第三十話 ぢごオジ
タイトルは「ぢごくへいったオークジェネラル」の略です。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! 《落穴》《落穴》《落穴》《落穴》…!!」
土魔法が効かないのは分かっていた。
最初に《土壁》と《土槍》のコンビネーションを無効化された時は心底驚いた。
何だかんだで《土魔法》はおっさんことアイバーの切り札だったのだ。それが通じない相手、しかも格上、絶望した。
だが、《落穴》だけは別だ。シューで《土耐性》の実験をした時には、少なくとも掘った穴を無効化されることはなかった。
《土魔法Lv2》、《落穴》と《土壁》の有効効果範囲は約8mの範囲内。視認しなくても意識すれば後方等へも発動可能。
ならば、下方での発動も可能なのでは?と試したところ可能であった。
偶然吹き飛ばされた大盾の場所で、自分に《小治癒》を掛けた際、8m地下から順繰りに上に向かっての落とし穴を仕掛けておく。
そして、武器破壊を成し遂げたアイバーは、吹っ飛ばされながら残りの落とし穴をオークジェネラルの足元5cm程度まで繋げた。足元に直通させなかったのは万が一触れている事で《土耐性》で無効化されるのが怖かったからである。
ちなみに武器破壊については、かなりボロボロになっていたので少なくとも残り数合の撃ち合いだろうと考えていた。駄目ならもう少し頑張る予定だったが、ちとギリギリな選択だったかもしれない。
更にちなみに例の台詞は、吹き飛ばされ罠を仕掛けるというシチュエーション繋がりで思い付いたので、わざわざ《狂化》を解いて言ってのけた。
アホなおっさんである。
「ブモオオオ!?」
オークジェネラルは自重で5cmの土板を踏み抜き、アイバー製の約8mの落とし穴に消えていく。しばらくすると小さく落下音が聞こえた。
「………ザマアみやがれ、って言いたいところだけど…」
「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「デスヨネ~……」
穴の底から一際長い咆哮が聞こえた。
「あの説明文から予想されるタフネスぶりから考えて、これで死ぬとは思えんし…」
《落穴》の指定範囲が8mで限界なので、イコールその深さが限界だった。
ともかく、時間は稼げたはずだ。
落とし穴の形は基本設計は真下への一直線だが、ある程度穴の形を変更できる為、重ね掛けして円錐状にしてある。とにかく上に昇って来られない作りにした。
「正直、それでも何とかして出てきそうだから、安全の為にトドメを刺す!! 俺とシューの怨みも忘れてねぇからな…」
再度吹っ飛ばされた事で手放してしまったアイテムボックスのボロ袋を探し、見つけ出す。
「…正直気は進まないけど、やれることは全部やって念を押す」
確認の為、現時点でのステータスを確認する。
【 名 前 】アイバー
【 年 齢 】15
【 性 別 】男性
【 職 業 】調教師 ※異世界転生者 半狂戦士
【 L V 】9
【 H P 】62/266 負傷
【 M P 】4/185
【 STR 】168
【 VIT 】122
【 INT 】301
【 MIN 】82
【 DEX 】128
【 AGI 】224
【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《刀術Lv3》《投擲Lv2》《回復魔法Lv1》《水魔法Lv1》《風魔法Lv1》《土魔法Lv3》《闇魔法Lv1》《MP自動回復Lv3》《統率Lv1》 《狂化Lv4》new《孤独耐性Lv6》《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》《無詠唱》new
色々気になるが、今はHPとMP回復を優先。
ボロ袋から魔力草を取り出してムシャムシャする。魔力草1本につき6~8MP回復するので、全回復させるためには最悪30本近く食べないとだった。
途中からは噛んで青臭さを感じるのが嫌になってきたので丸飲みする。表皮以外はアロエみたいな味だ…ヌルヌルする。
「《小治癒》」
MPを回復させた後は回復魔法でHPを回復させた。一回の《小治癒》で消費MPは1、HPは5~6回復する。15回程唱えるとそれ以上回復しなくなった。
おそらくHP横の『負傷』が影響しているのだろう。
シューの瀕死状態も総HPまで回復しなかったので、状態によって回復量にロックがかかってしまうんだろうな、と納得した。
ゲイなボウの効果だな。あの黒子欲しいぜ。
【 H P 】133/266 負傷
負傷状態は半分まで回復なのだろうか?
シューの時は24/99だったから4分の1か…
「ブモオオオオッ!! ブモア!!」
「…考察するのもいいけど全部終わらせてからだな…ヤレヤレ」
落とし穴からオークジェネラルの雄叫びが聞こえ、現実に戻るアイバー。
「先ずは………コレだ。何だかんだで、処分も売り払う事も出来なかったな。
ホントは錬金術とか魔法薬的な処置して、安全に使いたかった」
ボロ袋から取り出したのは青い果実、メンゴだった。同時に毒消し草の束も取り出す。
「増強効果でどれだけ上がるか、毒の効果も打ち消せるか…賭けだな」
メンゴは青い以外はリンゴと同じなので、ナイフで割って種を取り出し、それを毒消し草2本分で包む。
種子の毒性を毒消し草の解毒効果で打ち消すつもりだ。ファンタジー世界だし、即死性の毒じゃなければなんとかなるのでは?という甘い見通しである。
よい子は真似しないでね♪
「南無三!! ウグッ!?」
それを飲み込むと、一瞬胸が締め付けられる感覚に襲われ、それが2度ほど続いた。息が止まりかけたが、すぐに落ち着く。ステータスを確認すると毒状態の表示はないがHPは50減っていた。
そしてお目当ての欄。
【 H P 】83/266 負傷
【 STR 】173(+5)
「……話に聞く心筋梗塞ってこんな感じか? これキッツいわぁ…健康には気をつけよう。
でも、無茶した甲斐はあった!! STR上がってる!!」
急いで回復し、残り2つのメンゴも摂取するアイバー。目論見通りSTRの上昇はかなったものの、思わぬ副作用もあった。
【 H P 】83/266 重傷
【 STR 】183(+10)
「ウソ!? 重傷になったぁ!?
チキショー、想定外だが仕方がない。とりあえず、仕込みは済んだ…こっからはおしおきタイムだ」
幽鬼のような足どりでオークジェネラルの元へ向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ブモオオオオオオオオオオオ!!」
穴の底から雄叫びが聞こえる。
「何言ってっかわかんねぇけど、ここから出せとか殺してやるとかかねぇ?」
「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
落とし穴の縁に立ち底の様子を伺うアイバー。それに気付いたのかさらに雄叫びを上げるオークジェネラル。
どうにかして昇って来たりしていないか不安だったが、その心配は無用だったようだ。今も穴の底にいる。
「こっからは処刑の時間だぜ。いや、屠殺かね?」
アイバーは穴の縁に突き立てられた無数の武器の1つ、槍を掴む。
見れば短槍、斧槍、大剣、長剣、矛、薙刀等の長柄の武器が突き立てられていた。
「そして、ついにこの魔法が日の目を見るときが来た、覚えたときにはなんじゃこりゃ!?って思ったけども!!
今週のビックリドッキリ魔法!!《土付与》!!」
「ブモオオオオオオオオオオオ!!」
叫ぶオークジェネラルを無視して魔法の効果を確認。
手にした槍がアイバーの手を中心に土に覆われていく。魔法で産み出されているのか虚空から土が出てくるのは不思議なものだ。
《土魔法Lv3》、《土槍》と同様に覚えた《土付与》だ。
「武具に土を纏わせるって、重くなるだけで切れ味落ちるし使いどころ難しいよな。鈍器用!?
これが《火付与》とかなら分かるけど、水とか風もいまいち分からんな。水に濡れた刃…血脂が付かないとかかな?」
げに難しき、ファンタジー魔法を現実に置き換えた時の魔法効果。
「でも、こういう時には役立つよな…《狂化》オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
落とし穴に向かって、重量を増した槍を振りかぶり、《投擲》する。
STR×武器の重量×《投擲Lv2》×重力=貫通力!!
「オオオ!!」
「ブモモ!? ブモアアアアアアアアアア!?」
落とし穴の空洞内に響く風切り音、そして刃がオークジェネラルの体に食い込む。
「ブモアアア!? ブモ!? ブモモォ!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
オークジェネラルの困惑に構わず、《狂化》《土魔法》《投擲》コンボで武器を投げ込む。
「ブモ、ブモ!? ブモオ~!!」
オークジェネラルの悲鳴が聞こえる。
「……ブモ…ォ…ォォ…ブ…ォァ………………………………………」
だがそれも6本目の矛を投げた後には聞こえなくなった。
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『スキル《投擲Lv3》を取得しました』
『従魔のレベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『従魔のレベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『従魔のレベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『従魔のレベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
『従魔のレベルが上がりました。ステータスを確認して下さい』
「ハァ…ハァ……ハァ…てめーの敗因はたったひとつだぜ…たったひとつの単純な答えだ…」
武器を破壊したのは盾にされないのと、穴を昇る道具にされない為。
落とし穴に嵌めたのは渾身の《投擲》を避けられないようにする為。
STRを上げたのと《土付与》を掛けたのは威力を上げる為。
結構回りくどく複雑な、色々と穴のある綱渡り計画だったが、おっさんはやり遂げた。
だから、これぐらいカッコつけてもいいだろう?
「てめーは おれを怒らせた」
《狂化》したしな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※補足
オークジェネラルのステータス
【 名 前 】
【 年 齢 】9
【 性 別 】男性
【 職 業 】重戦士
【 L V 】38
【 H P 】838/838
【 M P 】219/219
【 STR 】728
【 VIT 】507
【 INT 】188
【 MIN 】214
【 DEX 】382
【 AGI 】400
【 スキル 】《身体強化Lv1》《斧術Lv4》《棍術Lv2》《咆哮Lv3》《火耐性Lv4》《土耐性Lv4》《統率Lv2》《気配察知Lv3》《運》
お読みいただきありがとうございましたm(__)m
※蛇足
スキル《狂化》の仕様はLv1毎にINTとMINを除いた基礎ステータスの半分がプラスされます。
Lv1=1、5倍
Lv2=2倍
Lv3=2、5倍
Lv4=3倍
最大Lv10で5倍といった具合です。
という設定ですが、数字とかは結構適当なので矛盾があったらごめんなさい<(_ _*)>




