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第六十六話 ヲタクに愛は難しい

ハニトラ回。

「お願いします…浅ましいとは分かっていますが…」


 女性に迫られるという、ついぞ前生では出会わなかったシチュエーションに遭遇しているおっさんことアイバー。

 (肉体的には)歳上のお姉さんからのお誘いである。女教師や女上司好きのアイバーには悪くないシチュエーションではある。ガーターベルトやストッキング、エロ下着とかをつけていてくれれば尚良(なおよし)だった。


 だが悲しいかな…これが打算によるものだということはスキル《冷徹》さんによりマルっとお見通しだ。多分、肉体関係を持つことで俺から支援を引き出したいんだろうなぁ…

 だが、その手は食わん!! ガールズバーのランカー1位の色恋営業にだって屈しなかった鋼の精神力を見せてやる!!…いや、鋼は言い過ぎだな、ポリカーボネートくらいの精神力で。それなりに頑丈だけど、銃弾は防げませんぐらいの硬度だ。

 

「………あー、セシリーさん? ここまでしていただいて大変申し訳ありませんが…貴女を抱く気はないです」


 極めて平坦なリアクションで応じるアイバー。

 女性に恥をかかせてしまうのは申し訳ないと思うが、ここはキッパリと断る。

 すぐ隣の部屋には5歳児だっているし、まかり間違ってR-18のプロレスや相撲を見させる訳にもいかない。そんな事になったら伝説の『両親の愛し合っている行為』エピソードの語られる側になってしまう。親じゃないけど。

 据え膳食わぬは男の恥だと言うのなら、ここで食わぬのはおっさんの意地だ。


「え、ええ!?」


「ハイハイ、しっかり服着て!! ダメですよ、こういう事は本当に大事な人としてください!!」


「いや、ですから…」


 はだけた服を直し、緩んだ紐を締め直すアイバー。

 

『スキル《魅了耐性Lv1》を取得しました』


 おや? 思わぬところで思わぬスキルを得てしまった。


 呆気に取られたセシリーはなすがまま服を整えさせられた。セシリーからすれば『ちょっと、どういうこと? この年頃の男の子なんてヤりたい盛りでしょ!? ちょっと服をはだけさせて誘惑すれば向こうからガッついてくるもんじゃないの? 旦那はそうだったし!!』と過去の性行体験、もとい成功体験が通用しなくて唖然である。


「そういう見返りが無くても、2人の生活が良くなるように協力しますよ。なので、自棄(やけ)を起こさないようにして下さい」

 

 そう説得するが、これはアイバーの言い方も良くなかった。

 アイバーからすれば正直な気持ちなのだが、セシリーからすればなぜそこまでしてくれるのか理解ができない。無償の善意は時に警戒を招く。


「…そんなの信じられません。

 困ってる所に急に現れて、しかも無償で助けてくれる人なんて…なにか企んでるんじゃないか、後で何を言われるか、不安で仕方ないです…」

 

 今の心情を素直に吐露するセシリー、ソレを聞いて『確かになあ』と納得するアイバー。


「あ~、なるほど…一理ありますね…」


「それで、今私が差し出せるものといったら身体(コレ)ぐらいしか…」


 前生でもギブアンドテイクというのは普通の考えだった。コンビニのゴミ箱にペットボトルや弁当の容器を捨てたら、必ず特保のお茶とか買ってたからな…そうすることで後ろめたい気持ちを解消していたなあ。

 フム…こちらからも何か要求した方がスムーズに話が進むかもしれない。相手の心理的負担を軽くする為にも。


 とはいえ何を要求するべきだろう? 担保になるものが思いつかない…セシリーさんがやったように身体を、というのが確かに一番手っ取り早いかもだけど…でもなあ……あ、そうだ、


「なら、ちょっと協力して欲しい事があって。それに協力して貰えませんか?」


「はあ? それは………どのような事ですか?」


「実はですね、俺《魔法》を広めていきたいと思っていたんです。

 《魔法》を教えるので、それに親子2人で協力して下さい!!」


「え!? 魔法…ですか?」


「正確には《魔法》スキルですね。ステータス閲覧とかしたことあるでしょう?」


 魔法が普及していって欲しいというのはアイバーの本心だし、親子にとっても覚えて損は無いだろう。 まさにWin-Winな関係だ。

 

「で、でも魔法を習うのってお金がかかるんじゃ…」


「こちらから頼むので料金はいただきません。それに《魔法》覚えると農業にも色々便利だと思いますよ♪ 例えば…」


 ポルカに教えたような《土魔法》の農業への応用方法を伝えると少し興味を覚えてくれたようだった。まだ机上の空論で、試した事のない使い方もあるので早目に試しておかないとだな。


「…私はいいですが…マリアは、どうして?」


 スキルの習得に大人と子供に違いがあるのか調べるのにもちょうどいい比較対象だから、と伝えるとよく分かっていないようだった。アイバー的にはちょっとした研究レポートの課題みたいな感じだ。

 もう1つ、王女様メイカーというか光源氏計画というか、小さい頃から数多くスキルを覚えさせて育てたらどうなるか?という個人的興味による提案でもある。ゆくゆくはパーティメンバー候補に…なんて事は黙っておこう。

 

「…話してみますが…」


「無理強いはしないので、マーちゃんが嫌がったらやめます。そういう条件で」


「それなら…まあ」


 と、なんとか交渉を押しきる事が出来た。ハニートラップが出てきた時にはどうなる事かと思ったがなんとかまとまったな。

 

『スキル《交渉Lv1》を取得しました』


 天の声さんから新スキルの習得の報告がきた。今日は戦闘系だけじゃなく、耐性系と内政系のスキルを覚えられたな。

 さて、話をまとめてスキルを覚えたところでそろそろ切り上げよう。


 明日また来る事を伝え、帰り支度をするとセシリーさんに今日は泊まっていって、と言われたが断らせてもらった。

 夜も遅いので今更かもしれないが、未亡人の家にお泊まりしたという事実が知れたら色々想像されてしまいそうだ。それに、この家に急な泊まり客用の準備があるとは思えない。


『シュー、ブラン、帰るよ。マーちゃん起こさないようにそっとベッドから出ておいで』


 念話で伝えるとマーちゃんの寝室らしき部屋から2匹とも出てきた。うたた寝していたらしく眠そうな思念が伝わってくる。

 今日は何回もおねむのところをゴメンなぁ…


「じゃあ今日はこれで失礼します」


「はい…本当によろしいんですか? もう暗いですよ…何か灯りをお持ちいただければいいんですが…」


 松明やランプがあればいいのだが、この生活ギリギリの家にソレを期待するのは無理だろう。よしんぼあったとしても貴重な燃料の備蓄を消費させるのは忍びない。


「大丈夫ですよ。月明かりもありますし、《魔法》も使えますから♪」


 清湖亭までの道のりなら、《光魔法》でなんとかなるだろう。


 また明日伺う旨を伝えたら、明日は1日家にいるとの事なので、昼頃に来ますと約束した。アイバーも1~2日オフにする予定だったので問題はない。


「それじゃ、マーちゃんによろしく」


「ありがとうございました」


 家を出てしばらく歩いても玄関で頭を下げているセシリーさんの姿が見えた。人家の僅かな灯りでも闇の中では見通す助けになるものだ。

 見送りを背にしばらく歩くと、やがて月明かり以外の光源がなくなる。《光魔法》の《光操作(ライトムーブ)》を使ってみると、手元に携帯のバックライトぐらいの光量が(とも)った。


「夜の野外で使うとこんなもんか…月明かりや星明かりを集めてるって事だもんな。早く《光魔法Lv2》覚えよ」


 ふと見上げると夜空には満天の星空が広がっている。


「そう言えばこの世界にきて、夜空を見上げるのって初めてかも」


 転生したての森の中ではすぐ木の穴に入って寝てたし、村にきてからは暗くなる前に宿に泊まって外に出る機会がなかったのだ。


「星座が見覚えなくて世界の違いを実感するなんて話を読んだことがある気がするけど…俺には違いがわからん。

 ロマンチックになりたい…」

 

 しみじみ呟いた後、取り合えず道の輪郭ぐらいは分かるので中心街を目指して歩く。従魔達は夜目が利くのか、問題なくついてきているようだ。


『従魔がスキル《暗視》を取得しました』


『従魔がスキル《暗視》を取得しました』


 お、シュー達もスキル覚えたかぁ…元々持っててもおかしくないスキルだね♪

 

 夜の散歩を楽しみながら歩くが、夜に出掛ける人もいないのか誰ともスレ違う事なく清湖亭に到着した。鍵は開いているようで扉は抵抗なく開く。


「あら、おかえり~。今日は帰って来ないかと思ってたよ」


 今日の食堂の営業は終わっているのか最低限の灯り以外は落とされた宿屋入口近くの受付に看板娘二女ミナが頬杖をついて待機していた。

 気にした事はなかったが、毎日夜中の不寝番を行っているのだろうか?


「アンタで部屋を取ってるお客さんは最後だね。当たり前だけど食事はないよ。ホイ、鍵」


 アイバーに知るよしはないが、今は夜の22時程だ。結構長い間マーちゃん宅にお邪魔していた。


「待っててくれたんですか!?」


「一応、続けて部屋を取ってくれてるお客さんが戻って来ないうちはね。

 日が替わったら流石に閉めちゃうから、これから気を付けてね」


「なんかすみません…」


 軽くアクビをしているミナを見て頭を下げる。お陰で閉め出されなくてすんだ訳だ。感謝感謝。


「どーいたしまして、少ししたら私も寝るから。んじゃ、お休み♪」


 いつもの部屋に戻り、装備を外すとすぐに布団に入って横になる。今日はゴブリン狩りよサーペント戦に加え家庭相談も行ったので、いつもより疲れているのだ。

 ようやく1日が終わった、と思いながら枕に顔を埋める。


「…明日、朝シャワーする」


 布団に入ってMPを使いきると、すぐに寝息をたてて夢の世界に旅立ったアイバーであった。


 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



【本日終了時のステータス】



【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】武芸者 ※異世界転生者 初級魔術師 調教師

【 L V 】16(+1)

【 H P 】388/410(+22)

【 M P 】0/276(+15)

【 STR 】236(+7)

【 VIT 】158(+5)

【 INT 】330(+4)

【 MIN 】117(+4)

【 DEX 】147(+3)

【 AGI 】265(+6)

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《身体強化Lv1》new《体術Lv2》《短剣術Lv1》《剣術Lv1》《大剣術Lv1》《刀術Lv3》《爪術Lv1》《棍術Lv1》《杖術Lv1》《槍術Lv1》new《鎚術Lv1》《斧術Lv1》《投擲Lv3》《回復魔法Lv3》《火魔法Lv1》《水魔法Lv1》《風魔法Lv1》《土魔法Lv3》《光魔法Lv1》《闇魔法Lv2》《HP自動回復Lv1》new《MP自動回復Lv3》《予測Lv1》《統率Lv1》 《連携Lv1》《狂化Lv4》《魅了耐性Lv1》new《孤独耐性Lv6》《毒耐性Lv2》《気配察知Lv1》《冷徹》《交渉Lv1》new《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》《過食Lv3》《吸収Lv3》《無詠唱》

【特典スキル】《武芸の才》《初級魔術の才》

※《武芸の才》によりレベルアップ時のHPに+5、STR・VIT・AGIに+1

 《初級魔術の才》によりレベルアップ時のMPに+5、INT・MIN・DEXに+1



【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】12(+1)

【 H P 】114/117(+3)

【 M P 】45/46(+1)

【 STR 】100(+2)

【 VIT 】95(+4)

【 INT 】94(+1)

【 MIN 】106(+3)

【 DEX 】133(+2)

【 AGI 】158(+3)

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《連携Lv1》《隠密Lv1》《暗視》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv3》new



【 名 前 】ブラン

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】9(+5)

【 H P 】87/107(+20)

【 M P 】3/72(+15)

【 STR 】86(+10)

【 VIT 】79(+15)

【 INT 】133(+15)

【 MIN 】80(+10)

【 DEX 】131(+25)

【 AGI 】124(+10)

【 スキル 】《鑑定》《噛み付きLv1》《咆哮Lv1》《風魔法Lv1》《連携Lv1》《暗視》new《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》 《孤独耐性Lv1》《毒耐性Lv1》《採取Lv3》


お読みいただきありがとうございましたm(__)m

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