表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/76

第三十六話 覗きこむ深淵

主人公視点に戻ります。

「ご足労いただき申し訳ありません。ここではなんですので、こちらへどうぞ」


 昨夜の約束の通りギルドを訪れたおっさんことアイバー。ギルド2階部分の応接室らしき部屋へ通される。

 ギルドの2階部分は職員用のスペースを通らないといけない造りになっていることから、本来は内部の人間以外は立ち入り禁止のようだ。

 重要資料の保管庫や内密な話用の応接室といったところか、とそれっぽいファンタジー知識で推測する。


 まあ、そんなことはどうでもいい。ギルド職員で唯一の顔見知りということで先導してくれたカーミラさんの後ろ姿、特に階段で見上げる形になったお尻のラインが素晴らしかった♪ 体のラインが分かりにくい、ローブのようなギルドの制服だがそれでも隠しきれないムッチリボディ♡ 最近ご無沙汰だったちょっとHなお店を思い出してしまったぜ♪


「すぐにギルド長をお呼びしますので、そのままお待ちください。お茶等の好みはありますか?」


 いかんいかん、女性をそういう目ばかりで見てはいけないな。反省反省、だが後悔はしていない!!


「んー…俺はなんでも大丈夫です」


 この世界のお茶の種類とか知らないしな。


「ああ、もしできればコイツらにも何か飲むものお願いしてもいいですか? …っていうか同席させてて大丈夫ですかね? シューとブラン」


「ガウ」


「ガウガウ」


 おちちちょうだい♪とシューから念話が入った。ブランは、けっこうです!!と伝えてくれたが…


「従魔の同席に関しては気にしなくてもいいと思います。そういった事にこだわる方ではありませんから。ヤギの(ちち)でいいですか?」


 ずいぶん気のいい長さんなんだな…あとカーミラさんから『(ちち)』いただきました♪

 

「それでいいよな? …よし、お願いします」


「わかりました。では」


 カーミラさんが退出し1人残される。本棚やワインっぽい酒瓶が入った棚、キャビネットって言うんだっけか!?があるが、案内されたのに見て回る訳にもいかんよなぁ……待つ事に徹する元日本のサラリーマンだ。

 退屈なので、応接用のソファに腰掛けここに来ることになった経緯を思い出していた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「………マジか…」


 食堂の床に出された巨体のオークを見て、ノックスがつぶやく。


「…間違いなく本物。シュミーズネエさんもわかるでしょ」


「ええ、そうね…この凶悪な面構えは普通のオークじゃありえない。肌を触った感じの硬質な手応えも、以前私達で討伐したオークジェネラルとソックリだわ」


 元冒険者の経験から、オークジェネラルの正誤判定をくだす警備隊の面々。


「いや、床に…」


「アイバーさん!!どういう事ですか!!なぜこんな…ええと、こういう場合はすぐギルドに報告を、でももうしまってるでしょうし…今からギルド長の部屋へ、でももう討伐はされてるし…ああもう!! どうして目が覚めた時に言ってくれなかったんです!!」


 何か言いかけた宿屋の看板娘ミナの声を遮って、カーミラがわめき散らす。彼女を知る者からすればかなり珍しい反応だったが、今の状態でそこに突っ込む者はいない。


「ねえ、ちょっと、床がさあ…」


「え~!? 俺言いましたよぉ~ここに来る道中でぇ~オークジェネラルと戦った~って、あれ? 倒したでしたっけ!? まあ~とにかくぅ~オークジェネラルって単語は出しました♪ 間違いないッス!!」


「!! 確かにそうですが…」


 他の者は一気に酔いが醒めたが、アイバーだけはのんべえ状態である。

 そしてカーミラも教会から出たところで話した内容を思い出していた。


「血でよご…」


「お客さん…ちょっと…」


「刺し傷…いや、こりゃなんかの貫通創か…頭部や肩の上半身に集中してんな、刀じゃねえだろ」


「魔法…にしては細かい傷よねぇ…どうにかして上方から奇襲ってところかしら!? 確か武器は沢山持っていたからそのどれかじゃなぁい?」


「…なんにせよ快挙、私達でも4人と助っ人で総掛かりだった」


「ま、あん時よりゃだいぶ強くなってっけどな♪」


「…頭はまるで成長していない」


「んだコラッ!!」


「もっと真剣に言ってくれればよかったんです!! まさか本気だなんて」


「あとでぇ~見せればいいかなぁ~って、サプライズッスよ♪ 驚いたでしょ♪」


「テメエは背も胸も全く成長してねぇだろが!!」


「……言ってはならないことを…それを言ったら戦争」


「もぉ~~、しっちゃかめっちゃかねぇ…」


 オークジェネラルの検分を行ってケンカしたり、討伐の報告問題の押し付け合いでワチャワチャする面々…


「ウルセーーーーーーー!!!!!!!!! 

 くっちゃべってねえでまずはこの死体を片付けろヤ!!(うち)は飲食店なんだヨ!!床も血塗れでどう落とし前つける気だアァン!?無駄に動く口閉じて掃除シロ!!楽しく飲むのと何してもいいを勘違いしてんじゃネーゾ!?オラァ!!!!」


「ひぃ!! ミナ姉さんが触れれば切れるジャックナイフなあの頃に!! お父さーん!! お母さーん!!」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ミナさんの剣幕に圧されて皆で片付けしたんだったなぁ~それでお開きになって…あれ? カーミラさんとの約束までいってねえな!?」


 オークジェネラル品評会の片付け後、個別に今日の10時に必ずギルドに来てください、って言われたんだけど印象薄いや。

 ミナさんがキレた印象で塗り潰されていた。


「ちゃんと時間前に来てる訳だしそれでいいよね。

あ、コラ、シュー!! ソファにのらない!! 今は遊んでないで大人しくしてなさい!!」


 退屈なのか応接室内をウロウロし始めるシュー、それを一喝するアイバー。足元に伏せたのでナデナデしてやる。ブランは元から伏せていたのでこちらもナデナデ。


「クゥ♪」


「クゥクゥ♪」


 シューは昨日以来、人間への苦手意識を克服出来たようで、生来の好奇心なのか活発になってきていた。一応注意すれば分かるようで、オイタを繰り返すことはない。

 ブランの方は常にアイバーの足元に控えており大人しいのだが、あまりベッタリでもよくないんじゃないかと悩む主人であった。

 そうこうしていると、応接室の扉が開く。


「待たせてすまない」


「失礼します」


 なんだかゴージャスな感じの美人さんがカーミラさんを引き連れて応接室に入って来る。カーミラさんはお盆に茶器の用意をしてきてくれたようである。


「どうも…」


 前生からの習慣でソファから立ち上がり敬礼するアイバー。社内研修で接遇マナーなんて習ったけど忘れないもんだねこれ。


「ああ、いい、と言う前に礼をさせてしまったな…とにかく座ってくれ。お茶でも飲みながら世間話を…では少し軽すぎるが、別に君を罰しようとかいう要件ではない」


「あ、はい」


 言われた通り、ソファに座る。

 どうやらこのゴージャス美人さんがここのギルド長のようだ。先ほどギルドに入った時にも1階にいたような…にしてもギルド長ってのは服装の自由があるのかな? カーミラさんともう一人の受付嬢らしき女性は揃いのローブなのに、この人ミニスカだぞ!? 微妙にバブル臭を感じる…さすがにボディコンって程じゃないが。


「どうぞ、お熱いので気をつけて」


 すでに準備してあったのか2人分のお茶が出される。カーミラさんは秘書っぽい雰囲気があるから、お茶を出す仕草が似合うな♪

 …実際の秘書がお茶汲みとかやるかって言われると違うけど。現実の秘書ってほとんど男だったし、お茶汲みなんて一般社員がやらされてたもんな…


「シューさんとブランさんのも…足元で大丈夫ですか?」


「ガウ♪…ペロペロ♪」


「ガウガウ!!…………ペロペロ♪」


 シューは素直に、ブランが少し遠慮がちにだが舐め始める。


「ほう、その子達が君の従魔、それも2匹同時にか。カワイイな♪ キッズウルフとはいえ、将来有望だ」


「どっちも訳の分からないうちに従魔になったので、有望かどうかは保留にしておいて下さい」


「…ほう、謙虚だね。では言うとおり、そちらは今後の楽しみにさせてもらおう♪」


 ん? あれ、なんか、ちょっと…

 う~ん、この状況、登録早々ギルド長との面談、しかもオークジェネラルとの死闘直後のタイミング…これは間違いなく、テンプレだな。


「あの~、それでこの呼び出しの目的は?」


「よっと、私も座らせてもらうよ。分かっているとは思うが、オークジェネラルの事でちょっとね…可能な限り全て、を話して欲しい。

 いつ、どこで、どのように遭遇し、相手も君もどのような状態で、どのような攻防があり、どのように戦い勝利したのか、だ」


「…………」


「スマンがだんまりは困る。オークジェネラルとなるとBランクに登録されている魔物だ。

 我々冒険者ギルドからすれば早急に調査する必要がある。個体の1匹2匹ならギルドと警備隊の戦力でなんとかできるだろうが、問題はそれだけではない。

 知っていると思うがオークやゴブリンの上位種、とりわけ王種(キング)将軍種(ジェネラル)には統率力という個体の力以上に恐ろしい力がある。もしも近くにオークの群れが潜んでいる事があれば…」


 滔々と魔物の危険性について語るギルド長。

 この呼び出しの目的の1つにアイバーのスキルや能力について探りをいれたいというのもある。まさにギルド長が新人冒険者の力の秘密を握っておきたいという展開の鉄板である。

 だが、今はそれ以上にオークジェネラルについて聞きたいというのが本音だった。迷宮以外で目撃例のあった将軍種(ジェネラル)以上の統率力を持つ魔物については例外なく近隣の冒険者ギルドに調査の義務が生じる。

 過去に大発生(スタンピード)が原因で、実際に滅びた国があるからだ。その轍を踏まぬよう、ギルドは周辺の調査を行い闇を晴らしておかねばならない。


 そんな危機感のこもったギルド長の話を聞きながら、アイバーは一点を見つめて考え込んでいた。国家存亡の危機と個人の問題とはいえ、ギルド長以上に真剣に考えていたのだ。これは絶対に間違えられない選択だ。どれだけ悩んでも足りなさすぎる。







 



 対面に座り、組まれた足の奥底に潜むギルド長の(パンツ)を晴らすために!!

 ギルド長の深淵(パンツ)が見たいです!!

 




お読みいただきありがとうございましたm(__)m


諦めたらそこで…終了だよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ