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第十六話 すったもんだがありまして

新年初投稿です。

今年もよろしくお願いいたしますm(__)m


前回の閑話は予約投稿でしたのでノーカンで…

 状況はまあ、そこそこ良好だ。


 水を1なめして塩水でないのは確認できた。水はそこそこ澄んでおり、大きな流れもないようなので池または湖なのだと思う。


 余談だが池は基本人工物、湖は天然で深さがあるモノらしい。明確には5m以上で、天然でもそれより浅いものは沼だ。

 おっさんの田舎では、定義的には池であっても藻や水草でドロォ~っとしていたモノばかりだったので、大体沼と呼ばれていた。底なし沼伝説もそこらに転がっていたものである。


 ともあれ、向こう岸に見える町か村だろうか? 人の営みがうかがえる集落も確認できた。岸に沿って歩けば時間はかかっても必ず到着出来るだろう。


「心配なのは湖の広さだなぁ。これが琵琶湖とかレベルの湖だったら…せいぜい河口湖か山中湖ぐらいでお願いしたい…」


 知ってる名前の湖で距離感を確認するアイバーことおっさん。

 前者は行ったことはなかったがとにかくでかいんだろうな的イメージ、後者は車ではあるが走った事があったので徒歩でも1日あればまあ回れるかな、程度に考えていた。


「ああ、でも湖の形もわからないからなぁ…湖岸線って言葉あったかな?、によっては近くに見えてもけっこう歩く事にもなるもんな」


 今見えている対岸が一番近く、ひょうたんのくぼんだ部分かも等と考えるおっさん。


「そもそもあの村っぽいのが普通の村じゃなくて水滸伝みたいな盗賊とか湖賊とかのアジトだったらどうしよ? 転生してすぐ死にさらせ、とか奴隷落ちは勘弁だぞ…」


「クゥーン…」


 基本ネガティブなおっさんは悪いこと悪いことばかり考えてしまうものである。

 あきれたように鳴くシュー。


「…まあそこは、近づいてみるしかないか。とりあえず人里が恋しい。屋根のある生活がしたい」


 シューのあきれを感じ取ったのかちょっと前向きな意見に鞍替えする。わからんもんはわからんの精神で岸に沿って歩き始めるおっさん。


 泳いでいってみようか? などと考えもしたのだが、中にどんな水棲生物がいるのかも分からないし、シューをおいていく訳にもいかぬ。

 犬かきくらいできるかな? いや、やっぱ無しで。


 ということで歩き始めたおっさんの前にすっかりお馴染みとなったゴブリンが1匹見えた。投擲と刀術でさっくりかたずける。

 ボロ袋にいれると少し容量が気になるおっさんだが5m×5m×5mを想像するとまだまだ余裕だと思い直す。


 水場近くだと生き物も沢山いるかな~と考えていたおっさんであるが、幸いというかあてが外れたといおうか、しばらくは平和なものだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 湖岸の小さな半島部分を2つほど越えたところ、湖岸が集落に繋がっているのが確認できた為、休憩をとるおっさんとシュー。

 ちょうど倒木があったのでそこに腰かける。


「お疲れ様、シュー。子犬…とまでは小さくないか。それでも0歳児だからなあ、長く歩いて疲れてないか?」


「ヘッヘッヘッヘッ♪ ハゥッハゥッ♪♪」


 体感で4時間程歩いたと思う。湖に出るまで1時間半、その後二時間半程度。ちなみに湖に出てからは《土操作》は使っておらず、《土壁》3回分でちょっとしたモニュメントを作っておいた。万が一戻らなくてはならなくなった時の目印である。

 子犬…ではなくても1歳未満の狼、前生でのイメージでは子犬や子猫というと、少し遊ぶとすぐに眠ってしまうような気がした。それを思ってのアイバーの言葉だったが、元気そうである。見た目は犬っぽい子狼だが魔物でもあるので体力はあるのかもしれない。VIT低めだったけど…

 体を擦り付けるようにしながらボロ袋の口付近の匂いを嗅いでいる。


「ああ、ごはんね…って、ここから取り出してる事が分かるのか!? それとも匂いでも漏れてる!?」


 ボロ袋の匂いを嗅いでみるが普通の革製品の匂いしかしなかった。

 狼なので人間の嗅覚以上の匂いを感じている可能性もあるがシューの目の前で使っているわけなので、アイテムボックス自体の存在や見た目通りの容量でないこと等は理解せずとも、ここから物やゴブリンを出し入れしている事は分かっているようである。


「賢い子だなぁ~おまえは~」


 かいぐりかいぐりしながらゴブリンを出してやるおっさん。耳と魔石を切り出し置いてやるおっさんだったが、当のシューはゴブリンに手、でなく口をつけようとしない。

 ちなみに今日倒した分の魔物は全てそのままボロ袋に入れてあり魔石の取り出し等は行っていない。移動中は避け落ち着いたら行う予定であった。


「どした? いつも食べてるおにくさんだよ?」


「クゥ~…」


 どことなく不満そうな鳴き声。チラチラとゴブリンとボロ袋を見比べている。


「…ん? あ 、さては…これか?」


 ボロ袋から本日の強敵、ビッグボアを取り出すと目に見えて態度が変わるシュー、具体的にはシッポフリフリである。


「ん~ 、毛皮とか牙とかにも価値がありそうだからな…冒険者ギルドとかでキレイに解体してもらって肉にしてから食べようかと思ってたんだけど…」


 これまでのシューの食べ方を見るに、毛皮をキレイに残したりするのは難しそうだ。

 水場がすぐそこにあるので解体して渡すのもいいが…時間がかかったり体力を使いそうである。

 その他色々考えたがビッグボアを狩った労力と何よりも目の前でお座りしている相棒の期待に満ちた雰囲気を考え、


「おあがりよ!! あ、出来れば毛皮に傷つけないようにお願いします…」


 太っ腹なようで微妙にセコイ提案であった。

 魔石だけは腹を裂いて取り出し、後はシューちゃんの理解力に期待してのお願いである。

 内蔵だけ食べてくれないかなぁ……である。


「キャゥ~~ン♪ ハッッグ、ハグッ♪」


 だがこと食に関しては出し惜しみしない(おんな)、シューであった。

 当初は裂かれた腹からの血の臭いに反応し、長いソーセージ的なモノやプルンandヌチョン的なモノを食べていたシューであるが、ジューシーな食感に飽きたのか後ろ足付近の噛みごたえを楽しみ、頭部の耳や鼻先独特の部分を味わい…その他ビッグボアを余すところなく楽しんでおられる…

 全身をちょっとづつ摘まむのね…

 まるで親戚の5歳児が牛乳飲みたいと言ってコップ1杯注()いだら半分残し、アイスが食べたいと行ってコンビニで買ってきたらもういらないと言い、バランスの良いメニューを用意したら一部のメニューだけ食べて子供向けテレビ番組に夢中になるような『しょうがないんだけどさあ、子供だからしょうがないんだけどさあ、全部食いきれよ!!』的な理不尽さを思い起こさせる。


 世の若いお父さんお母さん、お疲れ様です。(しつけ)頑張ってください!!

 訳知り顔のコメンテーターに虐待とかって言われると液晶叩き割りたくなりません?


「グッフ♪」


 満足そうにゲップっぽい息をつくシュー。

 途中噛まれてなさそうなモモ肉部分を切り取ろうとしたが、火が点てられない事を思い出し断念した。


 数分後、目の前には…


「所々かじりかけのビッグボア…毛皮は使い物にならんよね…はは………はぁ…」


 まあ、まだ定番の牙が残ってるからいいかと思い、残骸をボロ袋に収納する。所々少しづつかじり取った為肉はまだ残っているし、シューのご飯としては数回分あるだろう。

 シューの食事中にアイバーも食事を取っていたので休憩としてはもう終わりでもいいのだが。

 メニューはもちろんビリーとリンゴである。


「すこしだけの間、警戒しながら食休みだな。食ってすぐ動くのはよくないって言うし」


 前生の休日なら昼寝でもしたいところだが、あいにくここは魔物がうろつく魔境の森である。シューによる警戒網もあるが寝たりするのは油断しすぎだろう。

 うっかり熟睡してシューの鳴き声に気付かなかったりしたらマヌケ過ぎる。


 レベルアップもしたのでステータス閲覧も考えたのだが、あの時の自分が妙なテンションになってしまうのは薄々勘づいてはいるのでNG。慣れれば普通になっていくだろう…多分。

 魔法の訓練も考えたのだが、集落につくまではMPをある程度温存しておきたいと思うおっさん。何が、という訳ではないが念のためである。

 飲み会に誘われて会費分持っていけばいいのに何となく多目に財布にいれていく、みたいなおっさんあるあるである。


 ということで、少しの間だが採取をすることにした。

 先日取得したばかりだが使い続けておくに越したことは無いだろう。少し環境が変わった事もあり、変わったモノが取れるかもしれない。


「ちょっとの間、岸側の警戒頼むな」


「ガウ!!」


 水際近くを鑑定するおっさん、もちろん臆病なので水からワニ的なビックリドッキリ生物が出てこないかの警戒も忘れない。水の透明度が高いので心配は要らなそうではある。

 森に比べるとキノコ類は当然皆無、果物も多少ビリーが見あたるくらいで後は圧倒的に草系の植物が多かった。薬草や魔力草に加え、新たに


『毒消し草:葉に解毒成文を含む植物。摂取すると中程度の毒状態を回復させる』

『毒草:弱い毒性をもった植物。体内に取り込む事で弱毒状態になる』

『魔毒草:毒性をもった植物。体内に取り込む事で毒状態になる』


 など物騒なもんが見つかった。ちゃんと対になるモノがあって良かったと胸を撫で下ろす。

 そういえば町とかに入るとき毒物持ってたらヤバいかもと思い、毒関係は採取していない。ボロ袋内の危なげなモノ、『スズラン』『ドン(ダケ)』や『魔力茸』等も勿体ないが廃棄する事にした。またすぐにみつかるだろ。

 『メンゴ』だけは3個しか見付からなかった稀少(レア)性と鑑定の説明内容からキープ。やばかったら廃棄。

 その他には、


『ミント:芳香成分のある植物。繁殖力が強い』


 他にも前生でのハーブ関連の名前が出てきており、ハーブティーとか作れたらオシャンティー♪ と思って採取してある。


 そこそこいい時間が経過しているようだったのでそろそろ終了としシューの元に戻るおっさん。シッポパタパタで出迎えてくれたので、何事もなかったようである。


 さあ、人里へレッツゴー!!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 途中初顔合わせのオーク2匹と遭遇。

 シューの索敵からの投石コンボで不意討ちを狙ったが投石の効果は薄く、それぞれに《土壁》からの《土槍》コンボで1匹。

 もう1匹も《土槍》がかすった影響でよろめいていたので刀で喉を裂いた。

 正面から斬ったため血を浴びるはめになったので湖で顔を洗って拭う。服、装備の血も出来るだけ拭った。

 おっさんトホホ、シューちゃんフリフリである


『レベルが上がりました。ステータスを確認してください。』


 人里へ入る前に本日2度目のレベルアップ。


「今日の楽しみがふえた♪」


 日の傾き加減からそろそろ夕方と呼ばれる時間帯に入る頃だろう。

 そんな中、おっさんとその一行は初の人里に到着したのである。


 

 

お読みいただきありがとうございましたm(__)m

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