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第五十五話 飯テロはヤバい

修行パート就寝前編です。

「んじゃ、戻ろうか」


「ガウ」


「ガウガウ」


 散らばっていた武器をボロ袋にしまい、立ち上がるおっさんことアイバーとその従魔達。

 夕方近くになってきたため、修行を切り上げて村の北の森からご帰還である。


 茶色い毛皮の子狼シューが先導し、アイバーとブランが並んで歩く。


「今日の収穫はゴブリン3匹とワイルドボア1匹、採取物多数か…採集に関してはブランに頼りきりだ。ありがと、ブラン」


 足元に並んで歩く黄色い毛皮の子狼ブランは《鑑定》と《採取Lv3》のスキルを持っている為、調達係として重宝している。


「ガウガウ♪」『ほめられたです♪』


「ガウ…」


「もちろんシューも助かってる。俺より《気配察知》のレベルが高いから、まず不意打ちは食らわないもんな。

 安心して狩りや修行が出来るよ♪」


「ガウウ♪」


 よかった、2匹とも尻尾フリフリしてるから機嫌良くなったようだ。

 森に入って直ぐの所で修行していたので、ちょっと歩くと森が開ける。


 周囲を森に囲まれ、多少の起伏があるものの麦畑や野菜を作っているらしき畝が見える…田園風景というヤツが少しばかり郷愁というものを思い起こさせる。


「…故郷は山ばかりだった、作物も麦じゃなくて米だった。でも、田舎って所はどことなく似るもんだなぁ…似てるけど違う…か。

 ふるさとは遠きにありて思ふもの…室生犀星だ…」


 何となく、もう帰れないんだなという想いが胸に去来する。


「ガウ?」


「ガウガウ!?」


 主人と従魔間の繋がりがある為、郷愁が伝わってしまったようだ。足元にチョコンとお座りしながら、つぶらな瞳で見上げてくる2匹。向こうから心配そうな感情が伝わってきた。


「心配させてごめんな。お家に帰ろう、っつっても宿屋に1ヶ月契約だからマンスリーマンション的なものだけど」


 たまに、こうやって懐かしんじゃうんだろうな、と思う。基本的に甘ったれな自分なのだ。

 でも、


「よっし!! しんみりタイムはここまで!!

 今はお前ら、養わなきゃいけない家族がいるからな。一家の大黒柱だわ♪ 日本の家族持ちのお父さんもこうやって頑張り力を補充してるのかもな!!」


 しんみりからちょっと回復。

 今日の収穫を現金に換えるためギルドに向かうアイバー。

 村の北側から、繁華街らしいギルドや教会のある区画への道を進んで行く。幾つかの農民らしき人たちが畑や住居で何かの仕事をしているのを見かける。見てる分には和やかな雰囲気だ。

 井戸端会議をしているご婦人の中に、見覚えのある肉串売りのオバちゃんがいた。この辺りにお住まいなのだろうか?


 周囲の見物を行いながら歩くこと数10分、ギルドに入ると20人程の冒険者が列をなしていた。


「なんか混んでるな…先に解体所に行くか」


 ギルド内が混んでいる為、外から回って解体所に行くアイバー。シューとブランは建物の外で待っていてもらう事にした。


「失礼します!! ゴーシュさん」


「おう、何か捕れたか?」


「今日出せるのはワイルドボアだけです。後はゴブリンだけでした。

 今日は肉も引き取って欲しいので出したら置いていきます。カウンターに出しちゃっていいですか?」


 頷いてくれたので、ボロ袋からカウンターにワイルドボアを出す。

 マグロ解体ショーみたいだ。


「よし、血抜きは済んでるな。カードとゴブリンの耳や魔石があるなら出せ。常時依頼はここで受け付けてやる。

 向こうが混んでるからこっちに来たんだろう?」


 出来る(おとこ)は理解も早いぜ!! 

 ゴブリンの右耳と薬草30本を出すアイバー。ついでにあの混雑がなんなのかも聞いてみる。


「あの混み様はなんなんですか?」


「『街道』とその『護衛』を受けた連中が戻ってきたんだ。仕事の性質上、同じ時間に終わるからな。

 ほれ、常時依頼のFとEを3つづつだな、銅貨39枚。ワイルドボアは毛皮15、肉30って所だがおまけして51枚にしておいてやる。計銅貨90枚だ」


 見ただけで毛皮や中の肉の値段が分かるなんてスゴいなー、と感心するアイバー。

 あと、おまけとか上乗せしてくれるとやっぱり嬉しい♪ コンビニなんかは絶対してくれないけど、田舎の個人商店なんかはおまけが当たり前だったな。


「ありがとうございます」


 宿代1泊分近くにはなるからな。オークジェネラルの時と比べれば微々たる収入かもだけど、生活とはこういう細かい収入の積み重ねだ。

 前生の給与を出勤日で割ると、1日1万○千円だったからなあ…本日は少し少な目か。


「…また来い」


 報酬を受け取り外に出るとシューとブランがお座りして待っていた。


「ガウ」


「ガウガウ」


「忠犬ならぬ忠狼だな。

 さて、見知らぬ冒険者に絡まれるテンプレにも憧れないでもないが、実際やられると面倒そうなイベントだから回避して清湖亭に戻ろう」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ただいま~」


「おや、お早いお帰りだね。儲かったのかい?」


 ようやく日が傾いてきた頃に宿屋に戻ると、宿屋の肝っ玉カアちゃん、女将のモナさんが迎えてくれた。料理の件や長期宿泊の件で、宿屋一家全員に顔を覚えられているアイバー。

 これから夕方の営業が始まるようだ。


「まあソコソコです。ちょっと早いですけど夕飯お願いしていいですか? あ、1品何か適当に追加で」


「あいよ♪ 今日のメインは一口トンカツだよ。無料提供の夕食にだけ出してんだ♪ 亭主が『金を取るにはもう少し…』ってね」


 ハーゲンのオヤジさん、揚げ物練習してるんだな。流石プロ。俺の素人料理より美味しくなるだろう。

 テーブルについたアイバーに、しばらくすると女将さんが料理を運んできてくれた。従魔の分も一緒だ。 


「ほい、お待たせ♪ 追加は塩漬け肉とジャガイモの煮物さ。ところでアンタ、新しい料理のアイデアはないのかい?」


 唐揚げやトンカツの件で貢献したせいか、宿屋一家からよくこういった催促をうける。


「まあ、色々具材を変えたりして試行錯誤してみてください。ハーゲンさんだって一端の料理人なんですから、調理法で色々思い付く事もあるでしょうし」


 ぶっちゃけメンドクサイしな♪


「そうかねぇ? ま、旦那もようやく満足いく出来になってきたそうだし、目玉料理が増えたって事で良しとしようかね♪ 

 あ、家の娘なんだけどメーナなんてどう!? 歳も近いでしょ♪」


「あ~そういうのはまだちょっと…」


 しばらく嫁取り話に付き合わされたが、食堂が混雑して来るとその暇もなくなったようで給仕に回っていった女将さん。


 食事を手早く済ませ、ミナさんやメーナとも軽く挨拶してから部屋に戻るアイバー。


「さーて、夕飯直後、お腹はソコソコ満たされてる……さて食うか!!」


 意味不明な言動をするアイバー。

 ベッドに腰かけて、ボロ袋から毒草や薬草、魔力草を取り出す。


「昼の再現だけど、今回はお腹破裂するくらい食べるぞ!! 

 森じゃ腹一杯になったら動きづらくなってしまうからな…魔物に襲われる心配もないからMPがなくなっても問題なし。森では万が一に備えて、MP半分ぐらいは残してたからな。

 夜のフードファイトだ!!」


 毒草を食べてHPを減らし、残っているMPで《解毒(キュアポイズン)》と《治癒(ミドルヒール)》を使う。MPが切れてきたら魔力草を食べる。

 元々満たされていたお腹に生の植物が詰め込まれていく。


「まるで9秒しか潜れない奴が息継ぎをしようとしたら、海中から足をグッと掴まれたような感覚ゥ…ちょっと違う?

 …表面張力ギリギリのコップにコインを入れ続けて、今にも溢れそうな所に脱脂綿でカサを増しているような感覚だ!!」


 要するに腹一杯で吐きそう、と言うことだ。

 それでもアイバーは口に草を入れ続ける。時に限界がきて手が止まるがしばらくするとまた口に入れる。過食症のようだが違う。アイバーは決して吐き戻さない。

 やがて…


『スキル《過食Lv3》を取得しました』


『スキル《吸収Lv3》を取得しました』


 《過食》と《吸収》、どちらもあまり役に立たなそうなスキル。

 だが、《過食》は魔法の訓練時に魔力草等を沢山食べられれば効率が上がるだろうということ、《吸収》に関しては取得前に比べ、薬草や魔力草を食べた際の回復量が若干増えている気がした為だ。


「神様のスキル選択の時には《強奪系》スキルのミスリード先だったが、こういう効果があるとは誤算だった。《回復促進》的な効果だな…にしても、もう、食べられないデブ~…」


 苦しいぐらいの満腹感の中、何とかMPを0にして眠りにつくアイバー。


 余談だが満腹で眠ると夜中に吐き気や胸焼け、それによる逆流性食道炎等を引き起こす為、就寝前の食事は避けた方が無難である。 

 ちなみにこの夜のアイバーは、吐き気で小刻みに目が覚めてしまいMPが回復しきらなかった為、日課の魔法の訓練が出来なかった。

 

 今後、就寝前暴食系の無茶はやめておこうと思ったアイバーである。


 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




【本日終了時のステータス】



【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】武芸者 ※異世界転生者 初級魔術師 調教師

【 L V 】15

【 H P 】388/388(+20)

【 M P 】0/261

【 STR 】229(+7)

【 VIT 】153(+7)

【 INT 】326

【 MIN 】113

【 DEX 】144

【 AGI 】259(+5)

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《短剣術Lv1》new《剣術Lv1》new《大剣術Lv1》new《刀術Lv3》《爪術Lv1》new《棍術Lv1》new《杖術Lv1》new《鎚術Lv1》new《斧術Lv1》《投擲Lv3》《回復魔法Lv3》《火魔法Lv1》《水魔法Lv1》《風魔法Lv1》《土魔法Lv3》《光魔法Lv1》《闇魔法Lv2》《MP自動回復Lv3》《予測Lv1》new《統率Lv1》 《連携Lv1》new《狂化Lv4》《孤独耐性Lv6》《毒耐性Lv2》new《気配察知Lv1》new《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》《過食Lv3》new《吸収Lv3》new《無詠唱》

【特典スキル】《武芸の才》new《初級魔術の才》

※STR・VITの+2は訓練時に上昇

 その他は《武芸の才》取得時のボーナス



【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】11

【 H P 】114/114

【 M P 】45/45

【 STR 】98

【 VIT 】91

【 INT 】93

【 MIN 】103

【 DEX 】131

【 AGI 】155

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《連携Lv1》new《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv2》





【 名 前 】ブラン

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】4(+2)

【 H P 】79/87(+8)

【 M P 】12/57(+6)

【 STR 】76(+4)

【 VIT 】64(+6)

【 INT 】118(+6)

【 MIN 】70(+4)

【 DEX 】106(+10)

【 AGI 】114(+4)

【 スキル 】《鑑定》《噛み付きLv1》《咆哮Lv1》《連携Lv1》new《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》 《孤独耐性Lv1》《毒耐性Lv1》《採取Lv3》





お読みいただきありがとうございましたm(__)m


夜しかやってないラーメン屋って旨いですよね♪

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