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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
禁忌と魔王の第六章
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 俺達は流した涙を綺麗にふき取って椅子に座る。リタだけでなくベルモット、卓男を含めた5人で同じ1卓のテーブルを囲っているような構図だ。

 ベルモットの後ろにはメイドが立っている。俺のことを暗殺しようとしたメイドだ。


「私が貴方と話しておきたいのはこれよ。」


 そう言いながら差し出されたのは文献の1ページだった。

 事前情報の無い自分にこんな断片的な情報を見せられても仕方ない。俺は彼女たちの説明を待つことにした。


「これには『加護』と呼ばれたものについての説明が書いてあるわ。」


 加護についてはよく知っている。現に俺が鬼化と呼んでいる異能もアイツらに言わせれば加護である。


「加護とは神が人間に与えし力だと書いてある。貴方もその力を与えられたのでしょう。」

「ああ。そしてあの自称神様は俺のことがあんまり気に食わないみたいだな。」

「どういうこと?」


 ベルモットが首を傾げたので、俺はこれまでにあった自称神様との事の顛末を正直に話すことにした。

 時々、あの少年が自分の近くに立つことがあって、それは他の人間には認識できないこと。

 鬼化の能力を無理やり植え付けらたこと。

 少年は俺の旅路を邪魔しようとしていること。

 ティファにキスをしようとしたことは言う必要が無いので言わないことにした。だが、俺の手がその時、相手の体をすり抜けたことは言っておいた。


「その事象はおかしいのではないかしら。」

「まあ、そうだな。でもおかしいことがいっぱいありすぎて、正直どこから突っ込めばいいのかわからん。」


 そもそも俺からしてみれば、この世界に魔法があるのもおかしいと思っているのだ。


「まず、何故貴方だけに認識できるの?」

「さぁ? さっぱり分からん。だがアイツは俺の心の世界にも入ってくることができるみたいだ。」

「何それ?」

「俺に鬼化が出来るようになった時から明確に見えるようになった世界だな。多分心の中にもう一人の俺が出来てしまったからそういう風に見えるようになったのかもしれん。」


 ベルモットが眉間の皺を指で押さえている。俺が何を言っているのか分からないという様子だった。


「アンタ、厄介なことになってるのね。」

「そりゃどうも。」


 ティファが憐みの視線を向けてくる。


「次に、加護は神が与えると言っているけれど、どうやって?」

「俺の場合は、黒い球のような物を心臓に入れられたんだ。そうしたら勝手に使えるようになった。」


 使うというよりは使われるに近かった気もするが、そこらへんは解釈の違いなので別に良しとしよう。


「何で?」

「何でって......分からん。考えたこともなかった。」

「体の中にマナが無い人間でも使える器官を埋め込まれたという可能性が一番高いわね。周りのマナを吸収して発動しているというのは分かっているわけだし。」

「もしかしてそれって、赤目のことか?」

「赤目?」


 俺は瞬時に鬼化をフル稼働状態にする。俺の右目が赤く光り輝いた。

 ベルモットは俺の赤目に触れようとするが、俺はその手を避けた。


「これを壊されると俺に命の危険が及ぶ。ヤト爺が壊した時は大丈夫だったが、何日も寝込んだのは確かだ。というか壊されたら多分死ぬ。そんな気がする。」


 こういう奴らはすぐに研究試料として色々なものを取りたがるのだ。他の部位なら良いが、ここだけは譲ることが出来ない。

 ベルモットは少し落ち込んだ表情で椅子に座り直す。


「それで、貴方の旅路を邪魔しようとしているのはなぜ?」

「アイツは世界のパワーバランスをコントロールしていたらしい。だからそれを壊されるのは嫌だったと言っていた。アイツはこの世界の影の支配者にでもなっている気なんだろうさ。」


 俺はグッと拳を握った。アイツのことを思い出すだけで虫酸が走る。


「それで、アンタは神様が気に食わない。」

「まあ、それだけが理由ではないけどな。アイツの性根が気に食わないというかなんというか。」


 本人の目の前であのことを言える訳が無い。他にもいろいろ理由はあるので挙げ出せばキリがないかもしれない。


「最後に何で貴方の手がすり抜けたの? そもそも何故、突拍子もなく目の前に現れるのかが気になるわ。」

「アイツが言うには、実力の格が違うとか次元が違うとか、確かそんな感じだった気がするな。俺ももっと頑張ったら、壁抜けとか透明化とかできるようになるのか......?」

「できるわけないでしょ。」

「だよなぁ......」


 そんな物理法則を無視するようなこと出来る訳がない。だが魔法が使えるのだからアリなのか?


「ちなみに拙者には透視のスキルがあるでござるよ。」

「何故それを今言った。」

「壁抜けやら透明化やらの流れときたら、次はやっぱり透視でござるよ。ちなみに拙者は武具の内部構造を見てみたいと思ったら習得出来たもので、そういうやましいことに使おうという気はまるでないでござるよ。デュフフww」


 女性陣が全員引いたのを感じた。俺は卓男の頬に無言で張り手を打ち込み、その話を打ち切ることにした。

 ベルモットが話を終えて次に話し始めたのは卓男だった。


「拙者が聞きたいのはひとえに、国による魔法の認識の相互でござる。田熊氏、ロア氏を覚えているでござるか?」

「ああ、オスカーの大障壁を管理していた女の人だろう?」

「そうでござる。あの人が精霊というのを相手にしていたのを覚えているでござるか?」

「確かそんなこともあったなぁ。」


 懐かしい。それは彼女に俺が呼ばれたときのはなしだった。あの精霊が閉じ込められている部屋は実に神秘的でとても美しかったのを覚えている。


「でもこの国では魔法は人間が神とともに作ったものとされているでござる。」

「記録石に書いてあることを信じればいいのではないか?」


 言ってから考え直す。記録石に書かれている情報は改変が可能なのだ。それによってこれまでの歴史の流れも全て変わるという馬鹿げたものではあるが。だから信頼できるかどうかと言われると首を傾げるしかない。


「何が本当なんだろうな。」

「精霊が実在しているのかどうかによって一つは分かるのでござる。いるとすれば魔法とは何かについて考え直す必要があるでござるね。」


 卓男がやれやれと首を振った。肝心なところはまだ何も分かっていないのだろう。膨大な知識量から要点を絞って伝えてくれていることに感謝する。


「そう言うことについて本には載ってなかったのか?」

「認識の違いや精霊については書いていなかったわよ。あの禁書庫にもなかったわ。」


 そう言う情報についてこの国には入って来ていないということか。

 この国たちが対立していなければもう少し早く真相にたどり着けたかもしれない。


「じゃあ私もそろそろ会話に参加するのですよ。」

「おう、お前がこれから話したい事って何だったんだ?」


 リタは意を決したように話し始めた。


「これからの話をしましょう。それに伝えておかなければならないこともあります。」

やっと色々な伏線が暴かれてきたと言った感じですね。

もしかしたらここから謎解きサスペンスに!? そんなことにはならないので心配しないで下さい。

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