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第五十話 ペイさせてやんよ

魔法講習会回です。

「お、本日の功労者のご帰還だな」


「お疲れ様~」


「どこいってたニャ?」


「ウップ…アイバーを見ると、吐き気がするですぅ~」


 マーちゃんと別れた後、少し村を見て回ってから常宿の清湖亭に戻ったおっさんことアイバー。

 昼間に一緒に働いていた面々は先に戻っていたようで、皆平服に着替えて早目の夕食をとっていた。


「そっちこそお疲れ、あれからどうだったの?」


「ゴブリン6匹と毒消し草4束分ニャ」


「まあ、久々の戦闘訓練って感じだったわね…そこんところも聞かせたいから座んなさいよ♪」


 ミゼットにテーブルに誘われたが、先に部屋に荷物等を置いてくると伝えるアイバー。軽くシャワーを浴びたいところだが、寝る前でいいと思い直ぐに食堂へ戻った。

 シューとブランもトコトコと足元についてくる。


「お待たせ」


「早いな。特別室に泊まっているというから、一浴びして来るかと思ったぞ?」


「人を待たせてると思うとくつろげなくてね。小心者なんだよ。

 メーナ、夕食お願い。従魔用のも2つ」


「はーい♪ 直ぐお持ちしますね」


 変態(マーソン)からの質問に軽く答えて椅子に座る。宿屋の3女メーナが給仕をしていたのでついでに夕食を頼んだ。


「で、ゴブリン6匹と毒消し草4束だっけ? 10の6と、5の4だから…80割る4で、1人銅貨20枚の稼ぎか」


「……計算早いですぅ」


「確かにそうだが…おぬし、算術も出来るのか?」


 テーブルの面々が感心したような表情をアイバーに向ける。どうやらこの世界では、四則演算の暗算だけでも結構なモノのようだ。

 ムフフ♪ 頭いい優越感♪


「大したことないよ、それよりそれってどうなの? けっこう儲かってるの?」


 冒険者の稼ぎというものが分からない為の質問だ。他者と収入を比較するというのもどうなのか、と思わなくもなかったがこの世界の平均所得的なモノを知る事も必要だろう。


「ん~、1時間程度の狩りにしては、それなりってところかな? 4人いたからゴブリン3匹の群れでも危なげなかったし。それを2回と、湖岸で毒消し草採取。地味だったけど、久々に冒険者した~って感じだったわよ♪」


「連日、木こりと農家と時々街道作りだったですぅ…」


「そうだったニャ~、でも今日は『伐採』で銀貨2枚ニャ♪ 上々ニャ~♪」


「確かにな。いつもなら、ゴブリンがオークであってくれれば…等と考えてしまうモノだが、銀貨2枚を稼いであると思えば焦り等は無かったな♪

 懐に余裕があるという事は良いものだ」


 おおよそだけど日給2万円…約4~5時間の労働でこれなら大分よさげだ。


「そっかぁ。オークなら【常時依頼】だけじゃなくて肉とかの素材がとれるもんな。睾丸も良い値段だったもん」


 4匹の皮と睾丸で銀貨2,5枚ぐらい、肉は現物で受け取りだったから、オークを狩れて全部持ち帰れれば銀貨1枚近くにはなりそうだ。

 俺の場合、アイテムボックス持ちだからいいけど、普通の冒険者は持ち帰るのに苦労しそうだ。


「お話し中ごめんなさい…アイバー、お待たせ。今日はオーク肉の炙り焼きよ♪ 狼ちゃん達も同じだけど、熱いから気をつけてね♪」


 話が盛り上がっているところにメーナが夕食を運んで来てくれた。パンとスープ、メインに豚の厚切り肉だ。焦げ目のついた表面、ジュウジュウ跳ねる脂が旨そうだ。


「ウニャ、ワタシ達のよりおっきい気がするニャ」


「このお肉の提供者なので、出資者サービスです♪ 皆さんも美味しそうな食材があったら(うち)に卸して下さいね♪ 

 …はーい、少々お待ちを」


 別テーブルに呼ばれたメーナを見ながら、なるほど冒険者から直接仕入れたりもするのか、と思ったアイバー。


「あ、食べながらでいいんですけどぉ…魔法の件はどうなったんですぅ?」


 ナイス質問だポルカちゃん!!


 プライベートではコミュ症気味なおっさんは自分から話を振るのが苦手だった。内心では食べ終わったら言うぞ、言うぞと思っていたのだが渡りに船なポルカの問い掛けだ。仕事面だともうちょっとマシだったのだが。


「いただきます。

 うん、その件だけど教える分には特に問題は無いってさ。…でも教えるなら少なくてもいいから、お金は取れってさ」


「私もそれが良いと思いますぅ…魔術師としては無闇に魔法が広がってしまうのは…どうもぉ…」


 魔術師の矜持(プライド)ってヤツだろうか?

 自分は高い金出したのに他の人は無料(ただ)で、となったら釈然としないだろう。苦労して司法試験に受かったのに、『来年から希望者は誰でもなれまーす』ってなるみたいな感じかな。


「金額なんだけどさ、俺は大銅貨1枚で受けようと思ってる。その代わり、教えることは最低限って感じでね」


「それはぁ…いえ、アイバーがそうしたいなら止めませんがぁ…」


 ポルカの反応を見ると安いんだな、と感じたが魔法は広まった方が色々便利だなと思っているアイバーはその方向でいく事にする。


 とは言え誰彼構わずでも、押し付ける気もない。

『覚えた方が便利だよ』

『覚える気になったら教えるよ』

『教えられるのは初歩的な事だよ』

『これだけ掛かるけどいい?』

 といったスタンスでいくつもりだ。魔法の習い事、超初心者コース。


「で、どうする? ミゼット、リア、変態(マーソン)?」


 魔法初心者達、変態(マーソン)は《光魔法》を覚えているが、に問いかけるアイバー。


「私は覚えたい。《光魔法》を覚えたのも大分前であるしな。

 何よりアイバーの使い方を見て、今までとは違った魔法の使い方が見えた気がしている。ここは乗るべきだな」


 スッ、とテーブルに大銅貨を滑らせてくる変態(マーソン)。なかなか先見的な意見を言ってくれる奴だ。


「う~ん、変態(マーソン)みたいなハッキリしたものは無いけど、今の稼ぎが維持出来る可能性があるなら…大銅貨1枚…よし!!」


 ミゼットもパチンと大銅貨を出してくる。


「ワタシもやってみるニャ♪ 今は手持ちも多いニャ」


 リアも手の平に大銅貨をのせて差し出してくる。

 肉球は無いんだ…


「ありがとね。じゃあ早速…あ、覚えるのは《土魔法》でいい? 他に覚えたい!!ってのがあれば応相談だけど!?」


「私はそれで構わんぞ。分かりやすい使用例も見ているしな」


「私も」


「ウニャ…じゃあ私は《水魔法》がいいニャ♪」


「ん? なんで!?」


「ミゼットとポルカで火、風、土を覚えてるニャ。他の有名所だと水だけ覚えてないニャ」


 ………スマン、なんと言うか…侮ってた、リア。本能優先の天然・脳筋寄りのキャラクターのイメージがあったわ。

 見るとポルカとミゼットもポカーン顔をしていた。


「おぬしら…パーティメンバーをバカにしすぎでないか?」


「ウニャア、パーティー解散も検討する必要があるニャ…」


「「「アハハハ……」」」


 愛想笑いで誤魔化す3人、変態(マーソン)とリアは冷たい目だ。

 そそくさと教導の為の準備にかかるアイバー。


 食堂の隅にある小さな観葉植物の鉢、水を入れた木のコップ、手持ちのロウソク燭台をテーブルの上に置く。話ながら食べ終えていた夕食の食器も片付けてもらってある。

 シューとブランも食べ終わって、2匹丸まって寝ている。


「んじゃ、魔法の習得超初心者コースね。

 ミゼットと変態(マーソン)は《土操作(アースムーブ)》って鉢植えの土に向かって唱え続けて。

 リアは《水操作(ウォータームーブ)》ってコップの水に向かって唱え続けてね。以上」


 大分雑な説明をするアイバー。


「はあ? それだけ!?」


「……ああ、こんな事を《光魔法》の時にもやったな」


「《水操作(ウォータームーブ)》、《水操作》、…」


「あ、1回唱える毎にステータスを確認して、MPが3ぐらい減ってたら発動してるって事だから。MPが2以下になったら終了ね。

 これから先、MPに余裕があったらこれ続けて♪ 夜なんか、1回しっかり寝るとMP回復するから夜中に起きてもう1回MP使いきってから寝ると朝には回復してるからオススメだよ♪」


 大銅貨を払ってくれた3人に言ったつもりだったのだが、ポルカの方がフンフン頷いている。


「ホントニャ。MPが減ったニャ」


「魔法が発動した時は、指先とか手に何か引っ掛かったような感じがあると思うよ」


「あ、ホント♪ 変な感じ♪」


 生徒さん達がコツを掴んできたのを見て、アイバーも自分の《火魔法Lv1》習得を目指しロウソクの火に向かう。が、横から新たな大銅貨が差し出された。


「どったのポルカ?」


「私にも何か教えて下さいぃ!!」


「いや、ポルカはもう覚えてるじゃん。教える事無いんだけど?」


「魔法自体じゃなくて、その…《落穴(ビット)》のような応用の使い方というか…ですぅ!!」


「ああ、そういうこと。

 ん~、自分で考えるのが魔術の第一歩だと思うんだけど…」


 と、もっともらしい事を言ったけど、自分の使い方も過去の創作物からヒントを得たりしてるしなぁ…


「じゃあ、今日覚えたはずの《土操作(アースムーブ)》なんだけど、《落穴(ビット)》程じゃ無いけど切り株処理に役立つ筈だよ。そもそも…」


 根本の土を《土操作》で退()かして根っこごと倒す方法を教えてみた。倒す方向に注意して、木こりさん達と検証しながら試すようにもアドバイスする。1人で突っ走ると予期せぬ事が起きるからだ。


「あと、木こりさん達にもポルカが《土魔法》を教えてあげたら?」


 それを聞いた小さな魔術師は何事か考えこんでいるようだ。


「さて、俺も《火魔法》習得を目指しましょう」


 ロウソクの火に向かって《火操作(ファイアームーブ)》を唱えるアイバー。

 やがて、


『スキル《火魔法Lv1》を取得しました。』


 やった♪ これで…


『特典スキル《初級魔術の才》を取得しました』


 おや?なんか予期せぬ天の声がしましたよ?

 ステータスを見るとMP、INT、MIN、DEXにプラスが付いている。


 詳しく見たかったが、お仲間達がMPを使いきったということでお開きとなり部屋に戻る事となった。


 変態(マーソン)にテーブル上にあるものを片付けておくように言ったら喜ばれた。


「喜んで~♪」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




【本日終了時のステータス】



【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】調教師 ※異世界転生者 初級魔術師

【 L V 】15

【 H P 】368/368

【 M P 】2/261(+16)

【 STR 】222

【 VIT 】146

【 INT 】326(+4)

【 MIN 】113(+5)

【 DEX 】144(+4)

【 AGI 】254

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《刀術Lv3》《斧術Lv1》《投擲Lv3》《回復魔法Lv3》《火魔法Lv1》new《水魔法Lv1》《風魔法Lv1》《土魔法Lv3》《光魔法Lv1》《闇魔法Lv2》new《MP自動回復Lv3》《統率Lv1》 《狂化Lv4》《孤独耐性Lv6》《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》《過食Lv2》《吸収Lv2》《無詠唱》

【特典スキル】《初級魔術の才》new

※MINの+1はマーちゃんに付き合った際に上昇。忍耐

 その他は《初級魔術の才》取得時のボーナス




【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】11

【 H P 】114/114

【 M P 】45/45

【 STR 】98

【 VIT 】91

【 INT 】93

【 MIN 】103(+2)

【 DEX 】131

【 AGI 】155

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv2》

※MINはマーちゃんに撫でられている時に上昇。忍耐





【 名 前 】ブラン

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】2

【 H P 】79/79

【 M P 】21/51

【 STR 】72

【 VIT 】58

【 INT 】112

【 MIN 】66(+1)

【 DEX 】96

【 AGI 】110

【 スキル 】《鑑定》《噛み付きLv1》《咆哮Lv1》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》 《孤独耐性Lv1》《毒耐性Lv1》《採取Lv3》

※MINはマーちゃんに乗りかかられた際に上昇。忍耐





お読みいただきありがとうございましたm(__)m

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