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異世界単騎特攻  作者: 桐之霧ノ助
盲信と英雄の第七章
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情報共有

「それで聞き出した情報を共有していきたいと思うのでござるが......ティファ氏、大丈夫でござるか?」

「うーん。しばらく休むわ。どうせ私は聞かなくても関係ないんだし勝手に進めといて?」


 卓男が話し出そうとする前にティファに確認を取った。ティファはソファに横たわったままそう受け答えする。昨晩のことが響いているようだ。

 元より俺はガイノウトと一体になって、しようと思えば寝なくても済む体になってしまった。今度するときは相手の体も気遣うようにしなければいけないと思い直す。


「風邪でござるか?」

「いや、そういうわけじゃないんだが」

「なんで田熊氏が受け答えしてるのでござるか」


 卓男がやれやれと言う風に首を振っている。確かに今の流れで俺が返答するのは不自然だ。

 かといって昨日の出来事を話すわけにもいかない。


「そんなことより情報共有だ」

「そうでござったね」


 こういうことは水に流すというか、無かったことにするのが一番手っ取り早い。

 俺は気にせず話を進めることにした。


「まず、男にプロメテウスの実態を聞いたのでござる。プロメテウスは主に執行人と呼ばれる人間と伝達者と呼ばれる人間が居るらしいのでござる。執行人に伝達者が上からの命令を下していて、あの男は伝達者だったようでござる」

「伝達者には誰が命令しているんだ? だれかまとめ役みたいなのが居るんだろう?」

「プロメテウスでは王が居ない代わりに管理者と呼ばれる三人の人間が居るらしいのでござる。その人間たちが実質的な決定権を握っているのでござる」


 段々と分かってきた気がする。つまり管理者の意向に従って動く国と言うことだ。

 プロメテウスでは王は居ないらしいが、上の機関は存在するらしい。流石にそれが存在しないのはおかしいのだがあんな得体のしれない国なのだから無くてもおかしくないと思っていた。


「そいつらを倒せばプロメテウスは無くなるという訳だな?」

「それがそうでも無いらしいのでござる。管理者の誰かがその任務を執行できなくなった場合、その下で管理者から命令を請け負っていた伝達者の一人が管理者に選ばれるのでござる。だから上の人間を倒したところで組織自体は無くならないらしいのでござるよ」

「......なんだか国って言うよりも会社みたいだな」

「まあ、普通の会社よりもブラックで危険が多いけど、対応も早い所でござるね」


 なんだか底知れない闇を知ってしまった気分だ。組織の構成員は国のためと思っていないとやっていけないだろう。何だかそこまで国を愛しているのは狂信者のケがあるような気もした。

 ともあれ俺の目的は組織を倒すことではなく、プロメテウスが持っている生命石を盗み出すことである。それが出来るをのなら、極論を言うと相手と戦う必要さえ無い。

 管理者が持っているのであれば管理者から奪い取るしかないが、どうなっているのだろうか。


「次に相手の今の動向でござる。プロメテウスはガイノウトの祠からある物を取り出したと聞いているでござる。それを使って何かしようとしているらしいのでござる」

「ガイノウトの祠......英雄の槍か!」


 ガイノウトを封印するために刺さっていた剣を誰かが抜いたのだとガイノウトから聞いた。その話が本当だったのであれば盗まれたのは英雄の槍である。

 三英雄の一人であるフェンリルが持っていた槍。それはガイノウトを祠に繋ぎ留める役目を果たしていた。

 俺はてっきりガイノウトを封印から解き放つために槍を取ったのかと思っていたが、まさかそれを何かに使っているとは思わなかった。


「何かって何だ?」

「それは男も知らなかったのでござる。そこはもっとトップの人間しか知らないみたいでござる」

「もっとトップの人間っていうのは......管理者しか知らないってことなのか?」

「そこは良く分からないでござる。男も相当な位置のポストに居たらしいので、それより上となるとかなり限られてくるのは事実でござる」


 あんな嫌い嫌いと言っていた男が上の人間になれるのか、はなはだ疑問である。

 もしかしたら狂人の集まりなのかもしれないと思ってしまう。


「最後に現在のプロメテウスの本拠地の位置でござる」


 俺はその言葉を聞いて勢いよく立ち上がる。


「それは一番重要な情報だろ! どうして早く言わないんだ!」

「拙者は美味しいものは最後まで取っておく派なのでござる」


 俺はしぶしぶ椅子に座る。俺は美味しいものを最後まで取っておく人間の気持ちが分からない。

 こういう情報を最初に言ってくれないとそのうえで対応を考えることが出来ないではないかと思い、つい怒ってしまったがそう言われたら下がるしかない。


「プロメテウスの現在の本拠地は、オスカーにあるのでござる」

「何だと!?」


 俺は驚嘆して再び立ち上がった。

 まさか俺達が最初いた場所に本拠地があるなんて考えてもみなかった。意外と近くに敵は居るものである。


「正確に言えばオスカーの住民地区にあるのでござる。拙者達は行ったことが無かったでござるね」

「オスカーの住民地区か......確かにあそこに居た時は戦いに明け暮れていたから、そんなところには行ったこともなかったな」


 俺はしばらく考えたあと、やはりこの手しかないと思い言葉を発した。


「よし、行くか。オスカー」

「もう引っ越しするの?」

「そうだな。忙しくて悪いが用意してくれ」

「まだ荷紐も解いていないでござるよ」


 ティファが重い腰を上げた。俺は身支度を始めようとして、そう言えば引っ越しの片づけをしていないことに気づいた。

 卓男は物置に行ったかと思うと、引っ越しの荷物をそのままの形で取り出した。

 申し訳ないとは思っている。だが行動は早い方が良い。


「じゃあ出発だ。みんなを集合させてくれ」


 --------------------


「早いわね」

「久々の帰省を惜しむ暇もねぇです」

「お嬢様がいく所ならどこへでも着いて行きましょう」

「ワイは何しに行くっちゅうんや」

「嫌ならついてこなくても良いんだぞ?」

「いやいやいや! おいて行かれたらワイ殺されるがな! こんなところで死ぬのは嫌やで!」

「拙者は二日連続ゲロを吐くのが嫌でござる」


 皆、色々と愚痴を吐きながら自分の体にへばりつく。

 それでも着いて来てくれるのが信頼なのだろうか、と思った。俺はしっかりと全員と荷物をホールドし、助走をつけて空へ駆け出した。


「空躍!」


 --------------------


 たどり着いたその地からは、見慣れた要塞がそびえたっているのが見えた。


「帰ってきたな......」


 俺はあたりを見渡して他にも懐かしい建物が無いかどうかを探していた。

 ふと見かけた人物にどこか見覚えを感じて目を凝らす。それは女性だった。


「塩見になんか用でもあるのか? 田熊」


 聞こえて来た後ろからの声にただならぬ聞き覚えを感じて振り返る。


「金城!」

「久しぶり、田熊。何しにこんなところに来た」

今回も駆け足でしたね! 本来ならもう少しゆっくりと書きたいのですが、見所が無いのでちょっと駆け足です!

次回からは再びオスカーです。何で住民地区に金城が居るのでしょうか?

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