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第七十二話 オラと結婚してけろ

『スキル《料理Lv1》を取得しました』


「お、新スキルゲッツ、やった」


 マーちゃん宅で買い物中に思い付いていたハンバーガーの味付けを試すこと数種類、そうこうしていると天の声さんからスキル習得のお声がかかった。

 毎日なんだかんだ新スキルを得たりスキルLvが上がっているモノである。


 料理に向けていた集中力が切れ、ふと気付けば夜の帳も下りていた。手元やテーブル上はいつの間にか用意されていたランプで照らされていたが、気がついてみるとかなり薄暗く感じる。

 ランプはおそらくセシリーさんが用意してくれていたのだろう。


 今日の所はそろそろおいとましようと思うおっさんことアイバー。


「遅くまでお邪魔しちゃってすいませんでした」


「いえそんな!! たくさん試作品を作っていただいたり、余った食材もいただいて…こちらこそ、すいません…」


 ミナさんと別れた直後の不穏な雰囲気は既に消え去り、逆に恐縮した様子のセシリーさん。

 市場と商店で購入したもので試作に使った分以外はマーちゃん宅で消費してもらうことにした。施しのようで内心不快なんじゃないか、なんて思わなくもなかったのだが強引に押しきったアイバーである。


 人間まずは腹を満たさないと、だ。どこかで聞いたような台詞なのはきっと真実だからだろう。先行きの見えない未来に絶望しても飯さえ食ってお腹いっぱいになればその日はしのげる。

 アイバー自身も仕事が辛いときほど会社帰りのコンビニで大量の弁当や菓子、炭酸飲料を買ってしまっていたという実体験から悟った教訓である


「一応味付けの方向性は決まりましたけど、セシリーさんが思い付いたり試したいものがあったら使って下さい。

 俺には思い付かない事もセシリーさんやマーちゃんなら思い浮かぶかもしれませんし」


 受け取ってもらう為の建前ではあるが、本音も幾分が入っている。

 アイバーの料理知識は自分で考えついたモノではなく、前生の経験からの最適解と思われるモノを取捨選択したものだ。それはそれでハズレはないかもだが、思いもよらない組み合わせやこの世界ならではの味付けを考えつく事は難しい。

 そこを現地の人であるセシリーさんに補ってもらえれば的な事を考えていた。上手くいったら儲けもの、程度の期待値だが…


「それじゃ、また明日来ます。

 それで……急かなとは思うんですけど、明後日かその次の日には屋台で出してみたいと思ってます。予定通りにいくかは分かりませんが、心構えだけはお願いしますね」


「…はい」


 緊張した面持ちで頷くセシリーさん。

 夜の闇に隠れて表情が確認しづらいが、不安にかられている様子だ。

 無理もない。つい先日まで農家をやっていた人間が屋台とはいえ、まるっきし経験のない飲食業を始めようというのだ。不安にならない方がおかしい。


 何かの本で読んだが、人間良さげな新しい場所よりも多少の不満があろうとも慣れ親しんだ場所を選ぶそうだ。

 慣れ親しんだ仕事を捨てて新しい事に挑戦するというのは未知故の不安があるのだろう。


 前生でも、近年ようやく転職というものに抵抗を無くそうと試み始めていた。幸い、と言っていいのかおっさんは転職の機会はなかったのだが。

 とはいえ、まだまだ『日本の転職=落伍者』的な図式は根強い。おっさんは氷河期世代なので終身雇用は既に過去のモノだが新卒採用社会の牙城はまだ健在だった。新卒採用からのレールを外れてしまうことに忌避感を覚える者も多かった。


「美味しいモノ作って村の名物にしてやりましょう!!」


「え!? は、はい!!」


 少し強引にでも気分を上向きにしておかないとな 。こういうのって前生でも苦手な分野だったけどそうも言ってられない。

 にしても異世界に来てまで他人のモチベーション維持に気を使うはめになるとは…日本人のワーカーホリックは思っているよりも深刻なのかもしれない。今まで読んだ転生物の主人公も、大抵忙しく働いているしな…

 

 少しは効果があったのか、うつむき加減だった顔が上がった。

 

「じゃあ、これで失礼します…シュー、ブラン、帰るぞ(ボソッ)」


「ゥ…」


「クゥゥ…」


 本日も味見役でお腹いっぱいになったマーちゃんの要望で寝床に御一緒させられたシューとブラン。小声で呼び掛けソロ~っと出てきた。シューもお腹いっぱいなせいか少し眠たげだ。


 昨晩と同じように家の明かりを背にして夜道に向かい、1度振り返ると頭を下げたままのセシリーさんが確認できた。

 けっして言ったり聞いたりはしていないが、アイバーの見立てだと20代中盤~ギリギリ30に届くぐらいだと思う。

 このアーニスの文明度で考えると結婚適齢期は成人後の10代半ば~20代前半ぐらい。マーちゃんが5歳だと言っていたのでほぼ合っているのではないだろうか。


 正確には25歳なのだがアイバーにそれを知る(すべ)はないし、おそらく今後も知る機会はないだろう…女性に年齢の話はタブー、アイバーの浅い人生経験でも学べた数少ない真実である。


「それくらいの年齢で子持ちで未亡人…なんとかして一家を支えようとしてるんだもんな。俺にとっちゃそれだけで脱帽もんだわ。

 俺自身、恋愛やら結婚とは縁のないモノだと思ってたからなぁ…

 現代日本じゃ、仕事を覚えてようやく婚期を意識するって感じ…かな? 俺の勝手なイメージだけど…今時の若い連中は違うのかな?」


 夜道を従魔2匹とテクテク歩きながら2つの世界の女性観や若者観について考察するアイバー。

 夜の散歩がてら物思いにふけるおっさんである。

 

「そういや大学生の頃女性学なんて講義受けたこと合ったな。中身はジェンダー理論的な感じだったけど。ちょうどその頃男女雇用機会均等法が出来た、つーか名前が変わったんだっけ? 就職セミナーで言われたんだけど、前はもっと平仮名使ったりして長かったような…覚えてないけど。

 あれからあれよあれよという間に女性の社会進出が進んだ気がするけど…ニュースとかじゃまだまだって聞いてたよな。

 俺にとっちゃ女性の社会進出ってーと月曜夜9時からやってた討論番組の女性教授のイメージなんだけど、今の少子化の原因作った人でもあるんじゃねーかな?」


 前半は若かりし頃の思い出、後半は完全に言いがかりである。

 とまあ、今は日曜昼に引っ越しした討論番組関連で思い出したが、

 

「舛に添えらそうな学者さんも政治に関わった途端にあれだったもんな…偉い人って元々ろくなことしないのか、権力を得ると変わってしまうのか…」


 脳のニューロンだかシナプスだかが関係ありそうでなさそうな情報に結び付けた。自分で自分の思考の繋がり方にビックリである。


「まあ、あの2人はセットだったからな…」


 いわばセット、北斗と南斗、笑点の緑と紫みたいな関係である。お互い高め合う仲だ。


 そうこうしている内に清湖亭に到着するアイバー。ミナさんに昼間の事をからかわれるのを努めて淡白に反応して部屋に戻る。

 女性に恋愛関係の話題を提供すると、その後が大変だった記憶がある。


 食事はハンバーガーの試作品を摘まんでいたので問題なし。

 日課の就寝前MP使いきりをしたところで、マーちゃん親子に魔法を使ってもらう約束を忘れてた事に気づいたが、屋台の件が一段落するまではいいか、と考え眠りにつくアイバーであった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



【本日終了時のステータス】



【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】武芸者 ※異世界転生者 初級魔術師 調教師 料理人

【 L V 】16

【 H P 】410/410

【 M P 】0/276

【 STR 】236

【 VIT 】158

【 INT 】330

【 MIN 】117

【 DEX 】147

【 AGI 】265

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《身体強化Lv1》《体術Lv2》《短剣術Lv1》《剣術Lv1》《大剣術Lv1》《刀術Lv3》《爪術Lv1》《棍術Lv1》《杖術Lv1》《槍術Lv1》《鎚術Lv1》《斧術Lv1》《投擲Lv3》《回復魔法Lv3》《火魔法Lv1》《水魔法Lv1》《風魔法Lv1》《土魔法Lv3》《光魔法Lv1》《闇魔法Lv2》《HP自動回復Lv1》《MP自動回復Lv3》《予測Lv1》《統率Lv1》 《連携Lv1》《狂化Lv4》《魅了耐性Lv1》《孤独耐性Lv6》《毒耐性Lv2》《気配察知Lv1》《冷徹》《交渉Lv1》《算術Lv5》《努力の才》 《料理Lv1》new《採取Lv1》《過食Lv3》《吸収Lv3》《無詠唱》

【特典スキル】《武芸の才》《初級魔術の才》



【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】12

【 H P 】117/117

【 M P 】46/46

【 STR 】100

【 VIT 】95

【 INT 】94

【 MIN 】106

【 DEX 】133

【 AGI 】158

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《連携Lv1》《隠密Lv1》《暗視》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv3》



【 名 前 】ブラン

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】9

【 H P 】107/107

【 M P 】14/72

【 STR 】86

【 VIT 】79

【 INT 】133

【 MIN 】80

【 DEX 】131

【 AGI 】124

【 スキル 】《鑑定》《噛み付きLv1》《咆哮Lv1》《風魔法Lv1》《連携Lv1》《暗視》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》 《孤独耐性Lv1》《毒耐性Lv1》《採取Lv3》


 

お読みいただきありがとうございましたm(__)m


世間はGW…1度でいいから9とか10連休してみたいです( ;∀;)

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