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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
終焉と希望の第八章
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誤解

 荒れ地に閃光が飛び交う。

 基地の壁に魔法弾がぶつかり、激しく火花を上げながら壁を削り取る。


「何をやっているんですか!」


 けたたましい騒音の中で、俺の声が一際強く響き渡る。その声に基地を攻撃していた群衆が振り返った。

 その群衆の瞳は怒りに染まっていた。


 一斉にこちらに掌を向け、魔弾を放つ。


「『吸収防壁(リリーブシールド)』!」


 クラスメイトの一人が咄嗟にシールドを貼った。

 魔弾は全て止められたかに見えた。


「うおっ!?」


 シールドが砕け散る。

 その壁を破壊し潜り抜けた魔法弾が、基地の壁に当たりかけた。

 俺は一瞬でその魔法弾の軌跡をなぞり、オーバーヘッドキックで魔法弾の軌道を変えようとする。

 その魔法弾の軌道は曲がり、基地のスレスレを通って虚空に消えた。

 反動が足を痺れさせる。


 この魔法弾、異様に強い!


 地上に降りて足をさする俺を横目に、金城が前に出た。


「何でこんなことをした!?」

「お前らが俺達を裏切ったんだろうが!」

「知ってるんだよ! あんたらがこの国をつぶそうとしてるってことは!」

「はぁ!? 何言ってんだ?」


 俺も金城と同じ気持ちだった。

 俺達が国を潰そうとしている? 何を根拠にそんなことを言っているんだ? 俺達はこの国どころか世界も守ろうとしているのに。


「だってあんたら石を壊したじゃないか! あれは国王から預かっていた大切な物なんだろう!?」

「他の国に取られそうになったからって全部壊してしまったらしいじゃないか!」

「国に反乱を起こすつもりなんだろう!」


 そうだそうだと声が上がる。

 俺達は内心驚いていた。

 あの出来事があってからまだそう時間は経っていない。


「おい、一体誰からそれを聞いた?」

「見ろ! あの慌てようはやはり本当の事だったのだ!」

「誰から聞いたかと聞いているんだ!!」


 金城の怒鳴り声に群衆が静まり返る。

 金城はこれでもかと言うほど眉間に皺を寄せていた。

 彼の怒り方は、群衆が俺達のことを誤解していることに対して怒っているわけではないような気がした。

 そこに気が付いて、俺はようやく金城の考えにたどり着いた。


「誰からって、それは神様からに決まっているだろう!」

「私達に迫る危険を神様はいち早く教えて下さったのよ!」

「信仰は裏切らないという訳だ!!」


 やはり。

 おそらく金城もそう思ったはずだった。

 この暴動に神様を名乗る少年が何らかの形でかかわっていることは想像に難くない。

 だが、まさかこんな形でかかわってくるとは思わなかった。


 つまるところ、あの少年は俺達に一般人をけしかけて来たという訳である。

 それも作り話をでっちあげて。

 確かに作り話としては矛盾が無い。そういう取り方も出来るし、石を俺が壊したというのも事実だ。


 だからこそ、真意を確かめる手段を持たない一般人は、命をつなぐために拳を握り武器を取るしかなかったという訳である。


 しかもあの少年は彼らに武器も与えている。

 俺は金城に近づき、耳打ちをした。


「この民衆は、ほとんどの奴が加護を与えられている可能性が高い。最悪、全員が加護を持ち合わせている可能性がある」

「ああ、しかもその最悪の可能性が一番たけぇだろうな。ただの一般人に俺達のシールドが突破されるわけがねぇ。プロメテウスの傭兵の攻撃ですら防げるシールドが急ごしらえにしろ、あんなに簡単に割れるとは思えねぇ。つまりはあいつら全員、傭兵よりもえげつねぇ力を持たされた人間と見て間違いねぇだろうな」


 金城の額に血管が浮き出ていた。冷静な判断を語っているのはおそらく、自分の心を整理させるためでもあるのだろう。

 後ろから声が聞こえる。振り返ると卓男が基地から出てこようとしていた。

 俺は基地の出入り口に立つ。


「卓男。何かこの状況を打開できる方法が見つかったか?」

「まだでござる。ですが、その神様に対する仮説は出来上がったでござる。この仮説が間違っていなければ、もしかしたら神様に対抗する手段が出来るかもしれないのでござるよ。ですが、今は仮説の検証をしている暇がないのでござる」

「検証なんかしなくて良い。試作品とか、どうにかできそうなものを作って来てくれたらそれでいい」


 卓男がデュフフと笑う。


「その言葉が聞きたかったでござるよ。分かりました。試作品なら半日もあれば、どうにか形にはできるでござる」

「それまで俺達はこの状態で持ちこたえれば良いわけだな」

「そういうことでござる。お願いしに来るまでもなかったでござるね」

「それしか方法が無いからな。半日と言わず、出来るだけ早く頼むぞ」

「世が世なら超ブラック企業で炎上ものでござるよ」


 そんな皮肉を言いながらも笑顔で基地の中に戻っていく。

 どうやら、俺達が耐えるべき時間は定められたらしい。

 金城が柄の悪い悪役のように指をパキパキと鳴らしながら、民衆のヘイトを全身に集めていた。


「俺達は国を滅ぼす気もねぇし、お前らをどうこうする気もねぇ。どうこうする気があるならとっくにやってる。それでもお前らが引かねぇって言うんだったら、こっちも黙ったまま殺られるわけにはいかねぇ。引くなら今だぜ?」


 それで相手が引かないのは分かり切っていた。

 この場に居る全員がそれを確信していた。

 ゆえに返答は言葉では行われなかった。


 金城が魔法弾を切り飛ばした。

 次々と放たれる魔法を跳ね返しながら金城が小さく舌打ちをした。

 俺も魔法弾を撃ち落としながら金城に近寄る。


「半日だ。耐えられるか?」


 金城は脇目も振らずに攻撃を跳ね返す。


「やるしかないんだろ? 暴動を止められるのが一番良いけどな」

「できれば相手を傷つけないのが理想だな」

「それは出来ねぇだろ! ......マジで言ってんのか?」

「もちろんだ。相手に罪はないだろう」

「......お前、ほんとやばいよ。時々、狂気じみてると思う」

「それが俺の矜持だ」


 俺は攻撃を殴り飛ばす。

 拳に触れた魔法弾が爆散した。衝撃が手を伝わり、骨がみしりと軋む。

 俺は全員救うと決めたんだ。その心だけはどんな時でも偽りがない。


「半日。守り切るぞ!」

「「おうっ!!」」


 そして誰も傷つけさせない防衛戦が始まった。

 力を持った一般人vs歴戦の英雄!

 誰も傷つけさせない戦いが今、始まります!

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