしまったのだ。


 半魔獣となった人間など見たこともなかったがあの神ならば出来るだろう。

 人間としての体と魔石を融合させ、それを人間に使わせる。

 気まぐれとはいえ少々勝手が過ぎるがな。

 これによってお前は正真正銘の『人間とは違う何か(バケモノ)』になってしまったということだ。


 だが一つ、魔獣とお前の違うところを挙げられるとすれば、回路は持つ生物によって形を変えていくということだ。

 お前が魔獣よりも優れ、人間よりも強くあれるのはお前が自分の中にあるソレを自分の形に変えて来たからだ。俺が見たところ、俺にはどうにもできないほど回路は複雑になっている。それこそ感情を持つことが出来るほどだ。

 回路はお前の思う通りとはいかないが、少しずつ回路は変わる。

 お前が強い気持ちで思えば、その形に回路は変わるかもしれない。

 お前の中にあるソレは、お前の体と完全に同化している。これは普通、あり得ないことだ。人間の体に回路を刻むことでさえ神でなければ出来ないというのに、本来相容れない魔石と人間を同化させる事は不可能に近い。意図してやったのではないにしろ、俺には最早お前を元の体に戻すことが出来ない。

 魔獣の中からは魔石が取り出せるが、お前は違うのだ。


 お前も死ねない。

 俺と同じ苦しみを味わうことになるかもしれない。

 俺の体は魔石だけで出来ている。体を壊そうがそんなことは何の問題もない。ただ元の形に戻せばいいだけ。

 でも今ならお前の体に終わらせることが出来る。

 回路の形を元の形に戻して、お前の体から埋め込まれた魔石を取り出せばいい。

 俺には難なくそれが出来る。


 俺の知っている情報はこれだけだ。

 ここまで聞いて分かった通り、俺は不死身だ。

 それでもお前が立ち向かってくるというのであれば、俺は喜んでお前を殺す。

 救ってほしいというのであればそれも良いだろう。楽に殺してやる。

 だがこれだけは言える。

 お前に俺は殺せない。


 --------------------


『エラベ。ドチラカヲ』


 俺の体は依然固まったままだった。


『ハムカッテ、シヌカ。シタガッテ、シヌカ』


 それは俺に選択肢はないと言っているのと同じにも思えた。

 俺の口は動かない。意志を発することさえも許されていない。


『エラベ』


 ガイノウトがにじり寄る。


 俺はこんなところでは終われない。俺を殺したとして、自由になったガイノウトは人を虐殺して回るだろう。

 誰がそれを止められるというのだろう。

 この不死身の怪物を誰が止められるというのだろう。

 俺は大切なものを守らなければいけない。

 どうにかするしかない。

 何も出来ない?

 どうにもならない?

 決めつけているだけだろうが。

 出来ないのではなく、出来ていないだけ。

 どうにかするしか道はないだろうが!!


「い......やだ」

『......』


 ガイノウトがピクリと反応した。

 ガイノウトが俺の首元に鋭い棘を突き立てる。血が流れることもなく、棘は体の中に食い込んでいく。


「お前を......止める」


 ガイノウトの棘がピタリと止まる。驚きの感情と共に伝わってきたのは困惑とわずかな悲哀だった。

 俺は指先に力を入れた。

 黒い液体がにじみ出し、指先を覆っていく。コンクリートの様に硬い空間を黒い液体が侵食していく。


『カイロガ、カワッテイク......!』


 俺の指先がぴくりと動く。

 俺には回路だなんだという難しい話は分からない。ただ、動きたいと思ったら液体が少しずつ動いたのだ。


 時の止まった空間の中で、俺を繋ぎ留めていた枷が外れていく感じがした。


『オモシロイ』


「お前を止められるのは、同じものを持っている俺だけだ。俺が出来なければ誰が出来る。お前の不死身の能力をどうするかなんて知らん。だが、俺にはどうにかすることしかできない。」


 腕を思いっきり振る。

 空間が弾けた。

 繋ぎ留めていた鎖が割れたような感覚だった。


『オレヲ、トメル?』


 ガイノウトが初めて笑った。

 そしてガイノウトが放つ気の形が変わる。

 散らばっていた魔石がガイノウトを中心に集まり、一つの形を成していく。

 体は大きく無造作に膨れ上がり、体中が赤く発光していた。

 俺はそれを見ながら出来る限りの力を振り絞り、自分の体に装甲を纏わせる。

 ガイノウトは禍々しいオーラを放ちながら、醜悪な肉体を作り上げた。

 ガイノウトの笑いは、まるでこれまでに受けたすべての怨念を込めているようでもあった。


『オワラセテミロ。デキルモノナラ』


 不可能に立ち向かう戦いが始まる。

 魔法の秘密について明かされ、田熊の能力についてもだいぶ判明してきました。

 これからは不可能に挑む戦いが始まります。

 田熊は果たしてガイノウトを止めることが出来るのでしょうか。


 ここからは私情です。

 本当はガイノウトと会話させながら明かしたかったのですが、それには話が少し複雑なので普通の口調で説明させるだけになってしまいました。実力不足を感じます。

 ですがここからの流れはいせたんの中でも1、2を争う屈指の名シーンです。旧いせたんではラストよりも名シーンだったらしいです。

 今回はラストの方が名シーンにしたいですが、さて......どうなりますかね。

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