表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/76

第七十話 美味くて早くて安いの

私はマ○クリブが一番好きです♪



 ハンバーガー。

 言わずと知れた米の国の国民食。


 基本は挽き肉を用いたパテを、バンズと呼ばれる上下揃いのパンで挟んで食する料理。単純であるが、食べ歩き可能な形状や中に挟む食材の組み合わせの妙により若者中心に絶大な支持を得ているファストフードの代表だ。デフレ時代の象徴でもあり、今なお受け継がれるその偉容(ひゃくえん)は貧困層の希望でもある。


 もちろんおっさんことアイバーも大好きだ。

 セットを頼んだら単品で2個ぐらい頼んでしまうのもやむなしである。個人的にはセット(ポテトのみL)+200円+100円×2ぐらいが贅沢でいいと思っていた。


「や、屋台で、ハ、ハンバーガー…ですか?」


「なんかおいしそう♪」


「ガウウ♪」『おいしそう♪』


「ガウガウ…」『しゅーねぇ…』


「おいしいよ♪ なんなら、試しに作ってみようか? 昨日の残りものがあれば出来るし。

 セシリーさん、昨日作った分残ってます!?」


「は、はい今日のお昼の分が…」


 マーちゃん&シューのリクエストに応えるため3人で台所に入る。ハンバーグの残りは普通のが1個でタマネギ抜きが4個で従魔も含めてちょうど5人分だった。

 母娘(おやこ)が夜に食べる分を残しておこうかとも思ったが、あんまり長置きして傷んだりしてもよくないから食べてしまおう。この後新しいのを作り置きしておけばいいだろう。

 竈にお茶を作った際の火が残っていたので、薪を足し《火魔法》と《風魔法》を併用して火を強くして昨日のハンバーグの残り物に熱を入れておく。フライパンに敷き詰めると3つが限界だったので、自分とブランの分は後回しにする。昨日の料理としてのハンバーグだと俵型過ぎて分厚いから潰し気味にしておこう。

 

「厚かましいですが、パンと何か生で食べられる野菜か塩漬けか酢漬けの野菜ってないですか?」


「あ、はい、それでしたら…えっと…」


 パンはいつもの保存に向いてる固いパンが出てきた…庶民のスタンダートはこれらしい。

 野菜の方はタマネギっぽい野菜とザワークラウトっぽい漬け物があるらしく使わせてもらおう…と思ったらそれぞれ小鉢1個分程度の量しかなかった。


「す、すいません、これしかなくて…」


 と、恥じ入るように言うセシリーさん。


「いえ、十分です。ありがとうございます」


 気を使わせてしまった…と言うか貧しいっていうコンプレックスを刺激してしまったかもしれない。

 今後は試作品作りでも材料は持ち込むようにしないとな。反省だ。


「パンはパテの大きさに合わせて切って、タマネギっぽいの…《鑑定》してもタマネギか。

 輪切りにしてバラしてから挟めばいいや」


 そういえば、と野菜を《鑑定》してみたら、まんまタマネギだった。


「ねえねえ、もうできる?」


 そうこうしていると、マーちゃんに服のそでをちょいちょい引っ張られて催促された。

 セシリーさんの躾がいきとどいているのか、特に危険行為をしている訳では無いのだが、よく考えたらこの歳の子供を台所に立たせるのは危ないな。


「もうすぐ出来るから、そしたら皆で食べよう。だから、向こうのテーブルをキレイにしといてもらえるかい?」


「うん♪ わかった~」


 ファンタジー世界に食事前のテーブルを拭くという習慣があるのか分からなかったが、そう頼むと先程までお茶を飲んでいたテーブルを片付けに行ってくれた。


「マリアちゃん、良い子ですね」


「ふふ♪ いつもは遊んでばかりです。今日はアイバーさんが来てくれているからですよ」


 お、恐縮しっぱなしだったセシリーさんの雰囲気がちょっとだけ和らいだ気がする。やっぱり親にとって子供ってのは誉められれば嬉しいもんだろうし、大事なんだろうな…前生では孫の顔も見せてやれなくて親不孝でゴメンな、父さん母さん

 あと、あらためて昨日のセシリーさんが追い詰められていたと言うのが分かる。今後そうならないようこのハンバーガー作りを成功させないと!!


「さて、そろそろ仕上げよう。バンズ代わりのパンにパテをのせてっと」


 フライパンの上でジュウジュウと油がはねる音が耳を刺激し、そこから立ち上る匂いが鼻腔を刺激する。

 肉、最高だ♪


「確か挟むんでしたっけ…」


「ええ、ハンバーグの上にタマネギをパラパラ、ソース系が無いのが今後のネックだな…今回はフライパンに出た肉汁で代用っと」


 細かい事だが、いざバーガーを組み立てていくとパテと野菜の順番に迷う。例のハンバーガーのチェーン店はどうだっただろうか?


「あんだけ食べてたのに、いざ思い出そうとすると出てこないもんだな…なんか分からない事があったらケータイで調べられる弊害かな?

 ケータイのない頃はご近所や友達の家の電話番号もそらで覚えてたのになぁ…」


「?」


 聞き慣れない言葉に困惑顔のセシリーさん。

 組み合わせに悩んでいたら、何故か記憶力の減衰に悲観するおっさんあるあるになった。


 迷った末今回は下からバンズ下、パテ、タマネギorザワークラフト、肉汁(グレイビー)ソース、バンズ上にしてみた。今後チーズとかレタスが手に入ったらマニュアル化する事にしよう。

 

「よし、セシリーさんとマーちゃんの分は完成!! シューのも野菜抜きで一応出来たけど…狼にハンバーガー形態で出す意味ってあんま無さそうだな…」


「あ、運びますよ。マリア、お手伝いして」


「はーい♪ これがハンバーガー!? おっきいね♪」


「ありがとうございます。俺とブランの分もすぐ作っちゃうんで、ちょっとだけ待っててもらえますか」


「分かりました。でも、急いで下さいね。待ちきれないと食べられちゃいますよ♪」


 セシリーさんとマーちゃんが台所からテーブルに料理を運んでくれる。シューのも足元に置いてくれた…あ!!


「ガウウ♪」『たべる♪』


「シュー、『待て』だ!! 俺のとブランの分をちゃっちゃと作っちゃうから『待て』だぞ」


「キャウン!?」『そんな!?』


「ガウガウ…ウガウゥ…」『しゅーねぇ…りーだーのいうことはぜったいです…まつです』


 ブラン、見張りを頼んだ。すぐ作っちゃうからな!! 昔の家庭じゃないけど、やっぱりこういうのは全員揃って食べないとだからな…なんだか亭主関白っぽい考え方かな?


 2回目でパテの量も少ないのですぐに完成…っと言っても野菜系が無いので焼ければ完成である。


「セシリーさん、マーちゃんお待たせ~、食べてみましょうか♪ シュー、ブラン、『よし』だ♪」


「やったぁ~♪」


「ふふ」


「ガウウ♪」


「ガウガウ♪」


 皆それぞれに食べ始める…かと思いきや、母娘達はアイバーをじっと見つめてきた。

 やだなあ♪視線が熱いぜ…などと思う訳もなく、食べ方がいまいち分からなかったからだとすぐに理解できたさ。

 なので、見本がてらハンバーガーを水平に持ってかぶりついた。垂直にして食べるのもいいが、あれは包み紙があってできる食べ方だと思う。


「なるほど、そうやって食べるんですね…はむ」


「おててでよこをもってぇ…はむ」


 やはり親子なのか食べる姿はどことなく似ている。


「!! 美味しいです!! 昨日食べたハンバーグも美味しかったですけど、パンと野菜が一緒なのもいいですね」


 セシリーさんの評価は悪くない。


「おいしいけど…おやさいいらない…」


 マーちゃんには野菜(タマネギ)が不評だったようだ。


「ハグッ、ハグッ♪」


「ハゥハゥ♪」


 シューはがっついてるし、ブランは上のバンズから順番に食べていっている…やはりハンバーガーの形状にした意味は無かったようだ。美味しそうなのは伝わってくるのでよしとしよう。

 さて、俺自身も味わってみないとな。


 先程は食べ方指南でかぶりついたが、今度はよく味わうよう意識してかぶりついた。


「…ウンウン…オーク肉だったからかポーク的なバーガーを思い起こさせる味だな…今日は塩味オンリーだけど、これに合う味でこの世界でも調達可能そうな食材…」


 実際に食べてみて売り物にする際の味付けの方向性を考えてみるアイバー。

 昨日も食べているのだが、実際にパンと合わせてみるとまた違った面もみえてくる気もする…などと考えながら食べていると周りはすでに食べ終えており、気付けば一番最後で周りから見つめられていた。特にマーちゃんとシューからの視線がスゴい。

 アイバーとしては野菜が挟んであるバーガーと食べ比べもしてみたかったのだが、後の祭りだ。じっと見られているのも気まずいので大口を開けて食べてしまった。


「ああ…」

「ガウ…」

 

 どうやらおこぼれを期待していた1人と1匹だったようで、ため息が出たが気にしない。


「ごちそうさま。さて、食べてみてどうでした?」


「ハンバーグ、おいしかったです♪ もっとたべたい!!」


「ガウ♪」『おにくおいしい♪』


「ガウガウ」『おにくおいしいです』


 子供&従魔組が肉=ハンバーグの美味しさを訴えてくる。

 うん、まあそうなるか…そんな中、大人で女性であるセシリーさんの意見は、


「美味しかったですけど、お肉だけじゃなくてお野菜のお陰で少しサッパリ食べられた気がしました。

 昨日のハンバーグは美味しかったですけど、私には肉が強すぎたと言うか…」


 セシリーさんが食べてたのはザワークラフト入りだったから、酸っぱさで肉の油分が中和されたのかもしれない。感覚的には大根おろしソースみたいな感じだろうか?


「どうですかね? 売り物にはなると思いますか? これが銅貨数枚で食べられるとしたら買います!?」


「それは…買うと思います」


 よし、セシリーさんの金銭感覚がそう思うのならなんとかなる気がしてきた。貧困に耐えてきた実績があるお母さんだからな。


「子供達には肉が好評、セシリーさんは野菜の付け合わせの魅力も分かってくれたみたいですね♪

 俺も食べてみてもっと美味しくなりそうな組み合わせを思い付いたので、これから村のお店や市場を回って材料を揃えにいきましょう。

 そしたらここで試作品を作ってメニュー作りです」


 次は市場の実態調査だ!!


 




お読みいただきありがとうございましたm(__)m


何バーガーにしようかな?(ノ´∀`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ