表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
師弟と打倒の第四章
57/136

追う背中

前のを大幅に改稿しました。

最新話を読んでくれているありがたい人には申し訳ないですが、前の分から読み直していただけるとありがたいです。

もっとアツくなっていると思います!

 強い奴っていうのは、夜空に輝く星みてェだ。

 手が届きそうで届かねェ。でも欲しい。そういうモンだ。

 俺は今までにいろンな星を見てきた。俺は星を掴むためにメチャクチャ努力した。俺にとって戦うということは星を掴むために手を伸ばすこと。練習したり祈りをささげることは星を掴むために少しでも星にちかづくことだった。

 そしていろンな星を掴んできた。

 俺にとっての星は、眺めるものではなく掴むものになった。


 その中でも一際強く輝く星があった。

 トツカさんだ。

 最初にあの人を見た時はまだ俺が子供の頃だった。あの人はとってもキラキラしてた。あの頃の俺は強いヤツを見てもスゲェとしか思ってなかった。星に執着もなかった。

 そのキラキラが星の輝きだってことに気づくのにそう時間はかからなかった。


 俺の憧れだった。

 いつか倒してみてェと思っていた。一番キラキラ輝いていて一番遠いあの一等星をこの手で掴み取りたかった。

 だから死んだって噂が流れた時は信じられなかった。親父が死んだ時より泣いた。何より、俺の手で掴め(ころせ)なかったことが嫌だった。


 だから目の前に居るヤツが現れた時、コイツは俺の掴み損ねた星の輝きなのではないかと思った。

 マナがないにも関わらず戦おうとするなんてまるで生き写しだ。そして、最後まであきらめない闘志に俺の心はシビレた。

 だから殺さずに監獄に入れてやった。アイツなら絶対に出てくると思ったからだ。そしていとも簡単に逃げ出した。アイツは俺の期待に応えた!

 そして次に、あの酒場で出会った!最高だった!アイツは神様が俺に与えてくれた贈り物なのではないのかと思った!

 戦い方や見た目は違っても生き方、考え方が同じだった!普通はこんなことありえねェ!!

 そして強ェ!

 俺に倒されてくれって現れたようなモンじゃねェか!

 こんなに輝くヤツを俺は久しぶりに見た!この輝きはトツカさんにそっくりだ!!

 だから俺の手で掴み(ころし)てェと思った。


 でも、できなかった。キラキラしたモンは輝けば輝くほど掴みたいと思っちまうのに、掴みにくくなっちまう。

 また掴み損ねちまった。


 --------------------


 ヴェニスは仰向けになったまま、天に手を伸ばしていた。

 その顔にはもう悪魔は憑いていなかった。


「お前の『掴む』ってなんだったんだ?」

「話......長くなるぜェ......?」

「簡潔に頼む。」

「ケッ......連れねェなァ......」


 喉に血が絡まったような声で細々と話し始める。

 星の事、ヤト爺の事、俺と出会った時にどう感じたか。全然簡潔ではなかったが、それでも何故か聞き入ってしまった。


「結局、俺たちは同じものを追いかけていたんだな。」

「そういうことになんのかねェ。」

「お前はヤト爺を星として掴もうとしていた。俺は師匠としてその背中を追いかけ続けていた。同じようなものではないか。」

「そうかァ......?」

「そうだよ。」


 俺たちは二人でぼやくようにそう呟いた。

 ヴェニスはスッと表情を無表情にした。


「王城は西の方向だ。デカいから行けば気づくだろ。」

「どうした、急に。」

「行くンだろ?」


 ヴェニスは仰向けのまま首だけ傾げてこちらを向いた。


「あぁ。行かせても良いのか?」

「俺はァ、負けたんだ。お前の行く先を拒む権利はねェ。それにテメェの行く先を見てみたくなった。まァ俺は付いて行かねェけどな。ここに居てもテメェが何やってるかぐらいは耳に入るだろ。」

「お前はそういう所はキッパリしてるんだな。」

「あたりめェだ。それが勝負ってモンよ。」

「良い知らせを待っていろ。」

「地動石が盗まれるってことか?悪い知らせの間違いだろ。」


 俺はそれだけ言ってその場を後にした。


 --------------------


「そういう訳だ。」

「なんか、ごちゃごちゃあったのね。良く分からないけど良く頑張ったわ。」

「そりゃどうも。」


 ティファは俺が指名手配されて捕まったにも関わらず、呑気な様子で俺を出迎えた。

 肝が据わっているというか、頼もしいというか。

 自分の中にある温かいものが蘇ってきたような気がした。


「で、もう出るの?」

「あぁ。」

「もうちょっと居たらメルちゃんに色々教えられたんだけどねぇ。」

「メル?あぁ、あの無口な子か。」

「あんた、話す努力もしなかったのね。話下手もいい加減直した方が良いと思うわよ。」

「すまん。だが俺が行くと逃げるんだ。」


 俺と話す気がないのかどうなのか知らないが、そそくさと逃げてしまうのだ。

 俺は動物にも結構嫌われるタイプなので、そういうものなのかなと思いそっとしておいたのだ。兄のミッドの方とは師弟関係......と呼べるのかは分からないがそんな感じになっていた。


「メルちゃん、お兄ちゃんのお手伝いがしたいって言ってたの。お兄ちゃんが自分のことを気にしないでも色々出来るように、せめてその手伝いがしたいって。」

「そんなこと言ってたのか。」

「小さいのに偉いわよ。ホント、掃除の時にどいてって言っても座布団片付けないでどっか行く誰かさんに見習わせたいぐらい。」

「すまんな。」

「謝るなら行動で表しなさい。」

「了解しました。」


 家の奥の方からミッドが出てくる。良く見てみたら壁から顔を少しだけ覗かせたメルも居た。


「もう行くの?」

「あぁ。短い間良く付き合ったな。」

「まだ俺強くなんかなってないよ。」

「そういう時は俺を安心させるようなことを言うべきだ。それに修行はどんなところでも出来る。やろうと思えばな。」

「んー。じゃあ早いけどもうお披露目しちゃうか。」

「ん?」


 そう言うとミッドは歩いていつもの修行場所に立った。俺は何を見せられるのだろうと不安と期待が混じったような心持ちで着いて行った。


「見ててね。」


 ミッドが俺が教えた構えを取る。細かいところを注意すればキリがないが、初心者にしてはなかなか様になっている。

 拳に魔法の光が集まり始めた。やがてそれは拳に纏わりつき、拳を武装するように固まった。


「ハァッ!!」


 気合と共に攻撃が炸裂する。拳が放たれると同時に纏わりついていたマナが発射され大気を切り裂いた。

 離れたところにある石材の山に当たり、石材が崩れていった。


「ハァハァ......どう?」

「まぁまぁだな。」

「えー、何その感じ。結構上手くいったんだよ?」


 正直に言えば凄いと思ったがここでそれを正直に評価する気にはなれなかった。なんか認めた感じで嫌である。だが弟子の成長は素直に嬉しい。

 ヤト爺が皮肉を言うときもこんな風に思っていたのかもしれない。師匠からもらったものは弟子に返す。技術や愛情を弟子に返すことが師匠への恩返しなのだろう。


「もっとマナを正確に速く当てられるようにしろ。次に帰った時にはあれぐらいの石材なら粉に出来るようにしておけ。」

「厳しー。」

「妹を守りたいんだろ。妹が守られていることに気づかないぐらい自然に守れるようにしておけ。心配してたぞ。」

「......うん。また帰ってくるんだよね?」


 ミッドの表情は少し悲しげだが、どこか吹っ切れた感じもあった。

 俺はその気遣いに応えてやらなければいけない。


「あぁ。もちろん。」


 ミッドの目がキラキラと輝いた。

 背後からティファの怒鳴り声が響いた。


「準備、終わらせたわよ!! あんたも手伝いなさいよね!!」

「すまん。」

「いっつもそればっかりじゃないの。......今回もアレやるの?」

「何の事だ?」

「あのびゅーんってヤツ。」

「アレ以外何の移動方法が在るって言うんだ。」


 奥から大きな荷物を抱えた卓男とベルモットの二人を問答無用で抱え、ティファを顎で指図する。

 しぶしぶといった顔で俺の肩に跨った。


「じゃあ行くぞ。」

「行ってらっしゃい?」


 首を傾げるミッドを横目に俺は全身に力を入れた。


「『空躍』!!」


 俺たちは空高く舞い上がる。

 次なる地を目指して。

第四章これにて閉幕です!

次からは第五章に移ります。田熊vsフェンリル王国の戦いが始まります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ