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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
禁忌と魔王の第六章
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封印の祠

「じゃあ泊まる宿も決まったことだし封印の地に行ってくる」

「もう行くの?」

「そのためにここまで来たんだ」


 昼食も食べ終わり、夕食まで暇を持て余すのも何なので、一度その封印の地とやらに行ってみることにした。

 リタもついて来ようとしていたが流石にそういう訳にはいかないだろう。封印されているとはいえ、どんなことが起こるか分からない。魔獣も多く居るだろうし、そんな危ない場所に連れていくことは出来ない。


「お前は荷物持ちだ」

「僕がかい?」

「お前なら護衛する必要はなさそうだからな」


 魔獣が出てきた時に倒したは良いものの、俺は魔石に触れることが出来ない。何故かは良く分からないが魔石に触れると悪寒がするのだ。だから魔石を持って帰るなら誰かの助けが必要だ。


 俺は壁外に繋がる門を眺めた。


「どうしたの? 通るんでしょ?」

「いやぁ......あんまり正面から国に入る真似はしていなかったからな」


 門番が怪訝そうにこちらを眺めている。一日経つがこんな辺境の地であればまだ王城が壊されたことすら伝わっていないかもしれない。ともすれば俺の指名手配が機能していないことすらこの門番は知らないだろう。


「ちょっと捕まってろ」

「うわっ! 何するんだよ!」


 ウィズを抱え上げる。俺はそのまま近くにあった建物で門番の死角に入り空躍した。眼下に壁を眺めながら門番との言い争いが杞憂に終わったことを安堵する。

 壁外に勢いよく着地する。ウィズは唖然としたまま俺の顔を見つめていた。


「同じ人間だとは思えないね」

「俺もそう思う」


 真顔でそんな受け答えをする。

 目の前には荒れた大地と魔獣の山が現れていた。ここにやってくる時は気づかなかったが、よもやこれだけの数がのさばっているとは思わなかった。

 早く駆逐しなければ。


「ダメだよ」

「......何故だ?」

「コイツらは無尽蔵に湧いてくる。封印の祠がある場所からずっと湧いてくるんだ。ちょっとやそっとじゃどうにもならない」

「それは見逃す理由にはならないだろう」


 ウィズの考え方を一蹴して構えを取る。

 いくら時間がかかろうが人々に危険が降りかかる可能性があるのなら、徹底的にそれを取り除かなければいけない。誰であっても助けるためにはそれぐらいの覚悟は済ませて来た。


「それにコイツらは少しぐらいのさばらせていてもこちらを攻撃することは無いんだ。警戒状態に入ると体のどこかが赤く光り出すんだ。こいつらの体は黒いだけだから何もしなければ手は出してこないよ」

「そんなこと聞いた覚えはない」

「現場の知恵ってやつだよ。警戒色が出て来始めたらギルドに依頼が発注される。そこで僕たちが対処するんだ。だから大丈夫だよ」


 ウィズにそう言われて何だか腑に落ちなかったが承諾した。あそこのギルドに居る連中だけではこの数は対処できないだろうから多分言っていることは間違いではないだろう。


「そんなことよりも祠に向かうんじゃなかったの?」

「......あぁ、そうだな」


 俺はウィズの後を着いて行く。時々、魔獣がこちらの方を睨んでくるが睨み返してやると相手から視線を逸らす。まるで隣を通り過ぎていく一般人のような反応だ。こちらの事を何とも思っていないようにも思える。


「あんなもんなのか? 魔獣って」

「無計画に人間を襲うような動物ではないのは確かだね。警戒色を示して人間と戦っている魔獣を、通常の魔獣が横からのんびり見ているなんてことも少なくないよ。仲間っていう意識はないみたいだね」


 ウィズがあたかもそれが普通の事であるかのように話す。

 仲間じゃない? なら何故こんなにも存在している? ガイノウトが魔獣を作り続けているとしたら何のために作っている?

 記録石で見たのは「人間に失望したから」だった。人間を滅ぼそうと今でも思っているのだろうか。無念のうちに英雄に封印されたことは想像に難くない。


「ほら、着いたよ。ここが祠だ」


 ウィズにそう言われて顔を上げる。そこには大きな石にしめ縄のような物が括られていたものが何かの台座の上に鎮座していた。数本の柱に屋根が無造作に乗っけられたような外見だ。野ざらしにするのは流石にいけないと思ったのか屋根が付いているが壁はない。


「何か......拍子抜けだな」

「全然大きくないよね。これが神話に出てくる魔王の跡地だとは思えないよ」


 今にも壊れそうな外見だ。封印が弱まっているというのはもしかしてこの建物の事だったのか?

 ここでギルド長のおじさんの言葉を思い出した。俺がガイノウトの封印をかけ直すと言い張った時に言われた言葉だった。


『ありゃあ三人の英雄が力を合わせてようやく封印出来たんだ! そんな昔の魔術、今の世の中には残ってねぇ! 封印しなおすことなんか出来ねぇんだよ!!』


「ねぇ、聞いてる?」

「すまん」

「じゃあもう一度説明するからね? これが要石、ガイノウトを封じ込めている石だよ。そしてこの下の台座は魂の保管庫と呼ばれているところだよ。取り囲む四本の柱は神殿結界と呼ばれているよ。だから僕たちはこの要石に触れることは出来ないんだ」


 わずか二畳ほどの隙間にそこまでの秘密が隠されているとは思わなかった。俺はてっきり作りの悪い物置の様にしか見えなかったのに。まさかこの神殿の四つ柱の中にさえ触れることが出来ないとは。


「この要石の内側に封印されているのか?」

「詳しい事は知らないよ」

「そうか。そうだよな」


 ウィズは専門家ではない。詳しい人が居るのかどうかすらわからないが、整備がされている様子もないのでおそらく誰も近づいていないのだろう。


「ここで魔獣が作られているのか?」

「それも知らない」


 待て、それは少しおかしいんじゃないのか? もしもあの中にガイノウトを封じ込めているとしたら作り出した魔獣は一体どこから出ているのだ? 作られているとしたら外で作られていることになる。一体誰の手によって?

 額から冷や汗が流れ出す。何か恐ろしいことに気づいてしまったような気がした。


「なぁ。もしもこの祠がもう機能していないとしたらどうする?」

「そんなことある訳ないよ。気になるのなら神殿に触れてみれば良いじゃん。触れられたら神殿結界で封じられてるって分かるでしょ?」


 真っ新な窓ガラスがあることを確認するように、俺は疑心暗鬼のままゆっくりと手を伸ばす。

 伸ばされた手は、そのガラスに触れることはなく、無情に空を切る。


「そ、そんなことあるはずないよ! だってホ、ホラ!」


 俺はそう言うウィズの方を見て体の力が抜けたようにガクンと倒れ込んだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

ますます謎が広がっていきます!

祠の神殿結界が田熊にだけ抜けられること、魔獣の謎、英雄がかけた封印はどうなった!?

田熊は真実に至ることが出来るのか!?

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