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第十四話 GO!!まものん

シモ関連の表現あります。

御注意下さいm(__)m

「《噛み付き》《爪術》はまあ、わかる。後半3つは字面で判断できる……《土耐性》とか《風耐性》もなんとなくわかるけど具体的にはどんなだ?」

 

 ステータス・スキルの検証を続けるアイバー。


 これが《火耐性》ならまだわかる。火傷しくくなるとか熱さに耐えやすくなるとかだろう。


 《水耐性》も火の反対と考えればわかる…か? 広義で氷とかを含むのなら凍傷とか寒さに、だろうか。


 上記2つに比べると《風耐性》と《土耐性》はなんかぼんやりする。台風みたいな暴風の中で動ける? 砂漠や洞窟や地下なんかで調子が変わらなくなるとかだろうか?


 ホント、ゲーム設定では不思議に思わないモノも現実に降りかかると折り合いをつけるのに難儀するモノである。

 しばらく考えて、各魔法効果への耐性だろうかと思い付く。


「とはいえ、シューに攻撃魔法ぶっこむ訳にもなあ…」


 両者に重複する魔法と耐性は土。

 アイバーの手持ちの魔法で純粋に攻撃用なのは《土槍》オンリーである。

 Lv2の《土壁》の槍…というか突撃槍とでも言えばいいのか、鋭い円錐verである。

 狼の、しかも子供の柔らかいお腹に直撃したら……ちょっと放送コードに引っ掛かってしまいそうな残酷映像になってしまいそうだ。


 シューは足元でシッポパタパタさせている。


「取りあえずは土壁出してみるか…《土壁(アースウォール)》」


 少し離れた場所にそそりたつ土壁。

 突然発生した壁に、ビクッ!! としながらも、以降動かないのを見てトコトコと近付くシュー。


「…そう言えば川から戻るときに《土操作(アースムーブ)》使ったときもモコモコ動く地面に手……前足か、を出してたっけ」


 まだ好奇心旺盛な0歳児である。

 近付いたシューは土壁の周囲を歩き回り匂いを嗅いだりしていたが…


「クゥン!?」


 手……前足を出して土壁に触れると触れた部分がボロボロと崩れだした。


「あーやっぱり。魔法で出したモノというか、効果というかに接触したりすると無効化したり、効果を弱めたりするのか」


 ボロボロ崩れるのが楽しいのか、次々触れていくシュー。だがシューの体高と体の構造上、壁の根本部分にしか届かない訳で…


「たーおれーるぞ~」


 案の定耐えきれなくなった壁がシューに向けて倒れてくる。気付いて逃げるが時すでに遅し、下敷きになるシュー。


「まあ、さっきの様子を見てる分には大丈……」


「キャン!! キャン!!」


 ほら、出てきた。土壁全体も魔法で出来たものだからシューに触れたとたんに柔こくなったんだろう。

 あ、こっちに走り寄ってきた。


 その後、《土槍》でも同じことを試してもらった。さっきの土壁がトラウマになったのか近付きたがらなかったシューだが、念話っぽく、


「ほら、怖くない、怖くない、ほらね、怖くない」


 と語りかけるとシブシブっぽくだが触ってくれた。さっきより崩れる勢いが弱い。

 耐性Lv2とLv3魔法の差かもしれない。


「もういいよ」


 土槍から離れて、駆け寄ってくるシュー。

 さて、最後に…


「《落穴(ビット)》」


 意識して広く浅くなるよう穴を作る。

 土壁もそうだが一定量の土の範囲内であればサイズ変更は可能だった。意識しないで使うとデフォルトサイズの壁と穴が出来る。重ね掛けで壁、穴の拡張も可能。


「シュー、この中に入ってくれ」


 キッズウルフをぜんしんさせた。

 キッズウルフはたいきしている。


 浅い穴だったので怖がること無く穴へ降り立つシュー。


「徐々に穴が元に戻るなんて事があるかもと思ったけど、それは無いのか…城壁は無理だけど、塹壕や堀は出来そう♪ 戦場での防衛無双できるか!?」


 土木作業系の魔法の可能性を夢みるおっさん。

ヨジヨジ登っておすわりするシューちゃんだった。


 その他にも職業が調教師になっていた事でシューとの意思疏通の正体候補が増えたり、MINの数値が従魔よりも低い主人が落ち込んだりした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「さて、そろそろいいか。

 シューはゴブリンがあと2匹分あるからいいとして…俺の食料集めしよう」


 相変わらず時間は分からないものの、起きてからの体感時間や周囲の明るさから昼過ぎくらいかと当たりをつけ、午後の行動に移る。


 昨日同様に大岩を視認出来る距離で採取を行う、アイバーことおっさん。

 この件に関してはシューに手伝わせるのは無理がありそうなので、休んでいるよう指示すると陽当たりの良い岩の上で丸まっていた。

 犬はいいよなぁ~、とまるで気のノらない日の出勤前のような事を考え、イヤイヤ今は異世界で自由気まま…と言うにはなかなか過酷な生活を送っていると思いやっぱり落ち込むおっさんだった。


「あっ、新しい食い物発見伝♪」


 鑑定で『クルミ』と出ている。

 説明も元の世界の胡桃と変わらないようだったので、まとまって落ちているモノを拾い上げる。


『スキル《採取Lv1》を取得しました』


 天の声が聞こえ、新スキルの取得である。

 

「お~、新スキル取得伝♪」


 だいぶ天の声にも慣れてきたので、慌てず軽口を叩く。字面通り採取の効率や質が上がるあたりの効果だろう。


 数時間採取を続けて2日分として充分そうな量を収穫した。 

 ボロ袋に状態保存の効果がないとわかった為、採りすぎても腐らせてしまうかもしれない。せいぜい日持ちしそうな2日分程度を採取するようにしたのだ。

 食料だけでなく薬草・魔力草の類いも採取してある。


 途中、シューも寝飽きたのかそばに寄ってきていたのだが、途中異世界初の便意に襲われ木陰で脱糞、


「アイバー流秘奥技!! スーパーウンコ!!」


 子供の時以来の野糞(のぐそ)である。どうだったかって?…最高だった。

 大自然での解放感、最高だった。


 …やはり技名をつけて叫ぶのはどうかと思う…

 …きっと疲れていたのだろう、過酷な現代社会は一人の男をここまでにするほど追い詰めてしまっていたのだ。


 キレイっぽい石や葉っぱでお尻を拭うという人生初経験もした。さすがに前回はポケットティッシュを持っていたからだ。

 シューちゃんにモノの臭いを嗅がれたのはちょっと恥ずかしかったが…昨日から果物中心の食生活だから大丈夫だろ。


 謎理論である。

 

 ふと、不思議に思ったのがこの大岩付近で魔物を見かけていないことだ。

 さきにゴブリンを見かけた事から森には魔物がいるのは確実。たまたま遭遇して無いのか活動範囲から外れているだけなのか……


「最初に転生したところだからな~、神様が気を利かせてセーフティーゾーン的な場所に飛ばしてくれたのかも…」


 そうなると足元でじゃれているシューの存在があるのだが…従魔的な扱いでOKとかだろうか。


 採取を終えて大岩へ戻る。

 まだ日はあるので火起こしに挑戦してみる。火を通せばウマ(たけ)を美味しくいただけるかもしれない。鑑定だと松茸っぽかったし。

 採取の際に枯れ枝や枯れ葉を少し拾っておいたので積み上げ、石とナイフの背側を打ち合わせる。

 詳しくはないが打ち合わせるモノには鉄が含まれていないとダメだ的な事を聞いたので、幾つかの石で試してみるが着かない…諦めも肝腎だとあきらめた。


 さてこれからどうしよう。

 MPを見ると30ちょっとまで回復していたため新魔法習得を目指してみた。今あるモノで出来そうなのは《風魔法》だろう。

 さっきの川で泥水でも汲んでくれば練習できたな、と次回以降容器の準備と水の採取を心のメモ帳に書き込む。

 先日採取した分の魔力草をムシャムシャしつつ余分に回復させ、


「《風操作(ウィンドムーブ)》」


 呪文的なワードが合ったのか、手の先で空気を掴むような感覚が伝わってくる…ように思ったがすぐに弾けてしまった。非常に脆いゴム風船を握り潰してしまったような感じだ。

 何度も繰り返すがモノになる感覚がしない…道は遠そうだ…

 消費MPも3とLv2魔法なみで効果も一瞬のためMPはすぐに底をつく。僅か1~2分で終了。


「罠のカモフラも終わってるし……シューちゃんの毛繕いでもするか」


 枯れ枝のなかで比較的薄くて広い物を選び、武器の中で一番使用頻度の高いナイフで形を整えて等間隔に切れ込みを入れていく。

 かなり不恰好だがお手製だとこんなもんでしょ。


「シュー、おいで♪」


「ガウ?」


 おっさんに対して横向きで腹這いさせ、頭から背中にかけて(くし)を入れていく。かなりガサガサで通りが悪かったが、最初の2~3回を越えるとそこそこ通るようになってきた。

 シューの方も何をされるのか不安だったようで最初は逃げ出そうとしたがおっさんが押さえ付け数回繰り返すうちに大人しくなった。諦めか慣れだろう。

 たまに櫛から木のカスが出たが、全身に櫛を走らせ終わる。結構な量の抜け毛が取れた。臭いもまだするがマシになった気がする。


 そうこうしていると昨日も感じた夕方の気配である。夕食分のビリーとリンゴを食べ、シューにはゴブリンを出してやる。

 食べ終えたら《落穴》で作った穴にリンゴの皮と食い残しゴブリンを放り込み周囲の土をかけておく。昼食時のゴブリンも同じ方法で処分した。


『すてちゃうの!?』


 と訴えかけてきたシューだったが土をかけていると、ココ掘れワンワン的に土かけを手伝ってくれた。保存食的なアレで納得したか?

 ホント、狼だか犬だかわからんな♪


 拠点のベッド回りも昨日と同じ手順で新しくしてある。寝る前に用を足して木の(うろ)に入り込むとシューも一緒に入ってきた。


「おやすみ」


「ガウォウ♪」


 土壁と闇に包まれて一人と一匹は眠りについた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ん~、よく寝れたぁ~うぁうぁ…」


 昨夜のように途中で目が覚める事もなく熟睡出来たおっさん。目覚め直後の脳に酸素を送るため欠伸(あくび)をする。

 ポリポリと体を掻きつつ、そういえば風呂に入ってないなあと思いいたる。以前は毎日入っていたという生活が遠い昔の事のようだ。


「いずれ、どうにかしたいなぁ」


 風呂文化があるかどうか調べないとな、と心のメモ帳に書き込む。無ければ温泉無双だ♪


 一緒にシューも起きており『クァッ』といった感じに欠伸をする。


 昨日と同じ様にビリーで軽めの朝食、そろそろ食べ飽きているが、贅沢は言えない。

 シューも果物を食べれるかと掌で口許に差し出してみたが、つれない反応だった。やっぱり肉がいいのかとゴブリンを出してやると目をキラキラさせている気がする。素早く耳と魔石を回収する。これで最後だぞ。

 真っ赤に染まる口許がホラーだ…


 食事後大岩からのスプラッシュを済ませ、今日はどの方向へ探索しに行くか思案する。忘れがちになるが早く森を抜け無ければ…


「昨日行った方向から時計回りに90度でいいか、今日は森を抜けられるかねぇ…」


 方向を決め大岩を降りるおっさん。

すると…


「ガウ!! ガウッガウ♪」 


 決めた方向とは別の方向を向いて振り返るシュー。見覚えのある光景にしばらく思案する。


「……昨日の川の件もあるしな~、どうせ決めた方向もノープランだしお任せしてみますか♪」


 5、最終的には臨機応変に


 である。フォレストブレイク計画には反しない。


 

お読みいただきありがとうございましたm(__)m

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