第二十話 人類の半分は女、だからなに?
女子キャラテコ入れ回ですm(__)m
しばらくベッドを堪能してから食堂へ向かうアイバー。シューには部屋で待っているように伝えたのだが、離れたくないのかついて来ていた。
従魔と言えど絶対服従では無いらしい。
「あ、お待ちしてました♪ こちらが夕食分になります♪ 狼ちゃん用のは遅くのご来店でしたので今回はお代は結構ですよ♪」
赤毛の看板娘さんが木の盆にのせた食事を渡してくる。パンにシチュー、野菜の和え物。
うん、ザ・異世界の食事だ♪ 豆のスープでも良かったぞ♪ 日本の食事メニュー無双も出来そう。
シュー用のお皿なのかワンプレートにされた肉の盛り合わせがついている。軽く焼いてあるけどほぼ生っぽい。無料なのも嬉しい。
食事を受け取って部屋に戻ろうとするとアイバーに声を掛ける者がいた。
「お客さん、悪いんだけど宿帳に記帳していってもらえる!? さっきメーナが忘れて案内しちゃってさ♪」
声のする方へ目を向けると看板娘さんをちょっと大人にしたようなストレートロングの赤毛娘さんが宿帳を開いて差し出してくる。
宿のユニフォームなのか同じ給士服だ。
心なしか、看板娘さんより色っぺ~なぁ♪
「ミナ姉さん、手が塞がってるし今じゃなくても…」
「また来てもらうんじゃ二度手間でしょ。ちょっと置いて書いてもらえばいいじゃないの」
気っぷのいいというか、ちょっとハスっぱなお姉さん…この表現って若い人には通じるのかな?って感じだ。マイルドヤンキーの方が通じるか!?
「ね、お願い♡ どうせなら食事もここでいいじゃない。席も空いてるし、今ならワタシが同席するサービスつけちゃうよ♪」
押しの強い人だ。非モテのおっさんだった身にはちとキツい。眺めるにはいいが、実際に接するとなるとどうしていいかわからん。押されると引いてしまう性質なのだ。
「ウリウリ♪ 女慣れしてないなぁ~♪ お姉さんが話し相手になってあげるから」
ちょっと魅力的な提案。
テーブルに押し込もうとしてくるが、シューがいるので部屋で食べよう。知らないお姉さんより知った従魔だ。…これ正解か?
「ごめんなさい、お姉さん。まだこいつが人に慣れてないので、今日は部屋で」
実際にそうなのだが、断りのダシにしたみたいでゴメンなぁーシュー。
とりあえず空いたテーブルにお盆を置いて宿帳に記帳してしまう。自分の感覚では日本語書いたけど異世界文字になってる、スゲー♪
「あ~あ、フラれちゃった。サボりたかったのに」
「姉さん、働いてよ!? あ、お部屋までお持ちしますよ!!」
看板娘さん、メーナさんだったけ?が、食事を運んでくれるのでお言葉に甘えた。ヤンキー姉に真面目妹か、悪くない宿屋一家構成じゃないか。お父さんは元冒険者の料理人で、お母さんは元看板娘の肝っ玉カアちゃんなら完璧だな♪
ついでに聞きたい事があったので尋ねる。
「すいません、食べ終わったら冒険者ギルドに行ってきたいんですけど、場所を教えて貰えますか?」
「え!? 今からですか? この時間だともうすぐ閉まってしまいますが……」
あれ? てっきり24時間営業的なモノかと…
「冒険者ギルドって遅くまでやってるモノではないんですか?」
「領都等の大きな街ではそうなのですが、ここはその、出来たばかりの開拓地なので…はっきり言って田舎ですので冒険者ギルドも日没後少しすると閉まってしまうんです…朝は早くからやってますけど」
なんと…まるで田舎のコンビニみたいだ。
24時間営業が当たり前の都会在住の人が聞くと驚くけど、開けてても出歩く人が極端に少ないんだよなあ。バイトもほとんど雇ってなくて、コンビニの名前を借りた家族経営の個人商店だったもんな。
まあこの東サイアン開拓村にも夜中に活動する人はほとんどいないのだろう。夜中に動くのは酒場と娼館、夫婦か恋人同士のベッドぐらいなものか。
「そうですか、じゃあ今日は食事を食べたらゆっくりする事にします。教えて下さってありがとうございます♪」
「いえ、そんな。
あ、もうお部屋ですね。食器はいつでもいいので食堂に返却してください♪ お部屋に置いてあってもお掃除の時に片付けますが、なるべくお願いします♪」
木の盆を渡して立ち去るメーナさん。やっぱり部屋には入っていかないようだった。
室内のテーブルで食事をとる。
旨い!! とはいかなかったがそれなりの味でもこの状況下で食べると妙に感動する。
固い黒パン、肉少な目のシチュー、ザワークラフトっぽい保存に向いた野菜料理。
北京に行って万里の長城観光してから北京ダックを食べた時のような。ローマに行ってコロッセオや真実の口を観光してからピザやパスタを食べた時のような。
空気の一致感とでも言い表したらいいのか? 奇妙な満足感があった。
シューも足元でガツガツと食べている。従魔用のメニューなので食べやすい工夫があるのかもしれない。ペロリと食べ終わった。
食事も終わりシャワー使ってみる。
赤と青の宝石らしき装置があり、触れると固定のシャワーヘッドからお湯ないし水が出てくるようだ。海の家のシャワーを思い出したが魔道具感満載である。
テンション上がるぅ~♪ まあ似たようなのならスーパー銭湯でも見た覚えがあるが。
シューもちょっと嫌がったが半ば強引に洗ってやった。といってもシャンプー等の石鹸類は無いのでお湯のかけ流しだけだ。最初は濡れる感覚が嫌だったようだがお湯で温かいのが分かると大人しくなった。かけ流しが終わるとブルブルッと体を震わせて水滴をはじく。シャワー室内に大きめのタオルが備え付けてあったのでありがたく使わせてもらった。
アメニティまで完備とは、この宿ホント当たりだわ♪
ボロ袋から新品の予備の服を出して着用し、シューをタオルで拭いてやる。犬猫を洗ってやるとなかなか乾かない。ドライヤーとかの魔道具があればなあと思う。
ある程度拭いてやり解放すると元々痩せていたシューがさらに小さくなった。乾くまでの辛抱だシュー。
「あとは寝るだけだけど、その前にステータスの確認しておこう」
落ち着いた状況になったためステータス閲覧を行おうとするアイバー。
シューはシャワー後にはおねむっぽくなった為、床に今まで寝るときに使っていた布製品を敷いてやった。匂いがついてるモノの方がいいかと思ったのだ。
「ステー…これ言わなくても出来るかな? 試してみよ…フッ」
心の中でステータス閲覧を思う。
【 名 前 】アイバー
【 年 齢 】15
【 性 別 】男性
【 職 業 】調教師 ※異世界転生者
【 L V 】5(+2)
【 H P 】164/198(+34)
【 M P 】117/145(+20)
【 STR 】144(+12)
【 VIT 】106(+8)
【 INT 】289(+6)
【 MIN 】70(+6)
【 DEX 】120(+4)
【 AGI 】204(+10)
【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《刀術Lv2》《投擲Lv2》《回復魔法Lv1》《土魔法Lv3》《闇魔法Lv1》《MP自動回復Lv2》《統率Lv1》 《孤独耐性Lv6》《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》 《採取Lv1》new
【 名 前 】シュー
【 年 齢 】0
【 性 別 】女性
【 職 業 】従魔
【 L V 】3(+2)
【 H P 】84/90(+6)
【 M P 】35/37(+2)
【 STR 】82(+4)
【 VIT 】59(+8)
【 INT 】85(+2)
【 MIN 】76(+6)
【 DEX 】115(+4)
【 AGI 】130(+6)
【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv1》
くぅ~何度やってもステータス閲覧はアガるぜ♪
とはいえ、今回は新スキルは《採取》だけ。あとは各種パラメータの上昇だな。あとネタ扱いの職業からホームレス見習いが消えてる…宿に泊まったからか?
前回と同じレベル幅で上昇値も同じだ…1レベル毎の成長率は固定と考えていいだろう。EXP欄が無いのがちょっと残念だな。
問題はシューだな。従魔もレベル毎の上昇値は固定と考えると…成長率低いな。子供だからってのもあるかな? 魔物だから進化とか成長で種族が変わるとかで+補正とかついて欲しい。
今回のステータス確認はこんなもんかな?
じゃあ寝る前に残りMPで魔法の訓練しよう。シチューの食器にシャワーから水を入れ《水操作》を繰り返し唱える。
灯りのロウソクで《火操作》をやろうかとも思ったが、万が一火事とかになったら嫌なのでやめておいた。《風操作》も同じ理由だ。
やがてMPが尽きたのでシューをベッドの上に上げ《闇操作》を使って安眠効果を得る。魔法の効果だけでなくベッドの感触も心地よかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あぁ、朝か…気持ちのいい朝だ♪」
起き抜けから上機嫌なアイバー。
久し振りのベッドの心地よさのお陰もある。15歳の肉体になって目覚め自体が気持ちいいのもある。だがそれよりも、
「《水魔法》スキルゲットだぜ!!」
「キャウン!?」
主人の突然の大声にびっくりするシュー。ベッドの足元で丸まっていたが飛び起きて床に退避している。
「ふっふっふ、これで俺の仮定の1つが解消された♪ なんとめでたい朝か♪ 《水操作》!!」
昨夜シチューの器に入れた水が、上から引っ張られるように持ち上がり、やがて真球を保ったまま空中で制止する。軽く左右に動かし元の器内に戻る。水を自らの意志で動かす、《水魔法Lv1》の《水操作》の効果である。
「やったぞ♪ まだ覚えていない魔法でも習得出来る目処が立った。 少なくとも火と風は間違いないぞ♪」
アイバーが《水魔法》スキルを得た経緯はこうである。
寝る前にMP使いきるまで未習得《水操作》を練習。
↓
眠ってから数時間してトイレに起きる。
↓
まとまった睡眠を取れた為MP全快しているのにに気付く。
↓
再び寝る前にMP使いきるまで練習。
↓
途中で天の声による《水魔法》の習得報告
である。
「自分の仮説がハマると、気ぃん持ちいぃ~~♪」
というわけでハイテンションである。外していた装備を付ける時も鼻歌混じりである。
シューも最初はワケわからなかったが主人が嬉しそうなのをみて嬉しくなっていた。シッポフリフリである。
意気揚々と部屋を出て食堂へ。
自分が早いのか他の宿泊客が遅いのか、食堂には誰もいなかったが、カウンター奥の厨房からは人の動く気配がする。
「すんませーん!! もう朝食やってますー!?」
昨日の食器をカウンターに置きつつ、厨房側に向けて声を出すアイバー。
「は~い、ただいま~♪」
若い女性の声が返ってくる。
声の質は昨日のマイルドヤンキー姉ちゃんに近いのだが妙に間延びしている感じがする。
「すいませ~ん、お待たせしました~♪ 朝食ですね~♪」
厨房から出て来たのは見覚えのある赤毛、だがストレートでも三つ編みでもない、ゆるふわカールさんだった。
「あー、はい。誰もいないみたいなので食堂で食べたいんですが、いいでしょうか? あと、この従魔にもお願いします」
「お早いですね~♪ すぐお持ちしますのでお掛けになってお待ちください~♪」
笑顔をたやさない人だ。髪型の雰囲気も相まってほんわかするな~♪
あなどれん。ほんわか、マイルドヤンキー、真面目とタイプの違う看板娘を揃えるとは…清湖亭栄えるべし!!
テーブルにつくとすぐに朝食を持ってきてくれた。パン、豆と根菜のスープ、野菜の和え物の3種。シューのは昨夜と一緒だ。
「お姉さんはミナさんやメーナさんの姉妹さんですか?」
近くのテーブルの拭き掃除を行っているため話題を振ってみた。もうこれ以上の姉妹はおるまいかとの探りをいれる。
「は~い、長女のマナと申します~♪ 長女と言っても~ミナちゃんとは双子ですので~特別お姉さんじゃあないですけど~♪」
「じゃあ三姉妹なんですか?」
「は~い、父母と合わせて一家でこの宿を経営しております~♪ お客様は~昨日初めていらしてくださった方ですね~♪
今後ともご贔屓に♪」
妹達に聞いていたのだろうか? まあシューがいれば分かりやすいわな。
ご贔屓にしたいところだが、今後の稼ぎ次第だ。昨日は初めての人里での事でもあり、懐に余裕もあったので泊まったが、冒険者の稼ぎが思ってたよりも…な場合にはわからんな。
「常宿に出来るよう頑張ります」
無難な答えと思った事を告げておく。
食事はさっさと終えて、シューの分の料金を払い終えると本日の目的である場所に向かう準備の為をするため部屋に戻る。
軽く部屋を整頓し、忘れ物がないか指さしチェック。鍵をかけて食堂に行くとマナさんがカウンター越しにいたので鍵を返却する。
数名の宿泊客らしき人たちが朝食を食べているのを横目に宿を出た。
「行くぞ!! 冒険者ギルド!!」
お読みいただきありがとうございましたm(__)m




