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第四十八話 ピーナッツやろう

ヤッチマッタナア回です…

 午前中で30本程の切り株を処理したおっさんことアイバー達。


 作業中にも昼休みはあるらしく、今は木こりも含めて全員が昼食中である。

 清湖亭に頼んだ弁当はカツサンドっぽい何かだった。まあまあ旨い。シューとブランには久々に生肉、ブロック状のオーク肉をあげた。


「皆も《土魔法》覚えてみない?」


 冒険者同士で集まる中、自身の考えを伝えるアイバー。


「ポルカ以外は前衛職…体張る機会が多そうだから魔法なんて、って思うかもだけど戦闘時の手札の1個として魔法スキルを1系統ぐらい覚えておくのはいいと思うよ。

 あ、ひょっとして既に覚えてたりする?」


「私は魔法スキルは無いわね…」


「ワタシもだニャ。そもそも、獣人は魔法に向いてないって言われてるニャ…」


 女性2人は魔法スキルは無し。

 しかもリアの獣人種族にその設定があったかあ…確かにそれはありそうだ。身体機能が優れてる代わりに魔法が苦手ってテンプレだよね。その分の魔力を体に回してるって感じで。


「ごめん…気悪くした?」


「昔から言われてるし、気にしてないニャ」


「…すまん、今さらだが《光魔法》を覚えている。昨日言った、家が騎士だった頃の名残でな…Lv1だが」


 思ってもみない変態(ところ)から援護射撃が来た。


「ウソ!?」


「ウソニャ!? しかも《光魔法》ニャ? 似合わないニャ!!」


「意外ですぅ…」


「うん、なんか意が…いや、仮面を取った貴公子状態なら納得かも、無駄にキラキラしてても」


「「「ああ~~」」」


「なんだかバカにされているな…ちょっとイイ♡」


 ああ、変態(マゾ)だったね…


「…そうかぁ、でどう? 魔法覚えてみない?

 正直なところを言えば………その…俺もずっと皆に付き合う訳にもいかないからさ、俺がいなくても皆が稼げるように、とも思ったんだよね…その、悪いとは思うんだけど…」


 あ、言ってしまった後だけどちょっと緊張する。


 『自分は自分の都合でこの集団を離れる』と言うのは、集団意識の根強い前生の日本では結構な事だった…気がするおっさん。

 そんなことはないのかもしれない…おっさんの思い込みかもしれないが、元からいる集団からの裏切り者的な扱いや逃げではないのか?という強迫観念を感じやすいおっさんだったのだ。


 そんな心配とは裏腹に、


「そう言えばそうかぁ…正式にパーティー組んでる訳でもなし、アイバーが外れちゃったら元の稼ぎに戻っちゃうか…」


 ミゼットは普通にアイバーが離れた後の事を想像している。


「それはよくないニャ…お金がないのは毛繕い出来ないと同じと言うニャ!!」


 獣人に特有の(ことわざ)っぽい事を言うリア。


「《土魔法》を覚えれば斧を振ったりしなくてすむですぅ…肉体労働は高尚な魔術師の仕事ではないのですぅ!! さらにアイバーさんがいなくなったら、私の価値上がりまくりですぅ♪」


 微妙に魔術師至上主義っぽい腹黒発言をするポルカ。


 そこにアイバーを非難する発言はなかった。

 自分の稼ぎが減る、だから一緒にいろよ的な事を言われるかも…と少しだけ考えていたおっさんは自分を恥じた。


「…まあ、冒険者というのは本来自由で気まま、ある意味真っ当な仕事からはあぶれた者達だ。その分、稼ぎは自分でなんとかしないとだからな。

 その為の手段が増えると言うのなら、おぬしの提案にも乗ろうというものだ。抜ける事なんぞ気にする必要はないのだぞ♪」


 ガバっと肩を組んでくる変態(マーソン)。そういう行動に出れるのは同性の強みかもしれない。

 素肌から伝わってくる熱はちょっと気持ち悪いのだが…


「グスッ……変態(マーソン)のクセにこっちの心情を見透かしたような事を言ってきやがって、変態(マーソン)のクセに生意気だ」


 どこかで聞いた暴論(ジャイアニズム)で照れ隠しするアイバー。


「なんだ、その暴論は? でも、感じちゃう♡」


 心なしか伝わってくる熱が上がった気がする。ダメだコイツ。手の施しようがない。


「でもいいんですぅ? 魔術を教える、となるとそれなりにお金を取らないとですぅ…」


「え、お金かかるの? だったら無し、無しよ!!」


「ポルカ、それって何か資格とか組合に申請しなきゃいけないとかの問題ってあるの?」


「………わかりませぇん。でも、正式に魔法を学ぼうとすると魔術師に習うのが通例でしたぁ」


「じゃあ、そういうのに詳しそうな人に心当たりあるから聞いとく。話はそれからね」


 後で神官さんに聞いてみようと思うアイバー。


「俺は魔法が広がった方が色々便利だと思う考えだからなぁ…間口を広げた方が研究なんかも進みそう。

 悪い面もありそうだけど…」


 スポーツでも競技人口が多い方が発展するような気がするな。


「それはいい考えかもですぅ♪」


「取り合えずポルカは覚えるのに支障無さそうだから、《土魔法》ヨロシクね」


「はいぃ♪ 私の天下の為に、ですぅ♪」


 これが地なのか、アイバーからなかなか愉快な娘さん認定されてきたポルカである。


「じゃあポルカの天下の為に、これをムシャムシャしようか♪」


 ボロ袋から取り出された魔力草の山を見て、顔を青ざめさせるポルカ。午前中に従魔達が集めてくれた物だ。


「ガウウ♪」


「ガウウガウウ♪」『たべてたべてなのです♪』


「シューとブランが一生懸命集めてくれた魔力草だ♪ お腹いっぱい食べてMPを回復させてくれ♪ 俺も食べるから♪」


 オークジェネラル戦後の暴食を思い出し、ハイライトの消えた目になるアイバー。


「ひいぃ!? 笑顔に狂気を感じますぅ!?」


 その日の午後の伐採場には時おりウプウプ言いながら、『《土操作》』と唱え続け、木を切る小柄な少女がいた。

 その甲斐あってか、仕事終了の直前にスキル《土魔法Lv1》を得ることが出来たそうな。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「お疲れ様でした。こんなに早く仕事を終わらせて、しかもこの達成数、お見事です。

 通常依頼1件達成、10本伐採で銀貨2枚になります」


 現在午後の3時前、カーミラに依頼表を渡し報酬を受け取る。

 午後の作業を開始してから1時間程で1人頭10本の伐採作業を完了させてしまい、木こりの親方から今日の仕事は終わりでいいと言われたアイバー達。

 木を木材として加工する作業をするとのことで、専門的な作業になるそうだ。


「ところで…一緒に伐採を行った方々はどうされたのですか?」


 カーミラの言う通り、ギルドに戻って来ているのはアイバーだけだった。


「夕方前まで伐採場周囲の森を探索してくるそうです。最近、森の探索やゴブリン討伐をしてないとの事でしたよ。

 ついでに薬草と毒消し草も20本づつ納めますんでお願いします」


「はい、常時依頼4件達成で銅貨16枚です。どうぞ。

 アイバーさんは…大物を討ったばかりですからね。刀も新調されているんでしたっけ?」


 細かいことを覚えてくれている女性だなぁ♪

 気にかけられているようで嬉しい…が勘違いしないようにしないとな。ホレてまったらきっと悲惨な結末を迎えることでしょう。


「では、今日はこれで」


 アイバーも森の討伐に加わってもよかったのだが、先の魔法の件で神官さんに尋ねておきたかった。

 知らずに魔法を広めて、犯罪者とか指名手配犯になってはコトなので教会にGOだ。


「…と言う訳でこれ寄付です。銀貨1枚、どうぞ」


「うむ、寄進感謝する。で、寄進とは関係ないが、君の知的探求心を満たす為に質問に答えよう。

 答えはノンだ。

 別に魔法を教える側が金銭を必ずしも要求する必要は無い。では何故、先の魔術師の少女のような考えが広がっているかと言うと…単純に金目的だな」


「わあ、身も蓋もない」


「魔術師も、飲まず食わずで生きれるわけでは無いからな。人である以上、食べもすれば服も着る。王国民なら税金も払う。

 全く…生きてるだけで金が減っていく等、考えただけで滅入ってくるな」


 全面的に同意です。


「冒険者として動ける若いうちはともかく、定職に就かない老いた魔術師にはそういった稼ぎは期待できない。なので一般には浸透していない技術、魔法を教えることで対価を得るという訳だ、単純だろう?」


「じゃあ、王立学園っていうのは?」


「まあ、あそこは教育の一環として魔法を教えているが、上流階級の若者の社交場という側面もある。当然、金も集まるがな」


 ふむ、魔法学園か…ちょっと入学してみたい。落ちこぼれのZクラスから成り上がってみたいものだ。

 異世界物の王道だ!!


「ん!!んん!! ではこの村で魔法を教えたり広めたりしても、特に問題はないということですかね?」


 質問しながらもう1枚銀貨を渡す。すでにアイコンタクトで意思疏通可能な仲だ。


「無いだろうな。少なくとも罰するような法はない。

 …これが大きな街等だと、少なからず摩擦が起きるかもしれん。『私のナワバリで客を取るな!!』といった感じでな」


 現代日本でもありそうな話だ。

 大都市のコンビニなんて飽和状態なのにそういう嫌がらせってないんだろうか?


「この村にはそういった事専門の魔術師はいないだろうが…可能性としては冒険者の魔術師が難癖をつけてくるぐらいか。君の後発で始める者がいないとも限らん。

 忠告としては、少なくてもいいから代金は取りたまえ。先達をないがしろにする者は、手痛い思いをする傾向にある」


「どうもありがとうございました」


 祭壇の十字架に両手を合わせてお祈りする。洋風の教会なので賽銭箱は見あたらないので、帰りがけに神官さんに銅貨1枚を渡した。


「道に迷ったらまた来たまえ。知る限りの地図ぐらいなら用意しておこう」


「では1つ、司祭様のお名前は?」


「ほう、世話になった村の名も知らぬのではどうしようもあるまい。マルク教の司祭ジョージだ」


 …やべえな、何がとは言わんが何かがやべえ。


「ムッ!? 私としたことが、フルネームで伝えるのを怠ってしまうとは。ジョージ・キリィ、それが私の…」

「失礼しますなにかあったらまた来ますそれじゃ」


「お、おい?」


 やばい、やばいを通り越してヤヴァイ。悔いのない選択として至急的速やかに退出しなければ!!

 呼び止められて『よろこべ少…』とか言われたらマジヤヴァイ!!


 途中までは中二臭くて楽しい会話だったのに、最後にハジケてごちゃまぜすぎだろ!!

 

 よほどの用がない限り教会には近付かないと誓うアイバーだった。

 

 


 



お読みいただきありがとうございましたm(__)m


どうしてこうなった、作者の自制心orz

この司祭様はいい司祭様です。けして愉悦ったりはしません。

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