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第六十九話 一緒にポテトもいかが?

新年度初投稿です。


どうか見捨てずにお付き合い下さい( ;∀;)

「昨日ギルドに持ってきてもらったサーペントなんだがね…ゴーシュが言うにはつい最近出産した跡があったそうだ。

 今後この付近でもサーペントを見かけるようになるかもしれないので気を付けてくれとの事だ。アイバーくんなら心配ないと思うがな」


「なるほど、あの蛇の子供が…って、蛇って1度にどれくらい子供が出来るものなんですかね?」


「う~ん、私も詳しくはないが…卵を産むんだったか? 4~5匹じゃないか?」


 ギルド長がそれでいいのか?と思ったが口には出さないおっさんことアイバー。本人も蛇の産卵については詳しくはない。

 思い出すのは某恐竜映画の細長い卵や某エジプト冒険映画の蛇がウジャウジャいた石室の罠だったが、どちらも参考にならなかった。

 人間の記憶とは似たようで違った記憶に繋がってしまうものだと知ったアイバーだった。


「まあ、気を付けます。ある意味魔物狩りの対象が増えてよかったかもしれませんね♪」


「…コラ、そういう態度は感心できないぞ。

 君や他の冒険者にとっては金づるかもしれないが、村人等の一般の人達にとっては脅威が増えた、という事でもあるんだからな。

 …というわけで今まで以上に魔物狩りに精を出してくれたまえ」


 軽口を叩いたら叱られてしまった。

 確かに不謹慎だったかもしれないが、コレばっかりは個人が頑張っても大した違いはないと思うので、前から思っていたことも含めて反論しておこうと思うアイバー。


「でも、それなら開拓・開墾の人夫扱いしている冒険者のノルマを減らしてやった方がいい気がしますが…冒険者の性に合っていそうな仕事ですし、質より量の人海戦術ですよ。

 それに警備隊の人達って、いわゆる軍人な訳でしょ? そういう規律でまとまった人達でやった方が開墾とかは上手くいくんじゃないですかね?」


 冒険者が開墾に掛かりきりなのはどうにも違和感があるアイバーである。

 冒険者というのは一般的な職に就けなかった荒くれ者や何らかの事情を抱えた訳ありの人間のイメージが強い。そんな連中に農業や林業の真似事をさせるよりは魔物や害獣退治に専念させて、仮にも公の存在である警備隊等にそういった仕事を任せる方がしっくりくる気がした。

 公共事業的な感覚から出た日本人的な意見である。あと、古代ローマの兵隊さんは陣地作りとかで建築や道路整備のプロだなんてマンガで読んだ事もある。


「………残念ながらそこはサイアン家の意向なので私にはどうにもできん。

 だが聞いていると納得出来る部分もあるな…今度代官達に進言してみるか…ダメ元だがな」


 それじゃ、と手を上げて去っていくギルド長。

 余計な口ごたえをしてしまったかな、と思いつつも手を振って見送る。思わぬ遭遇だったがギルド長との新密度が少し上がった気がする。この世界がギャルゲーだったらまだまだ個別ルートへは入れないだろうけど。


「さて、朝の散歩というには少し長めになったかな? 20分以上は歩いて脂肪の燃焼も始まってるだろうから、そろそろ1度宿に戻るか。

 シュー、ブラン!! 帰るよ」


「ガウ♪」


「ガウガウ♪」


 そこらで走り回っている従魔達に声をかけて、来た道を戻る。

 出た時に感じられた朝の日差しはすっかり鳴りを潜め昼間の日差しになっていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 1度宿屋に戻り、朝の仕事に一段落つけていた宿屋ファミリーと話をしてからマーちゃん()に向かうアイバー。宿を出るとき一悶着あったがそれはまた後ほど。


 昨晩暗い中帰った道だが迷わずに到着する事が出来た。

 昨日は暗くなりはじめていたのと状況が状況だったので外観をじっくり見る機会がなかったのだが、こじんまりとはしているが新築である。

 この村自体半年前に出来たモノらしいので、建物は皆新築なのだろう。


「こんにちは、まぁ~ちゃん!! あ~そ~ぼ♪」


 小学校低学年風にちょっとふざけて呼び掛けるアイバー。


「はーい♪」


 バタンと勢いよく開けられた扉から爆走してくるマーちゃんことマリアちゃん…マーちゃんでいいや。


「いらっしゃい♪ 今日も朝にハンバーグ食べたの!! 美味しかったぁ♪」


「それは良かった♪ お母さんいるかい!?」


「うん♪ ママ、お(うち)の中。こっち!!」


 幼女に手を引かれるアイバー。

 この年頃の子供に対しては苦手意識が強いが、接してみると案外可愛いものである。まあ、離れるとまた苦手意識が再燃してしまうモノだが。


「ママ~、オジちゃん来たよ~」


「おじゃまします」


「あ、ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」


 家の中に入るとマーちゃんの母親であるセシリーさんがお茶の用意をしてくれていた。

 テーブルにつき、お茶をいただいて一呼吸。ミントティーっぽい風味がした。

 あれ? そういえば、村にたどり着く前に採ったミントってどうしたっけ?


「その、昨晩は…ありがとうございました。落ち着いて考えてみたら、その、何てことを…」


 昨晩迫られたからか多少気まずい気もするが、顔には出さないように気を付ける。

 しかしまあ、こういうのって何て答えるのが正解なんだろう? 人生経験の浅い元アラフォーには荷が重いので、軽く流して本題にいこう。


「昨日の事はお互い忘れましょう…あー、全部忘れちゃうとお手伝いしますって約束も無くなっちゃうから、都合の悪いとこだけ」


「そ、そう…ですね」


「? ママもオジちゃんもなに言ってるの?」


「大人の話だよ、大人になればマーちゃんもじきにわかるはずさ」


「? おとなはすぐそういうこと言うねぇ~しゅーちゃん、ぶーちゃん」


「ガウウ」


「ガウウガウウ、ウガウゥ」『なにいってるかわからないですが、なんかどういです』


 セシリーの隣に座っているマーちゃんはごまかされたのが分かったらしく、首をかしげた後テーブル下で丸まっている従魔達に声をかけた。

 俺、従魔達にごまかしたりした事あったかな? 子供ということで共感する所があったのかもしれない。


「ん、んん!! ともかく、真面目な話をしましょう。セシリーさん」


「そ、そうですね。えっと、(うち)が貧しいということは昨日話した通りです…」


「自分の畑が無いから作物は採れない、頼みの余所(よそ)での畑仕事も少なくなって給金も安くなってしまっている…という事ですよね!?」


「…はい」


「で、ジリ貧になってしまったセシリーさんは別口(しょうふ)のお仕事を探しにいったけど、断られてしまった…と…」


「………」


 コクリと頷き押し黙るセシリーさん。

 なんか現状の確認をしてたんだけど、振り返ってみると責めてるとかいじめてるみたいな言い方になってしまった…俺の会話術の下手さが憎い。

 だが決していじめようとしている訳ではなくて、俺なりにセシリーさんの現状把握をしたかっただけなんです。だからママがいじめられたと思って睨まないで、マーちゃん。

 失敗の考察と反省は必要なモノなの。


「…別口のお仕事を探しに行ったってことは、農業以外の仕事でもいいって思った訳ですよね?」


「…正直に言えば…そういった仕事しか考え付かなかったと言う気持ちでした。昨晩も言ったかもしれませんが、私は今まで畑仕事や家の中の仕事しかやったことがありませんでしたから…」


 他の職業に対する選択肢、それを想像をする余地が無かった事で性産業っていう極端な道を選んでしまったんだろうな。

 ある意味無知によって引き起こされた悲劇、その一歩手前だな。まあ、娼婦ってのも無くてはならない職業だと思うけど。


「…そういえば、この国には職業選択の自由ってあるんですか?」


 肝心な所を聞き忘れてた。

 農民はずっと農民でいなくちゃならない、とかのカースト制とか士農工商みたいな身分制度があったら俺の案は使えない。

 まあ、最近だと士農工商はなかったみたいな話だけども、俺らの小中時代は普通に習ってたもんな…時代が進むと教科書の中身も変わるってか。カースト制度はスクールカーストって言葉になって残ってるなあ。


「職業選択の自由、ですか? 多分、あると思います。

 けど…私達が住んでいたような農村では、そもそも選べる程仕事がありませんでした。

 それを嫌って、街に出ていく若い人達がいましたが…特に罰を受けるなんて事はなかったです」


「冒険者になるような人もいるわけですし、職を変えること自体は犯罪ではないと?」


「はい…ただ、奴隷に関しては職や住居の自由はなく、所有主の意向に従う事になっていますが…」


 奴隷階級あるんだ…不謹慎だけどファンタジー物の定番だよな。

 まあ、奴隷の境遇については置いておこう。この母娘(おやこ)は奴隷落ち寸前かもしれないが、まだ線は越えてないし越えさせないようにしないと。


「じゃあ、ともかくセシリーさんが農家から別の職に就く、というのに問題はないと」


「は、はい、問題は無い、です…」


 不安なのは分かる、がここは毅然とした態度で引っ張っていかないと!!


「では、俺が考えてきた案を伝えます。

 てっとり早いのは飲食の屋台です!! 売り物は昨日食べてもらったハンバーグをパンで挟んだハンバーガー!! こいつで一旗上げてみましょう!!」


 彼女達をクルーにして、異世界ファストフード王に俺はなる!!


 



お読みいただきありがとうございましたm(__)m


更新速度が亀の如し…現実の仕事が…

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