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第三十八話 引き際をまちがえないように

ギルド関連一区切りです。


今更ですが、ブックマークや文章、ストーリーの評価をいただけたら嬉しいです(ノ´∀`*)


欲しがり屋さんですいませんf(^^;

「……これで防臭とある程度の防腐処理は済んだ。ギルド用のアイテムボックスに入れておくぞ、ケイシャ、それでいいか?」


 解体所ではゴーシュが何かしたらしいが、何をしたのか分からないおっさんことアイバー。


「ああ、ちょっと待ってくれ。アイバーくんはオークジェネラルの肉を所望でな。今切り分ける事は出来ないか?」


「どの程度だ?」


 先に約束していた肉の件を伝えてくれるギルド長と、それを受けて話し込んでいるゴーシュ。

 アイバーとカーミラは蚊帳の外だ。


「あの、ゴーシュさんってカッコいいですね!!」


「そうですね、とても頼りになる方です。実質このギルドのNo2ですし、領都のギルドの資材部門の元トップでしたから」


「へー、スゴイ人なんですね♪」


 うーん、実はよくわかっていないのだが、分かりやすく変換するなら大手銀行の北海道札幌店の元監査室長で、今は根室とか北見に立ち上げたばかりの支店の副支店長とかだろうか? 銀行の役職とかに詳しくないから役職名があってるか知らんが…

 そんな事を考えていたら、ギルド長とゴーシュさんの話が終わったようだ。


「…では、そのようにするか。アイバーくんなら分かってくれるだろう」


「その方が良いと判断しただけだ。当人にも事情があるだろうし、しっかりと聞いておけ」


 はて? 自分の名前が出たようだがなんだろう?


「アイバーくん、肉の件なんだが…」


 お肉に関しては明日以降の受け取りにさせて欲しいとの事だった。本日中にオークジェネラルを持って役所と警備隊舎を回って来るので、その後に解体してお肉を余すことなく渡すという事だ。

 特に問題はないので、了承する。


「キュウ~~ン…」


 訂正、シューが大変残念がっていた。明日はイッパイ食べさせてやるから…ごめんなぁ。清湖亭の夕飯はちょっと豪勢にするよ。

 こっちが条件をのんだ代わりに、ボロ袋内の他の魔物の死体の解体をお願いした。普通のオーク4匹分と毛皮ボロボロのビッグボア2匹分は受け取ってくれたがゴブリンは「そんなもん解体しても細かいゴミにしかならん、右耳と魔石だけ取ったら捨ててこい」と言われた。残念ながらゴブリンの大部分は産廃扱いらしい。せめて有機肥料とかにはできんのだろうか?

 あと解体には手数料がかかるそうなのだが、今回はオークジェネラル討伐の功績でタダにしてくれるとのことだった。


「正直なところ、討伐隊等を組んだりしたら、もっと予算がかかっていたからな。君が1人で討伐してくれたお陰でだいぶ助かっているんだ♪」


 依頼になれば報酬を出さなければいけない。しかも王種(キング)関連の事柄は制度上、ギルドが依頼と報酬を出さなければならなくなっており一方的な支出だ。討伐後の素材の売却で回収出来る分もあるが、大抵は赤字になる。台風などの自然災害による損失補填に近いものがあるかもしれない。

 その前にアイバーが討伐した為、その分が浮いている状態であり、ギルド長の立場からするとホックホクである。


「久々にまとまった量の仕事だな」


 ゴーシュさんが呟き、口角を上げながら山積みの魔物に向かっていく。早速解体に取りかかるらしい。このギルドでは魔物の持ち込みが珍しく、解体所は大分暇をもて余しているそうだ。ギルド長がコッソリ耳ちしてくれた。

 あー♪ いい匂い♪


 肉以外の素材は売ることにして、そのお金も明日以降にまとめて受け取る事にするよう約束する。窓口でオークジェネラルの件と伝えてカードを出せばいいらしい。

 

 ギルド長はこれから関係各所に出向くらしく、カーミラさんもギルド内で仕事との事。ここ解体所で解散の流れとなった。

 

 ギルドを出る前に昨日討伐したゴブリンの右耳と、オークジェネラル戦後にブランに集めてもらった薬草の一部を常時依頼として受理してもらう。


「ゴブリン24体分と薬草20本で、26件分。銀貨2枚と銅貨46枚になりますね。どうぞ」


 取り合えず当面の現金は確保できた。もう1つ気にしていた事を尋ねてみるアイバー。


「すいません、以前聞き忘れたんですけど魔石って買い取ってくれるんですか?」


「はい、承っています。解体所でも精算できますし、解体を頼んだ魔物に魔石を残してあるなら素材分として計算されます」


 ゴブリンやオークから取れる、黒くて小さい魔石はクズ石と呼ばれているくらいで、大して価値が無いらしい。数があればそれなりに使えるらしいが、1個銅貨1枚とのことだ。30個程あったため交換して現金に替える。その後、アイテムボックスについての注意点を教えられた。

 昨夜酔っぱらった時には後先考えなかったなぁ…


「アイバーさんは既にアイテムボックス持ちですから関係ないかもしれませんが、普通E・Fランクの冒険者は魔石と討伐証明部分、あとは貴重な部位だけ切り取ってギルドに持ち込みます。

 Dランクでも上の方になって、ようやくアイテムボックスを持てる位ですね。やはりアイテムボックスがあると効率が違って来ますから。

 それなりに貴重なモノですので管理については充分に注意してください。考えたくはないのですが、冒険者の中には新人のアイバーさんを襲って、最悪殺して奪おうとする者もいないとは限りません…無闇に見せびらかしたりしないようにしてくださいね…」


「…昨夜は軽率でした。注意します」


「はい、気を付けて下さい」


 以上で本当にギルドでの用事は終わりである。


「協力ありがとう、アイバーくん。これからも冒険者として、この村の為に頑張ってくれる事を期待するよ♪」


 握手を求められた為、ギルド長の手を握りシェイクハンド。少し堅めの手の(ひら)だったが、女性らしい細い感触だ。


「お時間取らせていただき、ありがとうございました」


 カーミラさんも一礼して見送ってくれる。

 立ち去る前に、尋ねておきたいことがある。


「すいません、この村に武器屋とか鍛治師の工房とかってありますか? 昨日の戦闘でだいぶガタがきたモノがありまして…」


「ああ、それなら私が案内しよう。と言ってもすぐそこだがな。

 カーミラ、クリエ、私は役所と警備隊のところに顔を出してくる。夕方には戻ると思うが、時間がかかれば直帰する。留守は頼むぞ。

 では行こうか、アイバーくん」


 促されて正面扉に向かうアイバーと従魔2匹。

 ギルド長の手に革のカバンがあるがそれもアイテムボックスで中にはオークジェネラルが入っている。ギルド所有のアイテムボックスがあったらしい。


「それじゃ失礼します」


「ガウウ」


「ガウウガウウ」


 ギルドを出て数歩歩くと、


「あれが鍛治師の工房だ」


「本当に近いんですね」


 ギルド長が示したのは、昨日の早朝にギルドと間違えて開けようとして開かなかった建物だった。


「それじゃここで失礼するよ」


 ヒラヒラと手を振りながら去っていくギルド長。その後ろ姿を見ながら、


「う~む…ミニスカは眼福(がんぷく)だがこの村だと浮くなあ。でも女性冒険者って妙に露出が高かったりするし、そういうもんなんだろうな♪

 ガチガチのフルアーマーとか着込んでても…それはそれで脱がす楽しみが…イヤイヤ脱がす前提でどうする。

 地味な姿じゃ販促もしづらいからなぁ…大人の事情なんだろう、外見(えし)が重要ってことだ。絶世の美女とか美の化身って無茶ぶりはやりすぎだと思うが…」


 女性冒険者の服装から最近の出版物(ラノベ)についての個人的な主張を終えて、工房の扉を開けるアイバー。


「おお、武器屋だ」


 壁に飾られた斧や槍、木箱に詰め込まれているのはいわゆる安物だろうか? 中央に置かれた木材のみで作られたショーケースには、でかいホッチキスの針みたいな金具で固定されている刀剣類。

 いかにも武器屋って感じがする。それにしても店員らしき人が見えないと思っていると、


「小僧。何の用じゃ!?」


 いかにも店番の人がほおづえついてそうなカウンターの影から、ズングリムックリの髭面のおっさんが出てきた。これは間違いなく…鍛冶屋と言えば、武器屋と言えばテンプレ中のテンプレ!!


「ドワーフさん!!」


「ああん!? ドワーフがどうした、珍しいもんでもないじゃろ?」


 いかん、カーミラさんの時と同じ反応をしてしまった…同じミスは繰り返さないようにメモしとくべきだったか…


「購入か? 修理か? それとも発注か? さっさとせい」


 いつも思うがこんな上から接客でいいのかな? いいんだろうな、他に店ねえもん。


「すいません、一応研ぎに出したい刀がありまして…これです」


 腰に下げていた刀を鞘ごとカウンターに置く。先日、刃こぼれして切れ味の落ちていた『数打ちの刀』だ。


「フム、どれ…………」


 手慣れた手つきで抜き放ち、角度を変えて確認していく。

 良かった♪ ドワーフの中には急に怒り出す沸騰系の頑固オヤジもいるけど、このドワーフさんは普通に話せそうだ。濃いキャラもいいけど、そんな人ばっかりだと神経が持ちそうにない。

 こういうのでいいんだよ♪ こういうので♪


「こりゃ安物じゃな。なんじゃ!? これを研ぎ直せばエエのか? じゃがなあ…」


「何か問題でもありそうですか?」


「大有りじゃ。研いでも次の次、早ければ次の研ぎの後に使っている最中に折れるじゃろうて」


「そういうのもわかるもんですか?」


「まあのう、経験則っちゅうヤツなんで証明は出来んがわかる。ゴブリンかそこらの魔物を3~40ばかし斬った、ちゅうところじゃないかの?」


「え~と…確かにそんなもんです」


 正直驚いた。ファンタジー世界の職人てのはそこまで鋭いもんなのかと思う。

 日本の職人技とかのドキュメンタリーとか観てても、それっぽい事言ってるだけで実際には長く続けてたってだけだろ?まあ長く続けるって事自体がスゲエけども、とかひねくれた思考をしているおっさんだが、こうも目の前で正確に見抜かれると信じざるを得ないものである。日本の伝統文化を守ってる方々ご免なさい。


「じゃあ新しい刀って売ってますか? それよりもうちょい良さげなの」


「ないのう…持ち込んだ武器にも、ワシが新しく打った武器にも刀はない。刀使いなんぞ久々に見たわい!!」


「新しく打つことは出来るって事ですか? 出来るならお願いしたいですけどおいくら程…」


 金額によってだろうな。一応刀がメインだけど武器系のスキルも覚えたいから、別に今は無くても困らない。最悪折れるまで使って別の武器にチェンジだ。


「フーム、久々に刀を打つのもいいかもしれんが…1からでそれなりのモノを打つとなると…金貨2枚程は貰うな」


「あ、じゃあいいです」


 あっさり断るアイバー。前述の理由と対価が高額過ぎである。

 引き際のよさに、逆にドワーフの店員の方が驚いている。


「いいのか? 見たところ、刀の他には投げナイフ位しか持っとらんようじゃが…」


「予備の武器は幾つか持ってるので…そうだ、壊れた武器とかって引き取ったりしてくれます!? もしそうなら今度持ってきたいんですけど」


「金属なら鋳潰して使うからのう、ボロボロになってもその芯にはいい鉄が…火を入れれば必ず甦…」


「そうですかわかりました今度持ってきますそれじゃ」


 なんだかどこかで聞いたような、危ない台詞を言い始めるドワーフを置き去りにして店を出た。

 別に大雑把すぎる大剣や、ダンビラを打ってもらう予定はない。スキル《狂化》の相性的には良さげだが。

 明日以降の、オークジェネラル関係の金額次第だと考えて鍛冶屋を立ち去るアイバーだった。


お読みいただきありがとうございましたm(__)m


仕事と私事の為、次回の更新は2月5日以降になると思います。申し訳ありませんm(__)m

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