表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/76

第二十四話 タダだと思っていたモノも

検証メインの回ですm(__)m

 午前中の成果を振り返りるおっさんことアイバー。

 レベルアップや新スキルの取得、既存スキルの強化にも興奮したのだが、もっとも関心をひいたのは別の事であった。


「少なくとも日給2万以上…冒険者って儲かるのか?」


 金である。現金なことに金であった。現金だけにね♪

 またオヤジギャグの虫が騒いでいる。プリミティブな欲求なのである。


 通貨の価値はあくまでアイバーの想像なのだが、常時依頼で換金出来る分のみでも銅貨で200枚以上、銀貨換算だと2枚程となる。

 村に入ってから使った分、肉串と宿関連の出費だけだが、それを考えると1日の稼ぎとしてはかなりのモノではないだろうか?


「冒険者は依頼報酬から税が引かれるってカーミラさんが言ってたから、純粋な手取りでこれだと結構なもんじゃないか♪」


 冒険者の説明で流し聞きしたところである。


「おまけに魔石やその他の素材も期待できる♪ 高所得と言ってもいいじゃん♪」


 目を\マークにして喜ぶおっさん。

 シューも嬉しそうに周囲を跳ね回る。だが、その中におなかすいてきた、という感情も見え隠れしていた。


「ああ、ごめんなシュー。そろそろ昼にしよう。 四方森だとヤバげだから、湖岸までいくか♪」


 少しでも警戒する方向を減らして負担を減らしたいと思っての提案である。

 大体の方向は覚えている為そちらへ向かう。隊列はいつもの通りシュー、アイバー順だ。

 10分程歩くと湖岸に到着したが、途中またもゴブリン1匹を見つけた為、狩っておいた。


「また収入が増えた♪ たまんねぇな♪」


 ボロ袋からシューにオークを出してやる。売れるかもしれないが、シューからリクエストがあった為昨日仕留めたまま入れてあった分を提供した。


『まだたべてないおにく、たべたい!!』


 といった感じの念が伝わってきたのである。


「……シューちゃんは食事関係になると積極的だし念話的なモノも特に饒舌だよね…腹ペコキャラなのかな? 食い散らかすけど大食いではないしな」


「ハウッ♪ ハッ♪」


 ゴブリンに比べると皮が固いのか、表面を食いちぎるのに時間がかかっているようだが満足そうである。

 アイバーも湖で手を洗って、一昨日に採り置きしてあったビリーとリンゴを食べた。宿に泊まって食事をとった分余っていたのである。


「明日以降はビリーとリンゴから卒業して、村で保存食とか買おうかな? 清湖亭で弁当とか作ってくれるか頼んでみるのもいいか♪」


 一応周囲を警戒しながら昼食をとる。

 昔の剣豪も風呂と食事中がもっとも危ないなんて言ってた気がする。


「シューも宿の人が作ってくれた方が…」


 一心不乱にオークに食らいついているのを見るとどっちでもよさげではある。完全に食事に集中している感じだ。

 口元が相変わらずスプラッタだが何度も見ていると慣れてくるものである。


「血の臭いにひかれて魔物がやって来るって事はないのかねぇ? シューみたいな狼系の魔物だったら鼻が利きそうだけど…」


 キッズウルフの鑑定結果では森林や草原で群を作っているとの事だった。


「シューがいたんだから、その群れがいてもおかしくはないよなぁ……そうでない群れがいたっておかしくない。

 連携で来られたらやべえじゃん…シュー、お友だちが来たら説得してよ!?」


「ガ、ハゥ?」


 オークの太ももにかじりついていたシューが顔を上げて首をかしげた。

 腹ペコ魔狼め。


 シューの食べっぷりを見ながら、これからどうするかを考えるアイバー。

 森に入る際には1日ゴブリン退治に励もうと思っていた。強力な魔物が棲息している等の不測の事態があれば村に戻るつもりだったのだが、これまでの様子をみるにそこまで酷い事もない。

 ではなにが、というと食事中に魔法スキル取得とMP管理のための確認を行った際、HPの横に気になる標示があったのだ。


【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】調教師 ※異世界転生者 

【 L V 】9(+4)

【 H P 】183/266(+68) 軽疲労

【 M P 】172/185(+40)

【 STR 】168(+24)

【 VIT 】122(+16)

【 INT 】301(+12)

【 MIN 】82(+12)

【 DEX 】128(+8)

【 AGI 】224(+20)

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《刀術Lv3》new《投擲Lv2》《回復魔法Lv1》《水魔法Lv1》new《風魔法Lv1》new《土魔法Lv3》《闇魔法Lv1》《MP自動回復Lv3》new《統率Lv1》 《孤独耐性Lv6》《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》




【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】6(+3)

【 H P 】99/99(+9) 中疲労

【 M P 】37/40(+3)

【 STR 】88(+6)

【 VIT 】71(+12)

【 INT 】88(+3)

【 MIN 】85(+9)

【 DEX 】121(+6)

【 AGI 】139(+9)

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv2》new



 いつものようにテンションが上がり気味になりそうなのを抑える。

 HP欄の横に、主人と従魔で程度の違いはあれ『疲労』の文字が浮かんでいるのだ。


「普通に考えれば…状態異常的なモノだよな。状態の標示欄がなかったから気にしてなかったけど、こういう形で出てくるのか。

 肉体的な異常がHP、精神的な異常はMP横かな?」


 冷静に今日の行動を思い返してみる。



 早朝に覚醒し、朝食を食べて宿を出る。

    ↓

 ギルドで、冒険者登録をする。確か朝の7時頃。

    ↓

 北の森で狩りを始める。

    ↓

 体感だが4時間休みなしで戦闘と移動を繰り返す。



「うん、こりゃ普通に疲れるわな」


 HPという生命力には影響なくとも体の各所に本人でも気付かない疲労がたまっていてもおかしくはない。

 仮に前生で、早朝出社の午前中全てを肉体労働で過ごしたとしたら昼頃にはグッタリだったろう。まして行っていたのは、15歳の肉体とはいえ、単なる肉体労働ではなく命をかけた戦闘行為だ。


「異世界用の肉体ってことで、前生と比べると頑強なのかもだけど人間だしな…VIT依存で疲れにくくなったりはするかもだけど、限界はあるか」


 某RPGのように何日も朝と夜を繰り返しても歩き続けたりは出来ない訳だ。


「俺はまだ軽疲労だから感じてないだけで体は疲れ始めてるのか…シューなんか中疲労。

 子狼だもんな。気付いてやれなくてごめんな…」


 食べ終わったのか水を飲んでいるシュー。

 ステータス欄を見たあとだと疲れているようにも見えるが正直わからない。

 観察力のない主人でごめんなぁ…


「今日はこれ以上の戦闘は出来るだけ避けよう。昼休憩を長めにとって、疲労がとれないかも確かめる。午後は少し採取したら戻って休むようにしよう」

 

 今後は行動中に休憩をいれる事を誓うアイバー。


「それにもう1個不安材料があるんだよなあ…これ、刃こぼれとかがすごいな」


 腰の刀を抜いて時代劇の武士がやるように刀の刃の部分を片目で眺める。所々刃こぼれや刃の潰れた箇所が目立つ。

 ゴブリンとの戦闘でも徐々に切れ味が落ちていたので、途中からは突き主体の戦い方になっていた。


「村に戻ったら鍛冶士さんも探さないと…こういう出費があると金も貯まんないのかぁ」


 午前中の成果を考えて浮かれていたのに、冷や水をかけられたかのようである。

 武具のメンテナンス代等のランニングコストは想定していなかった。


 だが考えれば前生の会社でもOA用紙やトナーカードリッジ等のオフィス用品、PCの修理やメンテナンス代等は会社持ちであったが身近なランニングコストであった。役職が上がっても気にせず使っていたものだが、こうやって冒険者という個人営業主になるとしきりに経費の削減を叫んでいた部長の気持ちがわかるなあ…

 会社の金は使っていい金みたいで、国の金を好き勝手しているって政治家や官僚を責められないなぁ。


「もし戦闘になったら魔法か《投擲》、あとはスキル無くても使い慣れない武器で応戦するしかないか。

 今後は武器スキルもLv1ぐらいまでは取得を目指そう」


 今後の方針を決めるとシューを呼び寄せ、自分が見張るから昼寝なりなんなりして体を休めるように伝えた。シューの方が疲労の度合いが高いからである。


 体を丸めて休むシューとアイバー。





 その主人と従魔を風下から見つめる存在に気付かずに。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 1時間程の休憩を終えたアイバーとシューは村方向に向かいつつ採取を行っていた。


 疲労に関してはシューの中疲労が軽疲労に軽減していた。疲労状態は休息を取れば回復するようだ。ひょっとしたら昼食前には空腹状態もついていたかもしれないが確かめてはいなかったので別の機会に。


「やっぱり湖岸は草関連が多いな。お、『毒消し草』見っけ、ここでもう5本目か。そろそろ行くか」


 湖岸と森の間をジグザグに移動し、ある程度移動したところで短時間採取に集中する。


 シューには警戒に集中してもらっている。

 敵を見つけても唸らずに教えてくれるよう頼んだのだが、昼休憩後に出発してから少し様子がおかしい。しきりに後ろを気にしているようだが警戒というよりは戸惑っているように感じる。

 どうしたのか尋ねてみたのだが食事関係以外では上手く伝わりきらない腹ペコ狼シューちゃんだった。


 森の採取地点では『魔力草』数本と『魔力茸』を見つけた。毒性のある『魔力茸』は村に入る前の休憩時にまとめて廃棄したが、村に入った様子だと所持しているだけなら問題なさげだったので再び採取しておく。

 調剤の材料とかに使えそうだしな。群生しているのか大量に採取出来た。


「おっと、ゴブリンか!? 隠れよう」


 前方からゴブリン1匹が向かって来ていた。こちらには気付いていない様子だ。


 MPには余裕がある。慎重に狙いを定めて……


「《土槍(アースニードル)》」

 

「ギ!? ギャブ!!」


 足元から生える土の杭に貫かれるゴブリン。気分はルーマニアの串刺し公だな。

 

 ゴブリンに近付き回収しようとしたその時。


「ガウガウ!!」


 右手から襲いくる小柄な影が皮の籠手に噛みつく。


 ん? この鳴き声、茶色の体毛。


「シュー? なんでお前が?」


 さっきまで足元にいたよな? 足元に視線を向けるとそこにもシューがいた。


「……シューもいるな、え? 別犬、いや別狼!?」


「ガウウ!?」


 シューが2匹になった。

 

お読みいただきありがとうございましたm(__)m


いったい何者でしょうね?f(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ