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第十三話 現状確認は大事

なかなか話が進みません。

申し訳ありませんm(__)m

 キッズウルフのシューを仲間に加えたアイバーことおっさん一行。

 新たな冒険に出発だ!! といきたいのはやまやまだが、現状を鑑みて拠点の大岩まで戻る事を選んでしまう保守的な大人の考え方の持ち主である。


 現在、土魔法で作った道標をたどり途中で食べられるモノやゴブリンに使って減った投擲用の石を拾いつつの帰還中だ。


「色々世間を知ると、冒険とか出来ないよな~。現状維持とリスクの回避…新しいことへの一歩がドンドン踏み出せなくなっていく」


 世知辛い話である。


 おっさんも30を幾つか過ぎた頃にこのままではイカンと競技用自転車(ロードレーサー)や総合格闘技、体力作りのジム等を始めようとし初回お試し講習的なものまではいくのだが、その後が続かなかった。自転車だけは良い値段した事もあり、時折乗っていたが頻度はごくまれであった。

 最近では競技ダンスやボルダリングを始めたいと思いつつ手が出せなかった。


「…せっかく若返って転生出来たことだし、興味があることにはガンガン挑戦してみよう…命が危なくない程度に。

なっ、シュー♪」


「ガウ?」


 『なーに?』とでも思ってそうなシュー。

 内弁慶の為1人で始めるのはなんとなく避けたいので巻き込もうとするおっさん、狡い。


 記念すべき脱ぼっちを果たしてくれたシューであるが出発当初は足元に擦りついてきてうっとおしいやら歩きにくいやらで大変だったが、言葉で注意したところ横に並走するようになった。

 頭いいなあ、等と気楽に考えていたのだが試しに身ぶり手ぶりで少し前方を歩くよう示して見ると多少の試行錯誤をしながらおっさんの1m前ほどの距離を保って歩くようになった。

 さすがにこれは何か変だと思いつつも指示通りに動いてくれたシューを責めるわけにもいかず撫でくりまわして労った。尻尾をふって嬉しそうであった。


「狼の鋭い嗅覚に期待してるよ、なんかいそうなら教えてな!?」


「ガウッ!!」


 などと完全に意思疏通が図れてしまっている人と狼。

 おそらく仲間にだか従魔にだかになった時点でそういった経路(パス)みたいなものが繋がっているのではないか? もしくは《統率Lv1》あたりの効果か?と推察する。

 《統率》というと前生の会社で部下を持ったからお情け程度につけてくれたのかなぁ~と考えていた。これがスキルの効果だとしても便利なのは確かなので文句は無い。


 というわけで初期構想の猟犬的な役割を果たしてくれているシュー。索敵に関してはまだなんとも言えないが。


 さて、現状ちょっとした問題がある。


「手が…スプラッター状態なんだよな…手ぇ洗いてぇ…」


 ゴブリンの解体を終えたあと布製品の一部を犠牲にして拭ったのだが完全にはぬぐいきれず、所々に乾いて黒く変色した血の名残が付着している。

 知らず戦闘後の高揚や討伐証明、魔石への期待感で後先考えられずにいたのだろう。今考えると血液感染の病気とかは大丈夫なんだろうかと怖くなってくるおっさんである。

 《冷徹》さん仕事してって感じである。

 まあ、戦闘前や戦闘中は結構冷静に考えられてた気がするので、ある程度危険が伴うような状態じゃないと発動しないのかもしれない。

 そう考えると血液感染に関しては大丈夫なのか?


 ともかく手が血で汚れている為食料の採取時にも気になってしまうのである。トイレ後手洗いせずに手づかみで物を食べる感覚だ。


「川が見つかればな…解体とかも水場で出来れば楽なのに…」


 現代日本の上下水道環境に慣れてしまっているおっさんの嘆き。


「クゥ~ン?」


「何だ、シュー? 心配してくれてんのか? 水が欲しいんだよ、水、わかる? みーず」


 足を止めてシューに向き合い、子供に言い聞かせる感じで伝えるおっさん。

 正直ただ不満を垂れるだけのつもりだったが、


「ガウッ!! ガウッガウッ♪」


 土魔法の道標から外れていくシュー。少し進んでアイバーを待つように振り向く。


「ん!? この流れまさか…」


 道標を見下ろしシューと見比べる。


「…あんま遠くは駄目だぞ、わかるか?」


「ガウ♪」


 尻尾フリフリしながらお返事するシュー。


「よし、案内してくれ、あ、あんま急ぐな。物音で変なもん呼び寄せたら困る」


「ガウッ!!」


 シューに先導されて歩くこと1分程、そこに…

 

「おー、川…だな」


 段差のせいで見えなかったのか、今立っている地面から一段下がった所に川があった。想像とはちょっと違うが…


「泥水かぁ…まあ、そうだよね。

ここって高低差少ないから浅いし淀み気味になるし、腐葉土多いからなあ」


 水量も多くなく流れも非常にゆっくりな川。場所によっては枯れ葉で埋もれてしまっている。分かりやすい例で言うと、アマゾンの森の中へロケにいったお笑い芸人が飛び越えようとしてはまってしまうような川、だろうか。


 大自然の中にある川というと岩場の清流的なモノを想像しがちだが、こういうのは日本でもちょっと山の中に入れば見つかる。田舎の道路脇の排水溝にいつも湿って赤っぽくなっている箇所があるがそれである。

 テレビやCM等で流れる秘境奥の清流や滝はそういった小さい水源が集まった先のモノである。


「まあ、手を流すくらいは出来そうだしそれだけでもありがたいか。ありがとな、シュー♪」


「ガウッ♪ ヘッヘッ♪」


 水のたまっていそうな箇所に降りてまずは手を洗う。枯れ葉などで雑菌が繁殖してしまう為、飲み水としては期待していないが洗浄ぐらいにはつかえるだろう。


 ふと、『水魔法のレベル上げられれば水を作り出す事も出来そう』と思い、今までの例から元からあるモノに作用すると思われるLv1魔法を想像して目の前の川に試してみる。

 《水操作(アクアムーブ)》と唱えてみたが反応無し。こっちか?と思い《水操作(ウォータームーブ)》と唱えるとなんだか手応えがあった気がした。MPを確認しながら、もう一度唱えると3MP減っていた。


「未習得の魔法を覚えるには効果不十分でも余分にMPをかけて感覚をモノにするって感じかな? MPに余裕があったら練習してこ」


 簡単に手と装備の血を落とし、ゴブリン戦以降に採取した食料も水にさらしてから水気を取る。


 シューにおいては泥水お構いなしにペロペロ飲んでいた。さすが魔物、ワイルドだぜぇ~


 水場の存在は貴重なので元の道標に戻る際に《土操作》を使って行けるようにしておいた。元の道標から歩いて1分程だから2回分で2MPだ。


 その後、再び道標をたどり大岩を目指す。途中でゴブリンが1匹でウロウロしていたがシューには索敵の素養もあったようで前回同様の不意討ちで処理できた。

 完全に猟犬ポジである。

 

 死体はすぐにボロ袋にしまい耳と魔石の回収は後回しにして、歩みを再開する。

 間もなく大岩へ到着。


「あ~よく働いた!!」 




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 大岩へ帰ってくると朝と同じように罠を確認し中に何もかかっていないのを確認した。


 その後大岩へ登って、本日二回目の食事を摂る。正直この若い体になってから腹が減りやすくなっており、帰路後半からはキツかったのだ。

 昨日の収穫物の残りをボロ袋から取り出し、口に入れる………前に確認することがある。


「これが昨日採った物、んでこっちがさっき採ってそのまま持ってた物。比べると……シワ多くなってる」

 

 アイテムボックスの時間経過について確認する。

比べて見ると個体の差とは思えない違いがある。


「時間経過、状態保存は無しか…確かに冷静に考えればとんでもないモノだもんな。空間拡張だか圧縮もそうだけど……ま、ファンタジーに何いっても仕方ない!! 

 現代技術だって1000年前に比べりゃ充分ファンタジーだもんな」


 あるものはある、ないものはないで結論付ける。


「これからナマモノは出来るだけ保存しやすい形にして入れるのと、古いものから順に使うようにしよ……ンムンム」


 すっかり主食となったビリーと酸っぱいが食べられなくはないリンゴで腹を満たす。量は充分とれているので豊かな森なのかもしれない。

 シューにもゴブリンを出してあげ大岩の上のちょっと離れたところでムシャムシャしている。近付きたがっていたが遠慮してもらった。


 食事を終えるとお楽しみの時間である♪ シューを呼び寄せ膝上に乗せる。ちょっと臭う…


「ステータスオープン♪」


【 名 前 】アイバー

【 年 齢 】15

【 性 別 】男性

【 職 業 】調教師 ※異世界転生者 ホームレス見習い

【 L V 】3(+2)

【 H P 】130/164(+34)

【 M P 】6/125(+20)

【 STR 】132(+12)

【 VIT 】98(+8)

【 INT 】283(+6)

【 MIN 】64(+6)

【 DEX 】116(+4)

【 AGI 】194(+10)

【 スキル 】《経験値獲得2倍》《鑑定》《体術Lv2》《刀術Lv2》《投擲Lv2》《回復魔法Lv1》《土魔法Lv3》《闇魔法Lv1》《MP自動回復Lv2》《統率Lv1》 《孤独耐性Lv6》《冷徹》《算術Lv5》《努力の才》


「続いて、シューのステータスオープン!!」



【 名 前 】シュー

【 年 齢 】0

【 性 別 】女性

【 職 業 】従魔

【 L V 】1

【 H P 】84/84

【 M P 】35/35

【 STR 】78

【 VIT 】51

【 INT 】83

【 MIN 】70

【 DEX 】111

【 AGI 】124

【 スキル 】《噛み付きLv1》《爪術Lv1》《土耐性Lv2》《風耐性Lv1》《飢餓耐性Lv3》 《孤独耐性Lv2》《気配察知Lv1》


「ホウホウ♪ ん~やっぱステータス閲覧はアガるわ~♪ 今回はレベルアップもあったからひとしおですわ♪」


「クゥ?」


 主人が何を喜んでいるのか分からないシューちゃん。

 女の子にはこのロマンがわからんかね~♪


「2レベル上がってて、パラメータの上がり幅は全部偶数…上昇値は固定か? バラツキがあるけどこれが転生部屋で神様が言ってた本人の資質ってヤツかな?

《努力の才》の+補正は最高で2か? DEXが2レベル上がって4しか上がってないから、最悪DEXの上がり幅が俺にはないのかも、いや小数点以下の………ウンヌンカンヌン」


「クゥ~ン…」


 ブツブツ言う主人の様子に(おび)えるシューちゃん。

 どうしたのかな?


「シューのステータスも興味深いね…子供ってこともあるけど、能力値は軒並み低目。あくまで一般人基準からすればだけど…紙装甲の技術・速度重視ってとこか!?

 スキルは………今まで結構大変だったのかい?」


 同じ《孤独耐性》持ちだったことと《飢餓耐性》を見て思わず潤んでしまうおっさん。


 耐性系のスキルも相まって、おっさんの心の中に、橋の下でダンボール入れられ寒さと飢えに震えるシューが思い起こされる…


「!! お前もう俺の家族だかんな!!」


 ガバッとシューに抱き付く。


「クサッ!!」


 野生の獣の体臭は強烈であった。


 



昔遭遇したタヌキの臭さを思い出して書きましたm(__)m

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